不思議な館の亜梨珠 真逆の兄弟

不思議な館の亜梨珠 真逆の兄弟

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■概要
人数:1人
時間:3分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
亜梨珠(ありす)

■台本

亜梨珠「あら、いらっしゃい。久しぶりね。元気だったのかしら? そろそろ来る頃だと思っていたわ」
亜梨珠「……いけない。久しぶりだったから、いつもの台詞を言うのを忘れていたわ」
亜梨珠「亜梨珠の不思議な館へようこそ。今日も、不思議なお話を聞かせてあげるわ」
亜梨珠「……どう? 確か、こんな台詞だったはずよね?」
亜梨珠「それにしても、随分と、間が空いたけれど、忙しかったのかしら?」
亜梨珠「……ああ。例の感染症の影響ね。最近は収まったみたいだし、これからは前のように来てくれるということでいいのかしら?」
亜梨珠「本当はこのまま2時間くらい談笑したいところだけれどね」
亜梨珠「……え? ふふ、そうね。じゃあ、お話をしてから、ゆっくり談笑しようかしら」
亜梨珠「ふふ。じゃあ、今回はさっそく、ある双子の兄弟についてのお話」
亜梨珠「その兄弟は双子で、顔や体格のような見た目に関しては他の人が見わけがつかないほど、そっくりだったの」
亜梨珠「でも、性格や才能に対しては真逆と言っていいほど、違っていたわ」
亜梨珠「兄の方は勉強も、スポーツも優秀で、社交的で、親の期待をすべて叶えてきたの」
亜梨珠「でも、弟の方はその逆だったわ。勉強も、スポーツも、コミュニケーション能力も、すべてが劣等生だったの」
亜梨珠「弟の方は必死に親の期待に応えようとしたわ。でも、そのすべてに失敗した」
亜梨珠「親はずっと弟に、兄のようになれとプレッシャーをかけられ続けたわ。だから、弟はずっと、兄の真似をし続けたの」
亜梨珠「兄がやることをすべて真似する。でも、それができなくて、親に失望される。それでも兄の真似をし続けるという生活を続けたの」
亜梨珠「でも、そんなあるとき、弟はついに心を病んでしまったわ」
亜梨珠「親からの呪縛から解放されるため、弟は兄を殺したの。事故に見せかけて」
亜梨珠「兄が死んでからは、親も心を病み、弟にも期待をすることを止めたわ」
亜梨珠「すべてから解放された弟は、自由に生きれると歓喜したわ」
亜梨珠「……でも、弟は翌年、自殺したの」
亜梨珠「今まで、兄の真似をして生きてきてから、自由に生きろと言われて、何をしていいのかわからなくなったのね」
亜梨珠「これで、兄弟の話は終わりだけれど、この話はなにも、兄弟だけの話ではないみたい」
亜梨珠「ずっと、親の言いつけ通りに生きてきた子供は、親が何も言わなかったとき、なにもできなくなるって話ね」
亜梨珠「真似をするにも、目的が必要だわ。なにより、考えるということが必要じゃないかしら」
亜梨珠「それじゃ、今日はこれでおしまい」
亜梨珠「よかったら、また来てね。さよなら」


終わり。