鬼と桃太郎

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、和風ファンタジー、シリアス

■キャスト
村人1~8
一郎 5歳、15歳
鬼1~12
桃太郎 23歳
猿 32歳
犬 33歳
雉 34歳
子鬼 5歳 

■台本

村の中。農作業をしている村人たち。

村人1「おーい、そろそろ昼休憩しようや」

村人2「ああ。そうだな。みんな、休憩しよう」

村人たちが集まって、座る。

村人3「いやあ、今日も暑いなぁ」

村人4「今年は晴れが多い。豊作だな」

村人1「そういえばさ、この前、うちのガキが海辺で鬼っ子見たってよ」

村人3「鬼? まだ生きとったんか?」

村人4「……どうする? 村の若いもん集めて、狩りに行くか?」

村人2「別にいいだろ。鬼っつっても、子供だろ? 害はないさ」

村人4「いや、子供がいるってことは、親がいるってことだろ?」

村人1「そうそう。まだ3体とかだといいけど、もっといたら、ヤバいだろ」

村人3「うーん。確かにな。不安の芽は摘んでおくか。明日、若いもん集めて、狩りに行こう」

村人4「よし、じゃあ、村長に話しとおしておくよ」

そのとき、遠くで物音が聞こえてくる。

村人1「なんだ? 村の方が騒がしいな」

村人2「なんかあったか?」

そのとき、村人5が走って来る。

村人5「大変だ! 鬼だ! 鬼が攻めてきたぞ!」

村人4「なんだって!?」

後ろから鬼1がやってくる。

村人3「う、後ろ!」

村人5「え?」

鬼1「ガアアアアアア!」

鬼1が村人5を切り殺す。

村人5「ぎゃあああああ!」

村人1「鬼だ!」

村人3「に、逃げろ!」

鬼が大勢やって来る。

鬼2「グゴアアアアア!」

鬼たちが村人たちを殺していく。

村人3「ぎゃあ!」

村人2「うがあっ!」

鬼たちが暴れ回る。

場面転換。

村の中。

鬼たちが村人たちを殺し、暴れ回っている。

鬼3「グガア!」

村人6「ぎゃあ!」

村人7「た、たすっ……ぎゃあ」

阿鼻叫喚。

その声がドンドンと収まっていく。

鬼4「はあ、はあ、はあ……」

鬼5「人間は一人も残すな! 皆殺しだ!」

鬼6「おおおー!」

場面転換。

家の中。

一郎「……はあ、はあ、はあ(恐怖で震えている)」

バンと家のドアが蹴り破られる。

鬼7「……」

一郎「ひっ!」

鬼7「……お前、一人か?」

一郎「う、うう……」

鬼7「親は?」

一郎「殺された……」

鬼7「……」

外から違う鬼の声。

鬼1の声「おい! そっちはどうだ? 人間が隠れてないか?」

一郎「ひっ……」

鬼7「……いや! いない! ここはもぬけの空だ!」

鬼1の声「そうか。おい、みんな! 最後に火を放つぞ。絶対に、一人も逃すな!」

一郎「……」

鬼7「おい。もうすぐここに火を放たれる。隙を見て、逃げろ」

一郎「……」

場面転換。

10年後。

森の中。

男1「……よし。ここは全然、荒らされてないな」

村人7「そっちはどうだ?」

男1「キノコや山菜、かなり採れたぞ」

男2「そっか。こっちはダメだ。鹿やイノシシもいない。もう狩られたんだろうな」

男1「……ということは」

男2「ああ。この辺りも鬼がいるんだろうな」

男1「鬼ヶ島から、結構、離れてるんだけどな……」

男2「くそ。あいつらさえいなければ、畑を耕せるのに」

男1「鬼が出てから10年……。人間たちは隠れ住むのが精いっぱいだからな。人が集まって村なんて作ろうものなら、襲ってくれって言ってるものだ」

男2「あいつらさえ……。あいつらさえ現れなければ……」

そのとき、ガサガサと草を掻き分ける音。

鬼8「うおおおおお! 人間!」

男1「うわああ! 鬼だ!」

鬼8「おおおおおおおお!」

男2「うああああああ!」

そこに桃太郎が走ってくる。

桃太郎「うおおおおおお!」

鬼8を斬る。

鬼8「グアアアアアア!」

鬼8が倒れる。

桃太郎「ふう。……お主たち、大丈夫か?」

男1「あ、ありがとう!」

男2「あんた、剣士か?」

桃太郎「ああ。各地を修行で回っている。……で? この生物はなんなのだ?」

鬼1「あんた、鬼を知らないのか?」

桃太郎「鬼? 鬼とはなんだ?」

場面転換。

男1「ということなんだ」

桃太郎「ほう。それは面白いな」

男2「面白い?」

桃太郎「俺は修行と同時に、名をあげることを目的としているんだ。その鬼というやつらを退治すれば、名を上げられそうだ」

男2「そんなことができれば、あんたの名を知らぬ者はいなくなるさ」

桃太郎「ふむ。……猿、犬、雉!」

猿・犬・雉「はっ!」

どこからか、猿、犬、雉の剣士が現れる。

桃太郎「今から、その鬼とやらを成敗に行く。ついてこい」

猿・犬・雉「はっ!」

場面転換。

鬼ヶ島内。

桃太郎たちが鬼たちを次々と殺している。

桃太郎「はああああ!」

鬼9「ぐあああ!」

猿「はあっ!」

鬼10「ぎゃあ!」

鬼11「た、たすけ……ぐああっ!」

犬「ふう……」

鬼12「くそ、人間がっ!」

桃太郎「ふん!」

桃太郎が鬼12を叩き切る。

桃太郎「……こんなものか」

雉「この辺りの鬼は全て駆逐できたかと」

桃太郎「よし、何体かの鬼の首を持って帰るぞ」

猿「御意」

場面転換。

祭りが行われている。

男3「本当にありがとうございました!」

男4「これで、鬼の脅威に震えることなく暮らせます」

桃太郎「お前たちは、俺の名を語り継いでくれればいい」

男3「あなたの名は?」

桃太郎「そうだな……。桃太郎と呼んでくれ」

その様子を見ている、子供の鬼。

子鬼「く、くそ……。こ、こうなったら!」

飛びだそうとする小鬼。

それを取り押さえる一郎。

一郎「ダメだ!」

子鬼「え?」

一郎「出て行けば、お前は殺される」

子鬼「わかってる! でも」

一郎「生きるんだ。一族の血を絶やす気か?」

子鬼「……」

一郎「これからは生き延びることだけ考えるんだ。いいな?」

子鬼「……お前はなんで、こんなことをしてくれる?」

一郎「俺は10年前……鬼に見逃してもらった。だから、今度は俺の番だ」

子鬼「そうか……」

一郎「さあ、他の人間に見られる前に立ち去るんだ」

子鬼「……わかった」

子鬼が歩き出す。

一郎「……元気でな」

場面転換。

子鬼が歩いている。

子鬼「……人間め。いつか……いつか、復讐してやる」

終わり。

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