秒殺の帝王

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■概要
人数:4人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
宮下 晴斗(みやした はると)
宮下 真緒(みやした まお)
会長
アナウンサー

■台本

ボクシングの試合場。
ワーッと歓声が上がる。

アナウンサー「決まったー! 右ストレートが綺麗に顎にヒット! 立てるか? カウントが進む! セブン、エイト、ナイン……テン! 試合終了―! これでなんと、デビュー戦から6試合連続、秒殺だ! 宮下選手、この記録をどこまで伸ばすのか―!」

場面転換。
晴斗の部屋。
ベッドの上でゴロゴロしている晴斗。
ガチャリとドアが開く。

真緒「あ、お兄ちゃん。また部屋でゴロゴロして」
晴斗「うるさいな。別にいいだろ」
真緒「試合決まったんでしょ? 会長さんから聞いたよ」
晴斗「だからなんだよ?」
真緒「練習しなくていいの?」
晴斗「する必要ねーだろ。今回も余裕の秒殺だってーの」
真緒「……そうだとしても、ちゃんと練習しなよ。対戦相手に失礼でしょ」
晴斗「いや、相手からしたら練習しないで欲しいって思うだろ。なんせ、俺との対戦だからな。それでなくてもプレッシャーが半端ないと思うぞ」
真緒「……6連続だったっけ?」
晴斗「ああ。今回で7連続いただきだな」

真緒がベッドの上に座る。

真緒「ねえ、お兄ちゃん」
晴斗「ん?」
真緒「辞めたら? ボクシング」
晴斗「はあ? 何言ってんだよ」
真緒「だってさ、全然楽しそうじゃないんだもん」
晴斗「……」
真緒「プロなんかにならなければよかったのに」
晴斗「……」
真緒「練習生のときに練習してた時の方が、ずっと楽しそうにボクシングしてた」
晴斗「お前にはわからないんだよ。ここまで来たら行くしかないだろ。みんなの期待だってある」
真緒「でも、その期待って!」

晴斗がガバっと起き上がる。
そして、歩いてドアを開ける。

真緒「……どこに行くの?」
晴斗「お前がうるさいから、走りに行ってくる」

晴斗が部屋を出て行き、バタンとドアが閉まる。

真緒「……」

場面転換。
ジム内。

会長「へー。それで心配になったと?」
真緒「はい……」
会長「大丈夫だ」
真緒「え?」
会長「あいつのボクシング好きは変わってない。ボクシングが好きって思いの強さは誰にだって負けてない。このジムのドアを開いたときからずっとな」
真緒「……でも」
会長「真緒ちゃんが心配するのもわかるよ。でも、あいつが納得するまで見守ってやってくれないか?」
真緒「……」
会長「あいつはさ、深夜にこっそり練習してるんだよ」
真緒「え? そうなんですか?」
会長「ああ。練習してる姿を見せるのが恥ずかしいんだろうな。明け方までずっとサンドバック叩いてるよ」
真緒「……もう、バカなんだから」

場面転換。
試合会場控室。
ウォーミングアップしている晴斗。

晴斗「シッシッシッ!」

ガチャリとドアが開く。

真緒「あ、あの……」
晴斗「おい! 試合前だぞ!」
会長「いいじゃねーか。今日のお前は肩に力が入り過ぎだ。真緒ちゃん、よく来てくれたね」
真緒「……どうですか? 兄の状態は?」
会長「今まで一番いいよ」
晴斗「見てろよ、真緒。今日はやってやるから」
真緒「……うん。頑張って」
会長「よし、時間だ、行くぞ!」
晴斗「はい!」

場面転換。
試合会場。
ワーッと歓声が上がる。

アナウンサー「決まったー! 左フックが綺麗に顎にヒット! 立てるか? カウントが進む! セブン、エイト、ナイン……テン! ダメだ、宮下、立てない! 試合終了―! これで、なんとデビュー以来7戦連続秒殺負けだ! 宮下選手、一体、この記録をどこまで伸ばすのか―」

終わり。

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