僕のあだ名
- 2023.10.07
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
田中 一郎(たなか いちろう)
男子1~4
女子1~3
■台本
休み時間の教室内。
色々な生徒たちが話をしている。
一郎「……」
一郎の耳に、色々な声が聞こえてくる。
以降、会話ではなく台詞単体が聞こえるイメージ。
女子1「ねえねえ、みゃっこ! 今日の帰りに駅前の古着屋、見に行かない?」
男子1「おい、ケイちん、教科書忘れてるぞ」
女子2「やだー、もえっち、サイアク―。あはははは」
男子2「つっきー、ぱないな!」
女子3「ミルキーってさ、やっぱ、みっちーのこと好きなの?」
男子3「もっちー! メイドちゃんが呼んでるぞ」
話し声を聞いて、一郎がため息を付く。
一郎「……はあ」
男子4「どうした、田中?」
一郎「……」
男子4「な、なんだよ、田中、俺をじっと見て」
一郎「どうして、僕は田中なの?」
男子4「は? 何言ってんだ、お前? 田中は田中だろ」
一郎「……僕だけあだ名がない」
男子4「へ?」
バンと机を叩く一郎。
一郎「なんで、僕だけ、あだ名がないんだよーー!」
場面転換。
一郎を取り囲むクラスメイト達。
ざわざわしている。
男子4「つまり、お前にもあだ名が欲しい、と?」
一郎「そうだよ! 高校まで、僕はずーっと、田中って呼ばれてたんだ! あだ名の一つや二つ、あってもいいでしょ?」
男子1「けどなぁ。田中って呼びやすいんだよな」
女子1「そうそう。クラスに田中って苗字、田中くん以外にいないしね」
一郎「でも……」
男子2「よし、じゃあ、俺がつけてやる。メガネ、でどうだ?」
女子2「安直すぎ―」
男子3「他にも眼鏡かけてるやついるし」
男子1「じゃあ、もやし」
女子3「それって、悪口じゃね?」
男子1「チビ」
女子3「だーかーら、悪口だってば」
男子2「ヒョロガリ?」
女子3「もやしと変わんないし」
男子1「七三」
女子3「七三じゃないでしょ」
男子2「田中って、これと言った特徴がないんだよな」
男子3「じゃあ、普通でいんじゃね?」
女子2「あだ名が普通って、可愛そうじゃない?」
男子1「ここはオーソドックスに名前から取ろうぜ。一郎だから、いっちはどうだ?」
男子2「なんか、某掲示板のスレを思い出すな」
男子3「なら、田中から、たっきーは?」
女子1「絶対やめて!」
女子2「ああ……。あんたの推しのアイドルと同じになっちゃうもんね」
男子1「なーんか、パンチもたりないよな。どうせなら、今までないようなあだ名にしたいよな」
女子2「そうだね」
女子3「でも、難しくない?」
みんながうーんと首をひねる。
男子4「そうだ! 今まで出たのを繋げたらどうだ?」
男子1「というと?」
男子4「ヒョロガリチビもやし眼鏡七三いっちたっきー」
男子2「おお! いいんじゃね?」
女子3「うんうん。特徴的だよね」
女子1「よし、じゃあ、これから田中くんのことは、ヒョロガリチビもやし眼鏡七三いっちたっきーで!」
男子2「よろしくな、ヒョロガリチビもやし眼鏡七三いっちたっきー」
女子3「私はいいと思うよ。ヒョロガリチビもやし眼鏡七三いっちたっきー」
一郎「あ、あのさ……」
男子4「ん? どうした?」
一郎「……田中のままでいいです」
終わり。