メガネはバフ

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
皆川 譲(みながわ ゆずる)
皆川 雫(みながわ しずく)
母親
女子1~4

■台本

譲が小学生の頃。

休み時間に教室で一人勉強している譲。

譲「えーっと、ここの角度が出れば、ここの角度の値を出せるのか……」

遠くでクラスメイト達のひそひそ話が聞こえる。

女の子1「皆川くんってさ、いつも勉強してるよね」

女の子2「友達いないのかな?」

女の子1「いなさそー。男の子にも女の子にも」

女の子2「なんていうかさ、地味だよね」

女の子1「うん。メガネかけて、勉強ばっかだもん。私は友達になりたくないなー」

女の子2「私も―。メガネって、なんか格好悪いよね」

譲「……」

譲(N)「……おかしい。母さんからは、勉強が出来る男の子はモテるって聞いてたのに。これじゃ、頑張ってる意味がないじゃないか! 勉強ばっかりで、目が悪くなって、いいことなんか、何もなかった!」

場面転換。

時間経過。譲が高校生になっている。

譲の部屋。

勉強している譲。

譲「えっと、Xの値は153だから、ここに代入して……」

そのとき、家のインターフォンが鳴る。

リビングの方から声がする。

雫の声「お兄ちゃーん、出て!」

譲「はあ!? 俺、勉強してんだけど!」

雫の声「私、動画見てんだけど!」

譲「停めればいいじゃねーか!」

雫の声「勉強、休憩すればいいじゃん」

もう一度、インターフォンが鳴る。

譲「……ったく!」

譲が立ち上がる。

場面転換。

ガチャリとドアが開く音。

譲「雫、お前宛だぞ」

雫「あ、来た来た!」

譲「お前の物なら、自分で出ろよな」

雫「お兄ちゃんのだって、一緒に来たんでしょ、その右手の箱」

譲「まあ、そうだけどさ……。とにかく、ほら」

雫「そこ置いておいて」

譲「……お前、ホント、ズボラだよな」

雫「お兄ちゃんに言われたくないね」

譲「そんなんだから、彼氏できないんだぞ」

雫「それこそ、お兄ちゃんに言われたくない」

譲「……」

場面転換。

ガチャリとドアを開く音。

机の上に箱を置く音。

譲「さてと、勉強の続き続き……」

場面転換。

朝。スズメの鳴き声。

アラームの音が鳴り響く。

譲「ん……」

アラームを消す。

譲「もう、5分……」

場面転換。

ドアがノックされる音。

母親「譲―。早く起きないと遅刻するわよ」

譲「っ!」

ガバっと起きる譲。

譲「やべえ、寝坊した。えっと、コンタクトは……」

引き出しを開ける音。

譲「あれ? 無いぞ」

譲(N)「そうだ。新しいの注文したんだった」

箱を開ける音。

譲「……あれ?」

場面転換。

キッチンに走って来る譲。

譲「母さん、雫は?」

母親「もうとっくに行ったわよ」

譲「クソ!」

母親「どうしたの?」

譲「いや、昨日、俺とあいつに配達来たんだけどさ、お互いのを間違って渡しちゃったみたいでさ」

母親「なんで、昨日のうちに確認しなかったの?」

譲「それは……」

母親「あんたたちはホント、ズボラだね」

譲「コンタクト入ってたんだよ、どうしようかな」

母親「一日我慢するしかないんじゃない?」

譲「怖くて、外歩けないって。あー、くそ。あいつ、自分の部屋に鍵なんかかけるなよな」

母親「それはあんたもでしょ」

譲「……」

場面転換。

譲の部屋。

譲(N)「さて、どうするか。……あいつ宛に届いた眼鏡を使うか?」

メガネをかける譲。

譲「少し視界が変だけど、ないよりはマシか」

場面転換。

道を歩く譲。

譲(N)「クソ、眼鏡なんてかけていったら、クラスの奴ら、またバカにするだろうな。小学校の時のように、インテリ眼鏡、なんて言われるかもしれない。あーあ、ホント、眼鏡ってデバフだよな……」

場面転換。

教室。

休み時間。

勉強している譲。

譲「……」

そこにクラスメイトがやってくる。

女子3「あれ? 皆川くん、今日はメガネなんだ」

譲「うっ! ああ、うん。ちょっとね」

女子4「もしかして、いつもコンタクトだったの?」

譲「そ、そうだけど」

女子3「ふーん」

譲「……なに?」

女子3「皆川くん、それ、似合ってると思う」

譲「え?」

女子4「私も思ったー! 皆川くん、眼鏡かけた方がなんか、イケメンに見えるよ」

譲「そ、そうなの?」

女子3「うんうん。これからは眼鏡にしなよ」

譲「……」

譲(N)「眼鏡は格好悪いんじゃなかったのか? ……もう、何がなんだかわからないな」

終わり。

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