【ラジオドラマ短編シナリオ】シーソーゲーム
- 2018.07.08
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、学園、ラブコメ
■キャスト
神谷 章吾 (17) 学生
神無月 舞 (17) 章吾の幼馴染
村田 新一 (17) 章吾の親友
新村 春菜 (17) クラスメート
■台本
○ シーン 1
章吾(N)「幼馴染って聞くと、恋を想像する奴が多いかもしれないが、実際は、そんな良いもんじゃない。口うるさいだけだ。早く縁を切りたいと思っても、なかなかそう上手くいかない。でも、まあ、そんな関係も、高校を卒業してしまえば終わり。……そう、思っていたのだが」
○ シーン 2
休み時間の教室。がやがやと騒がしい。
新村「神谷くん。ノートありがとう。助かった」
章吾「どうだ? びっくりしただろ? あの難問の、問5を解いたんだぜ」
新村「うん。びっくりした。字、汚くて。まさか、解読するほうが大変だと思わなかったよ」
章吾「……もう貸さねえ」
新村「冗談だよ、冗談。またお願いね」
章吾「自分で、ちゃんとノートとれよ(つぶやき)」
新一「ああー。いいよなー、春菜ちゃん」
章吾「うおっ、びっくりした。新一、いつからそこにいた?」
新一「『ノートありがとう。助かった』からだ」
章吾「……最初からか」
新一「うーん。春菜ちゃんって、可愛いよな。高校生であの胸は反則だよなぁ」
章吾「そこしか見てねえだろ」
新一「章吾だって、そう思うだろ?」
章吾「胸には、興味ねえよ」
新一「うわっ! お前、それは男として失格だぞ。この変態めっ」
章吾「お前が言うな! 大体、俺は髪の長い、おしとやかな女の子が好きなんだ」
新一「あー、はいはい。章吾には舞ちゃんがいるもんな」
章吾「何で、舞が出てくる? あいつは、俺の理想と正反対の女だ」
新一「おっと、噂をすれば……」
舞「ちょっと、章吾!」
章吾「なんだよ」
舞「……新村さんと何話してたのよ?」
章吾「それが、お前に関係あるのか?」
舞「なによ。やらしい」
章吾「(ため息)別に。ただ、ノート貸してやっただけだ」
舞「そ、そうなんだ。良かった(つぶやく)」
章吾「あん?」
舞「ううん。なんでもない。それよりさ、土曜日に映画見に行かない? ほら、タダ券貰っちゃって」
章吾「あん? 俺土日は、ゲームしてたいんだけど」
舞「別に、ゲームなんていつでもできるじゃない」
新一「ねえねえ、舞ちゃん」
舞「なに?」
新一「髪、伸ばしてみたら?」
舞「え?」
バシっと、頭を叩く音。
新一「痛ってえ。叩くことないだろ」
舞「え? え? 何の話?」
章吾「なんでも、ねえよ」
舞「それより、映画、大丈夫?」
章吾「タダ券、明日で期限切れるんだろ? しょうがねーから、行ってやるよ」
舞「……えへへ。なんか、章吾と映画行くなんて、久しぶりだね」
章吾「そうだったかぁ?」
舞「(ニコっとして)楽しみだね。明日」
教室の入り口からの声。
女の子「舞ぃー。そろそろ、理科室行こうよ」
舞「わかったー。ほら、章吾も、移動しなよ」
ぱたぱたと足音が遠ざかる。
新一「……可愛いと思うぜ、舞ちゃん」
章吾「春菜ちゃんは、どうしたんだ? お前、節操ないな」
新一「はあ……。こんな奴の、どこが良いんだか」
○ シーン 3
チャイムの音と、廊下を走る音。
章吾「くそー、寝坊したぁ」
がらがらとドアが開く。
章吾「セーフ(息を切らせながら)」
鞄を机に置く音。
章吾「おい、聞いてくれよ、新一。今日、目覚ましが鳴らなくて……って、あれ? あいつ休みか? 珍しいな」
携帯の着信音。
章吾「ん? メールか? 誰だ? こんな朝から」
開いて、操作する音。
章吾「新一からか……。はぁ? 『可愛い子見つけたから写真送る』だあ? あいつ、学校休んで、何やってんだ」
ピッ(ボタンを押す)
章吾「な……なにっ!」
ガタン、と椅子が倒れる。
章吾(N)「新一が送ってきた画像に写っていたのは、まさしく、理想の女の子の横顔だった。長い髪に、おしとやかそうな顔。俺は、その彼女に一目惚れした」
○ シーン 4
章吾が携帯を操作している。
新村「なーにニヤニヤしてるの?」
章吾「うわっ! 急に横から話しかけるなよ」
新村「携帯でエッチな画像でも見てる、とか?」
章吾「んなわけ、ねーだろ。って、なんだ、新村か」
新村「ほえ? 誰だと思ったの?」
章吾「あ、いや、別に。大体、こんな時に話しかけてくるのは、舞だから……って、あれ?」
新村「ああ。舞ちゃんなら、今日休みだよ」
章吾「へー」
新村「うわっ! ひど。今頃気付いたの? もう、昼だよ。……ねえねえ、それよりエッチな画像じゃないなら、なに? ゲーム? 見せてよ」
章吾「ちょ、馬鹿、止めろって」
新村「(奪い取って)えい! 取ったどー。(操作しながら)どれどれ、戦利品には、何が写ってるのかなぁ? ……あれぇ? 誰、この子」
章吾「わからん」
新村「……止めたほうがいいよ。捕まっちゃうから」
章吾「なんの話だ?」
新村「いくら可愛いからって、盗撮はダメだよ。犯罪だよ?」
章吾「お前は、俺をどういう目で見てるんだよ。とにかく、返せ」
新村「うーん。でも、その子どこかで見たことあるような……」
章吾「なに! 本当か?(詰め寄る)」
新村「え、やだ。神谷くん、大胆。(モジモジしながら)まだお昼だし、ここじゃ人がいっぱいいるし……」
章吾「誰だ? どこで見た? 教えてくれ!」
新村「ノリ悪―い! ぶーぶー!」
章吾「いいから、教えろ!」
新村「うーん。どこだったかなー。すぐ最近見たような気がするけど……あー、駄目、思い出せない」
章吾「使えねぇー」
新村「ふん、悪かったね。でも、ま、神谷くんの弱みも握れたし、今日のところは、暴言を許してやろう」
章吾「なんだ? 弱みって」
新村「ふふーん。今後、私に逆らったりしたら、このことを舞ちゃんに言いつけてやるんだから。浮気とか、絶対許さないタイプだと思うよ、舞ちゃん」
章吾「あいつは、ただの幼馴染だ」
新村「あれ? そうなの? じゃあさ、私にも、チャンスあるかな?」
章吾「うーん。ないんじゃないか(携帯に集中しながら)」
新村「……ばか」
ピッ(携帯のボタンを押す)
○ シーン 5
川の流れる音と、子供たちのはしゃぐ声。
新一が走ってくる。
新一「(息を切らせて)悪ぃ。お待たせ」
章吾「用事ってなんだ? わざわざ、こんなところに呼び出して。まあ、俺もお前に聞きたいことがあるから、丁度いいけどな」
新一「章吾、送った写真の子はどうだった?」
章吾「グッジョブだ、新一。お前が生きてきた中で一番の手柄だった」
新一「ふっ。章吾、喜べ。何と、その子の連絡先を聞いた。それを教えてやってもいい」
章吾「うおぉぉぉ! でかしたぞ、新一。今日から、お前を下僕にしてやってもいいぞ」
新一「落ち着け、章吾。……ん? あれ? なんか、変じゃないか?」
章吾「いいから、あの子の連絡先教えろ。早くしないと、俺は、お前を殺して、奪ってしまう」
新一「お前の友達、辞めたくなってきたよ、俺。まあ、とにかく! あの子に会わせてやってもいい。だが、それには条件がある」
章吾「あ? 条件だぁ?」
新一「俺が舞ちゃんと付き合うことを認めてくれ」
章吾「はあ? 何言ってるんだ、お前。そんなこと、俺が認めることじゃねえだろ。舞が決めることじゃねえのか? それって」
新一「舞ちゃんは、お前がいいって言えば、付き合うって言ってくれた」
章吾「へ、へー。そ、そうなんだ。いいんじゃねぇか、それなら別に」
○ シーン 6
ドサッと、ベッドに寝転ぶ音。
章吾「まったく! 何だよ、そりゃ。意味がわかんねえ!」
章吾(M)「新一が出した条件は、舞に誘われていた、明日の映画の待ち合わせ場所に行かないことだった」
章吾「あいつはただの幼馴染だっての。それに、新一からは、あの子を紹介してもらえるんだ。明日は行かねえぞ。絶対、行かない」
× × ×
舞「……なんか、章吾と映画行くなんて、久しぶりだね」
舞「(ニコっとして)楽しみだね。明日」
× × ×
章吾「……行って……たまるかよ」
ピッ(携帯のボタンを押す)
○ シーン 7
街中のざわめき。章吾の荒い息づかい。
章吾「くそ、俺は馬鹿か。何で、走ってるんだよ。どうかしてるぞ、俺」
立ち止まり、息切れの後、大きく深呼吸。
章吾「なんだよ。舞はまだ、来てねえのか。……大体、付き合う、付き合わないを、俺で決めやがって。そうだ、俺は別にあいつが好きってわけじゃねえ。そう、俺は怒ってるんだ。一言、文句を言うために、来んだ」
舞「……章吾」
章吾「舞、てめえ! って、……あれ? 君は、写真の……」
舞「ご、ごめんね、章吾。これカツラなの」
章吾「あ、え? え?」
舞「本当にごめん。新一君がどうしても、やれって言うから……」
章吾「あの写真……舞……だったのか?」
舞「……うん」
○ シーン 8
教室のざわめき。
隣の組の男子「教科書、サンキューな。助かった」
舞「ううん。別に、いいよ。じゃあね」
隣の組の男子「おう。今度奢るな」
ドアが閉まる音。
章吾「おい、舞! 誰だ、あいつ?」
舞「え? ああ。クラブで一緒なの」
章吾「何、話してたんだよ」
舞「別に。ただ、教科書貸してあげただけだよ」
章吾「ふーん(不機嫌そうに)。まあ、いいや。それより、今度の土曜日、映画行かねえか? タダ券があんだよ」
舞「うーん。どうしようかな(悪戯っぽく)」
章吾(M)「俺と舞の今までの関係は崩れてしまった。あの日、映画館の前で。俺と舞の関係は、完全に逆転してしまったのだ。まるで、公園に佇む、シーソーのように」
おわり
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