【シナリオ】傘が願うてるてる坊主

【シナリオ】傘が願うてるてる坊主


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パラパラと雨が降る音。

リチャード(N)「雨が降っていた。俺の国では内戦が続き、毎日のように人が死んでいく。流される血は降り続ける雨によって洗い流されていった……」

  ドアが開き、コーディー(17)が部屋に入ってくる。

  そして、リチャード(34)の前で敬礼する。

コーディー「本日より配属された、コーディー・マクスウェルです」

リチャード「敬礼は止せ。ここは軍隊じゃないんだ」

コーディー「申し訳ありません」

リチャード「俺は堅苦しいのは嫌いなんだがな。できれば、敬語も止めてもらえると助かる」

コーディー「いえ、英雄さんに対して、敬語を使わないなど、無理です」

リチャード「英雄ねぇ……。俺は英雄なんかとは真逆の存在さ」

コーディー「そんなことはございません。これまで上げた戦果は、我々にとってはまさに伝説級です」

リチャード「戦果だと? 油断している人間の頭を銃で撃ち抜く。……こんなの戦いと呼べはしないさ」

コーディー「任務達成率百パーセント。我々にとって、リチャードさんは憧れの存在であることには変わりありません」

リチャード「ターゲットの中には、一歳にも満たない子供も含まれていた。それでも俺は躊躇なく、引き金を引いてきた。そんな男に憧れるなんて、正気の沙汰とは思えないな」

コーディー「……」

リチャード「まあ、座れ、コーディー。堅苦しいのは嫌いだと言っただろう?」

コーディー「失礼いたします」

  コーディーが椅子に座る。

リチャード「コーディー、君はいくつだ?」

コーディー「今年で17になります」

リチャード「家族は?」

コーディー「ハレゼイナ地区に母が。父は十年前の内乱の巻き添えで亡くなりました」

リチャード「なぜ、義勇兵に志願したんだ?」

コーディー「早く内乱を終わらせて、この国を平和にしたいんです」

リチャード「なるほど。大した夢だな。昔の俺と似ている」

コーディー「光栄です」

リチャード「なあ、コーディー。この国を平和にしたいなら、なぜ国軍に入らなかったんだ? 俺たちをせん滅する方が遥かに簡単だろう?」

コーディー「正義はこちらにあると思いました」

リチャード「正義、ねぇ……。そんなものは味方によって変わっていく。この義勇兵の組織だって、決してクリーンなんかじゃない。勝つためには汚いことだって数多くやってきた。この俺がいい証人さ」

コーディー「……」

リチャード「なあ、コーディー。今ならまだ間に合う。母親のところに帰って、家族を守る生き方を選べ」

コーディー「……僕の周りは、いつも死人で溢れてました。友達、近隣の人たち、恩人。……愛する人を内戦で失いました。だから、どうしても放っておけないんです。確かに僕の力なんて些細なものです。でも、それでも僕はこの身を投じて、平和を目指したいんです。毎日、死の恐怖で震えることのない世界にしたいんです」

リチャード「俺はな。5つの時に、目の前で国軍に両親を殺されたんだ」

コーディー「……」

リチャード「国軍の奴らは、当時の俺を見て、まだ子供だと言って見逃してくれた。その兵士の慈悲だよ。俺が生き延びることができたのは」

コーディー「……」

リチャード「そうして、生き残った俺は国軍兵に関連する人間を数多く殺してきた。その中には、俺を助けた兵士の知り合いもいただろう。部下、恩人、恋人、そして、その子供」

コーディー「……」

リチャード「だが、俺は一切、任務に対して慈悲を掛けてこなかった。子供だろうと容赦なく消してきたんだ」

コーディー「……」

リチャード「国軍から見たら、俺は悪魔さ。この世から消えれば、いくぶん、この国は平和になるんじゃないか?」

コーディー「後悔、されてるんですか?」

リチャード「それはない。一度だって、俺は後悔したことはなかったんだ。だからさ。俺は人間として終わってる」

コーディー「……どうして、リチャードさんは戦い続けるのですか?」

リチャード「同じさ、君と。この国を平和にしたかった。明日死ぬかもしれないと怯えることのない世界を作りたかった。その想いで、俺はこれまで多くの命を奪ってきたんだ」

コーディー「……」

リチャード「俺は君の年の頃にはもう二桁を越える人を殺してきた。だからかな。君のような若い人間を見ると、どうしても諭したくなる」

コーディー「……」

リチャード「もう一度言う。コーディ、まだ間に合う。母親の元へ帰れ」

コーディー「……話を聞いて、僕の中でリチャードさんの印象が大きく変わりました」

リチャード「だろう?」

コーディー「もう一度言わせていただきます。僕にとって、リチャードさんは憧れの存在です」

リチャード「(ため息)頑固なところも、俺に似てやがる……」

コーディー「光栄です」

リチャード「君の意思はわかった。もう、帰れとは言わない。……だが、これだけは覚えておいてくれ。自分の中の正義に従って戦え。戦う理由を忘れるんじゃないぞ」

コーディー「はい!」

  ドアが開き、男が入ってくる。

男「リチャード。任務だ。この写真の男を始末しろ」

リチャード「行くぞ、コーディー。君の初任務だ」

コーディー「は、はい!」

  時間経過。

  リチャードとコーディーが廊下を歩く。

コーディー「あ、あの、リチャードさん。……その、こんな昼間に?」

リチャード「暗殺と聞いて、深夜を想像したか? 逆なんだ、コーディー。相手も、そう思っている。だから、夜の方が、警備が厳重なんだよ。その分、昼間は気が緩む。まさか、明るいうちに敵が堂々と入ってくることはない、ってな。その証拠に、今、俺たちは簡単にターゲットの家に入り込めている」

コーディー「……なるほど」

リチャード「とは言え、明るいうちは目立つ。さっさと済ませるぞ」

コーディー「はい」

  リチャードがドアを開く。

テスター「なっ! なんだ、お前たち……」

  サイレント銃を撃つリチャード。

テスター「うっ!」

  ドサリと倒れる音。

妻「あなたっ!」

  サイレント銃を撃つリチャード。

妻「うっ!」

  ドサリと倒れる音。

コーディー「そ、その……。この女性は殺す必要はなかったのでは?」

リチャード「見られたからな。ここで騒ぎになったら、俺たちは殺されるだろうな」

コーディー「……」

リチャード「最低だろ? 自分が生き残るために俺は、殺さなくてもいい人間を殺した。これからも、俺は人を殺し続ける。この国を平和にするためにな」

コーディー「……」

  その時、ドアが開く音がする。

子供「……お父さん?」

  子供が両親の亡骸に駆け寄る。

子供「お父さん! お母さん!」

リチャード「くそっ!」

  リチャードが銃をカチリと音を立てて構える。

子供「お父さん、お母さん! うわーん!」

リチャード「……」

コーディー「リチャードさん?」

リチャード「行くぞ、コーディー」

コーディー「しかし……」

  そのとき、銃声がする。

リチャード「うっ……」

子供「はあ……はあ……はあ……」

コーディー「リチャードさん!」

子供「お父さんと、お母さんの仇」

  リチャードがドサリと倒れる。

コーディー「リチャードさん!」

リチャード「……逃げるんだ、コーディー。早く!」

コーディー「でも……」

リチャード「俺は助からん! 早くしろ!」

コーディー「は、はい……」

  コーディーが走っていく。

リチャード(N)「今まで一度も躊躇したことなんてなかった。子供の前で両親を殺し、その子供も殺してきた。……でも、なぜだろうな。今日は躊躇した。……思い出したからかもな。自分の正義に従って任務を遂行しろ……か。コーディー。俺はな。早く、作りたいんだよ。俺のような悪魔が存在する必要のない国を。平和な国を……。俺はずっと願っていたんだ。雨が止むことを……」

終わり

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