【シナリオブログ】妖怪退治は放課後に 第3話②

【シナリオブログ】妖怪退治は放課後に 第3話②

○  シーン 3
  廊下を歩く、和馬。

和馬「雫先輩、ちゃんと夏姫先輩が帰るのを止めてくれたかなぁ」

  そこに、賀茂珠萌が駆けてくる。

珠萌「おやおや? 和馬君じゃないか。こんな時間まで、生研のお仕事かい? 大変だね」
和馬「あっ、珠萌さん。うん。まあ、文化祭が近いからね。ちょっと忙しいんだ。珠萌さんこそ、こんな時間まで残ってるなんて珍しいね」
珠萌「うん。私もちょっと、部活でね」
和馬「あれ? 珠萌さん、部活に入ってたっけ?」
珠萌「うん。学園探索部だよ」
和馬「へぇ……。ん? 学園探索部? そんな部、あった? 聞いたことないよ?」
珠萌「最近、できたんだよ。まあ、部員は私しかいなくて、まだ、学園に創部申請してないけど」
和馬「(呆れて)そういうのは、部って言わないよ。……もしかして、また、迷っただけなんじゃないの?」
珠萌「にゃはは。バレたかぁ。うーん。私って、方向音痴なのかなぁ?」
和馬「この前も、迷ってたもんね」
珠萌「ねえ、和馬君も入らない? 学園探索部。楽しいよぉ」
和馬「いや、遠慮しておくよ」
珠萌「むー。残念。和馬君が入ってくれれば、面倒な創部申請もやってくれると思ったのに。部になったら、部費も出て、豪遊できると思ったのになぁ……」
和馬「豪遊って……。(つぶやくように)うーん……。部費……かぁ」
珠萌「ん? どうかした?」
和馬「いや……、確かに部になれば、多少は部費がでるなぁってさ」
珠萌「部費の心配? でも、生研って、結構部費出てるんじゃないの?」
和馬「いやぁ、生研のことじゃなくて……」
珠萌「ふーん。あっ、そうだ。和馬君、もう生研の仕事終わったんなら、一緒に帰らない? 町で、美味しいパフェがある店見つけたんだけど」
和馬「ごめん。これから、占星クラブに行かないといけないんだ」
珠萌「(不機嫌に)……そうなんだ。(再び元気に)また、幽霊退治とかするの? 今じゃ、和馬君、東棟のゴーストスイーパーだもんね」
和馬「別に、僕が退治してるわけじゃないよ。頑張ってるのは、千愛先輩なんだ」
珠萌「その、千愛先輩って、どんな人なの?」
和馬「普段は、やる気なくて、毒ばっかり吐くけど、本当に困ってる時は頼りになる人だよ」
珠萌「ふーん。随分、信頼してるんだね」
和馬「べ、別に信頼とか……。うーん、でも、そうかもしれない」
珠萌「そうなんだ……」
和馬「でも、僕は、千愛先輩に頼ってばかりなんだ。……僕自身は正直、何もできない」
珠萌「そんなに落ち込むことないって。普通の人じゃ、変化退治とか無理なんだからさ」
和馬「だからって、逃げたくないんだ。……何もできないから、何もしない。そういうのは、もう止めるって決めたんだ」
珠萌「和馬君らしいね。……ねえ、和馬君。私と最初に会った時のこと覚えてる?」
和馬「え? 最初? うーん。クラスの自己紹介の時のこと?」
珠萌「ううん。なんでもない。忘れて。……じゃあ、私、帰るね(駆けていく)」
和馬「え? あっ、珠萌さん? ……どうしたんだろ? 急に」

  静かな廊下を歩き続ける和馬。
  その時、蘆屋千愛(17)が、階段を駆け上がってくる。

和馬「あっ、千愛先輩、どうしたんですか? 今から、そっちに行こうと思って……」
千愛「和馬くん、着いてきて」
和馬「え? あっ、はい」

  和馬と千愛が、並んで走る。

和馬「珍しいですね、千愛先輩が走ってるなんて」
千愛「私だって、非常時くらいは走るわ」
和馬「非常時?」

  後ろから、ガチーンと歯を立てる音。

和馬「え? ええっ! なんですか、このでっかいドクロは!」
千愛「がしゃどくろ。戦死者や野垂れ死にした者たち。つまり埋葬されなかった者の怨念が集まった妖怪よ」
和馬「いや、そういうことじゃなくて……。とにかく、早く、なんとかして下さいよ」
千愛「手持ちの霊符がきれてるから、無理ね」

  ガシャーンと、歯を立てる音。

和馬「な、なんか、僕が狙われてませんか?」
千愛「私より和馬君の方が、霊力が高いんだから、当然よ。御馳走が並んでるなら、美味しそうな方を食べようとするわ」
和馬「僕を巻き込まないでください」
千愛「和馬君。一つ、提案があるのだけど」
和馬「なんですか?」
千愛「二手に分かれましょう」
和馬「巻き込んだ上に、見捨てる気ですか!」
千愛「冗談よ。……部室が見えてきたわ」
和馬「部室に、霊符あるんですか?」
千愛「非常時用のがね。でも、あれは使いたくなかったわ」
和馬「でも、今は非常時ですよ」
千愛「……そうね」

  占星クラブの部室に、転がるように飛び込む、和馬と千愛。

和馬「千愛先輩、霊符です」
千愛「(受け取って)……滅」
がしゃどくろ「ギィィィアアア……」
和馬「消えたぁ……。助かった」
千愛「あんな雑魚に、高い札を使ってしまったわ」
和馬「……高い札、ですか」
千愛「まあ、このとっておきの札を使わなかっただけ、まだ救いがあるわね」
和馬「その、とっておきって、高いんですか?」
千愛「ええ。和馬君の人生を十回くらい買えるほどにね」
和馬「……値段は聞かないことにします。どっちにしても、傷つきそうですから」
千愛「それは、賢明ね」
和馬「そういえば、ずっと気になってたんですけど、先輩って、いつも霊符を使って、一言、言葉を言うだけですけど、陰陽師って長い呪文とか唱えないんですか? って、テレビとかの見過ぎですかね」
千愛「いいえ。そんなこと無いわよ。本来であれば、言霊に霊力を乗せることで、術を発動させるものなのよ」
和馬「じゃあ、どうして、先輩はその呪文みたいなのは、唱えないんですか?」
千愛「……面倒くさいじゃない」
和馬「……そんな理由なんですか?」
千愛「他に、理由がある?」
和馬「いや、実に先輩らしいです」
千愛「それにしても、よく分からないわね」
和馬「え? 何がですか?」
千愛「犯人の狙いが分からないってことよ」
和馬「……先輩を狙ってるってことじゃないんですか?」
千愛「私を狙っているのは、確かよ。でも、どうしたいのかが分からないわ」
和馬「どういうことですか?」
千愛「つまり、私を困らせたいのか、殺したいのか……」
和馬「殺しって……、そんな……」
千愛「まあ、殺したいって可能性は少なそうね。やり方が、まどろっこしいわ」
和馬「でも、妖怪相手じゃ、万が一ってことも……」
千愛「そうね。そう考えると、試してるって気がしてきたわ。別にそれで、死んでも構わない。そんな感じかしらね」
和馬「……すいません。犯人の目星もつけられなくて……」
千愛「調査は、私がやってるから平気よ。自分のことなんだから、当然のことだわ」
和馬「でも……」
千愛「和馬君は、何事にも、気をまわし過ぎよ。放課後に、雑務をしに来てくれるだけで、随分と助かってるわ」
和馬「……」
千愛「今日は、部室の片づけが終わったら、帰ってもいいわ。私も、もう帰るしね」
和馬「……千愛先輩が、こんな時間に帰るなんて、珍しいですね」
千愛「ちょっと、仕事の依頼があるのよ。本当なら、そういうのは、引き受けないのだけど、最近、出費があったから仕方ないわ」
和馬「……霊符を買ったからですよね? あの、僕も、その仕事、手伝います!」
千愛「だから、和馬君は気をまわし過ぎよ。この前の事件は、私が、自分の意志で関わったの。あなたが、気を病む必要はないわ」
和馬「……本当に、何か手伝えませんか?」
千愛「そうね……。そういえば、あのモヤシピアノは、どうしてるかしら?」
和馬「モヤシピアノ? ……ああ、木ノ下くんのことですか。しばらく、休んでましたけど、最近は登校するようになりました」
千愛「……そう。相変わらず、ピアノばかり弾いてるのかしら?」
和馬「はい。結局、あの教室って、木ノ下君の練習専用になったみたいですね」
千愛「随分と、気前がいいわね」
和馬「ええ。やっぱり、先週のピアノコンクールで、優勝したのが大きかったんじゃないですかね」
千愛「……そう」
和馬「あの、木ノ下君が、どうかしたんですか?」
千愛「いいえ。何でもないわ」
和馬「せめて家まで送りますよ。って……そっか、途中で襲われたら、僕、足引っ張っちゃいますよね」
千愛「……そうね。気持ちだけ、受け取っておくわ。和馬君には掃除の方を、お願いするわ。それじゃ、また、明日ね」

  千愛が部室を出ていく。

和馬「……お金だけでも、何とかしたいなぁ。……とにかく、部室の整理をしちゃおう。って……すごい散らかってる! ……これ、今日中に終わるかなぁ」

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