【シナリオ】あなたを守ります
- 2019.04.09
- 映像系(10分~30分)
〇 ボクシング会場
柳川真一(20)と和田哲也(25)がリング上で殴り合っている。
ゴングが鳴る。
アナウンサー「さあ、挑戦者の柳川、チャンピンに対して、果敢に攻めていますが、ここでゴングが鳴り、五ラウンド終了です」
真一と和田がコーナーに戻っていく。
真一がコーナーで椅子に座る。
会長「真一、いいぞ。その調子だ。ベルトが見えてきたぞ」
真一「(息を切らせながら)はい!」
会長「もうすぐだ。もうすぐで、お前の夢だった、日本一になれるぞ」
真一「……チャンピオンになれば」
会長「ん?」
真一「ボクが一番強いってことですよね?」
会長「ああ、そうだ」
真一「じゃあ、チャンピオンにならないと」
会長「その意気だ!」
真一が立ち上がると同時に、ゴングが鳴る。
真一「(呟くように)……行ってくるよ、澪」
マウスピースを咥え、リングの中央へ。
暗転。
タイトル「あなたを守ります」
〇 学校の裏庭・回想
真一(8)が田中(8)と加藤に詰め寄られている。
真一「……止めてよ」
後ずさりするが、加藤に後ろに回り込まれ、羽交い絞めにされる。
田中がボクシングのように構えて、腕を振り上げる。
田中「さあ、田中選手、ここで柳川を倒せばチャンピオンだ!」
真一「止めてってば!」
田中が思い切り真一を殴る。
同時に加藤が手を離したので、地面に倒れる真一。
田中「入ったー! 田中選手の右ストレートで、柳川倒れたー!」
加藤「さあ、柳川立てるかー?」
真一「うう……」
泣きながら、起き上がろうとする真一。
それを見て、田中が舌打ちをする。
そして、真一の顔を蹴る。
真一「うがっ!」
田中「今度は柳川の顔面に蹴りが入ったぞ!」
加藤「あははは! 蹴りは反則だって!」
澪の声「あんたたち、何やってるのよー」
近藤澪(8)が走ってくる。
田中「ちっ! 近藤かよ」
澪「また真一をイジメて! 今日は絶対に許さないんだから」
田中「ばーか! こっちは二人だぞ。お前もボコボコにしてやるよ」
田中が澪の前に立ち、加藤が後ろに回る。
真一「……澪ちゃん、逃げて」
澪「二人だけでいいの? もっと呼ぶなら、待っててあげるけど?」
田中「女のくせに生意気だな」
田中がボクシングの構えをする。
そして、澪も同じく、ボクシングの構えをする。澪の方はより本格的で、軽くステップを踏んでいる。
田中「おらあ!」
田中が澪に殴りかかる。
澪「しっ!」
見事に田中の顔面にカウンターが入る。
田中「うがっ!」
倒れる田中。
すかさず振り向き、加藤にフックを喰らわせる澪。
加藤「あうっ!」
加藤も倒れる。
真一「……すごい」
〇 橋の下(夕方)
澪がシャドーボクシングをしている。
タオルを持って、座って見ている真一。
大きく息を吐いて、動きを止める澪。
立ち上がって、澪にタオルを渡す真一。
真一「やっぱり、澪ちゃんはすごいなぁ。さっきも二人をあっさりやっつけちゃうんだもん」
澪「ううん。あんな素人なんて、何人倒しても意味なんかないよ。私よりも強い人なんて、ジムにいっぱいいるしさ」
タオルで顔を拭く澪。
真一「それでも、すごいと思う。……ねえ、澪ちゃん。ボクにもボクシング教えてよ」
澪「え? どうして?」
真一「ボクも澪ちゃんみたいに強くなったら、もうイジメられないでしょ? ボク、もうイジメられたくないんだ」
澪「ダーメ」
真一「そんなっ!」
澪「だって、必要ないよ。真一は強くならなくてもいいんだから」
真一「で、でも……」
澪「私が守ってあげる」
真一「……え?」
澪「強い私が、ずっと真一を守ってあげる。だから、真一は強くならなくていいの」
真一「……澪ちゃん」
澪はタオルを真一に渡して、またシャドーボクシングを始める。
澪「私がチャンピオン……日本一になったら、もう絶対に真一はイジメられないよ」
真一「……」
ドンドン澪のシャドーボクシングが激しくなる。
澪「だってさ、日本一強い女の子の夫をイジメる人なんて、いないでしょ?」
顔を真っ赤にしている澪は誤魔化すように、さらにスピードを上げる。
真一「(微笑んで)……うん、そうだね」
〇 ジム内
リングの上でスパーリングをしている澪を、リングサイドで応援する真一。
〇 河川敷
ロードワークをしている澪。
その横を自転車に乗って並走する真一。
〇 試合会場
澪が試合をしている。
澪のパンチで倒れる相手。
真一に向かって手を挙げる澪。
拍手する真一。
〇 斎場
澪の遺影。
葬式の場で呆然としている真一。
男性「……事故だって」
女性「ロードワーク中に、酔っ払い運転ではねられたみたいね」
男性「……澪ちゃん、まだ、小さかったのに」
呆然と澪の遺影を見ている真一。
〇 学校の裏庭
田中と加藤に殴られている真一。
田中「へへへ! もうお前を守ってくれる奴はいないんだぞ! ざまーみろ!」
殴られて倒れる真一。
真一「……澪ちゃんは、ボクを守ってくれるって約束してくれた」
加藤「あははは! 約束破られてやんの! あいつは嘘つきなんだよ!」
真一「澪ちゃんは、嘘つきなんかじゃない!今度はボクが守るんだ」
田中「はあ?」
真一が立ち上がって、田中に殴りかかる。
しかし、反対に殴られ返されてしまう。
〇 同
倒れている真一。顔はボコボコにされている。
真一「澪ちゃんを嘘つきなんかにしない。……ボクが澪ちゃんの夢を守るんだ!」
回想終わり。
〇 ボクシング会場
試合をしている真一。
真一のフックが和田の顔面を捉え、和田が倒れる。
会場が一気に湧く。
アナウンサー「柳川のフックが和田を捉えた! チャンピオンダウーン!」
だが、和田はフラフラとしながらも立ち上がる。
そして、そこでゴングが鳴り、真一と和田が自分のコーナーへと戻る。
椅子に座る真一。
会長「惜しかったな、真一。だが、もうベルトは目前だ」
真一「……日本一になったら、もう誰も、ボクをイジメることはできなくなる」
会長「真一?」
真一「澪ちゃん、見てて。もう、澪ちゃんを嘘つきなんて呼ばせないから」
再びゴングが鳴り、真一が立ち上がる。
リングの中央まで歩く真一。
真一「澪ちゃんは、ずっとボクを守ってくれてた。だから今度は、ボクが澪ちゃんの夢を守るからね」
真一と和田がファイティングポーズをする。
レフェリー「ファイ!」
真一と和田が同時にパンチを繰り出す。
終わり
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