【声劇台本】ワタシの名前は
- 2019.05.17
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
フラン
クレア
リチャード
その他
■台本
カチャカチャという、機械を組み立てる音。
フラン「ふう、これで動くはず……」
パチっというスイッチを押す音。
ブンっと電源が入る音がする。
クレア「……おはようございます。ご主人様」
フラン「やったあっ! 成功した! 君の名前はクレアだ。よろしくね、クレア」
クレア「クレア……。それがワタシの名前」
フラン「そうだよ、クレア。君は僕が初めて作ることに成功したアンドロイドだ」
クレア「ご主人様、ワタシは何をすればいいですか?」
フラン「ご主人様ってなんか、くすぐったいなぁ。僕のことはフランって呼んでね」
クレア「フラン様、ワタシは何をすればいいですか?」
フラン「様は付けなくても……まあ、いいか。それじゃ、クレア、お掃除してくれない?」
クレア「お掃除?」
フラン「そっか。まだクレアは何も知らないんだね。これから、たくさんのことを覚えていこうね」
クレア「はい。色々教えてください。フラン様」
フラン「まずは掃除の仕方だね。えっと……」
場面転換。
カチャカチャと機械を組み立てる音。
ガチャリとドアが開く。
クレア「フラン様、お掃除、終りました」
フラン「お疲れ様。それじゃ、次は料理を覚えて貰おうかな」
クレア「料理……」
場面転換。
テーブルの上に料理の入った皿が置かれる。
クレア「フラン様、できました」
フラン「ありがとう、クレア。それじゃ、さっそく、いただきます」
ガリっという音。
フラン「うっ……」
クレア「いかがですか? 美味しいですか?」
フラン「……料理は難しいよね。ゆっくり覚えていこうね、クレア」
場面転換。
カチャカチャと機械を組み立てる音。
ドアが開く。
クレア「フラン様、お食事をお持ちしました。今日はシチューです」
フラン「ありがとう、クレア。うわあ、美味しそう。いただきます!」
フランが一口食べる。
フラン「うん、美味しい! 本当にクレアは物覚えが早いね」
クレア「ありがとうございます」
フラン「待っててね、クレア。もうすぐで二号機が完成するから。そしたら、もう少し楽になるよ」
クレア「二号機?」
フラン「うーん。まあ、妹って感じかな?」
クレア「妹……」
場面転換。
カチャカチャと機械を組み立てる音。
ドアが開かれる。
クレア「フラン様、お食事をお持ちしました」
フラン「ありがとう、クレア。で、どう? ソフィは?」
クレア「問題なく、動いてます」
フラン「あはは。そうじゃなくて、仲良くできてる?」
クレア「仲良く?」
フラン「うーん。その辺の感覚は、まだわからないかな?」
クレア「連携は取れています」
フラン「そうじゃなくて……まあ、いいか」
場面転換。
カチャカチャと機械を組み立てる音。
フラン「ふう、さすがに10体は作り過ぎかな」
ドアがノックされ、開く。
クレア「フラン様、お客様がいらっしゃいました」
フラン「お客さん?」
リチャード「どうも、フラン博士。私は国軍少佐のリチャードと言います。実は折り入って、フラン博士にお願いがあって来ました」
フラン「……軍が、僕に何の用でしょう?」
リチャード「フラン博士の、この素晴らしい才能を軍で活かしていただきたいのです」
フラン「僕は、兵器は作る気はありません」
リチャード「いえいえ、そうではありません。人間の手伝いをするアンドロイドが欲しいのです」
フラン「人間の手伝い?」
リチャード「そうです。兵士たちをサポートする、いわばメイドのような存在です。戦地に女性を送るわけにはいきませんから」
フラン「そういうことでしたら……」
リチャード「ありがとうございます!」
場面転換。
カチャカチャと機械を組み立てる音。
ドアが開く。
クレア「フラン様、お食事ができました」
フラン「そこに置いておいて」
クレア「大丈夫ですか、フラン様。お疲れのようですが」
フラン「平気だよ。それに、リチャードさんから今月までにあと30体のアンドロイドの発注が来たんだ。休んでいられないよ」
クレア「体を壊します。お断りしたらいかがでしょう?」
フラン「いや、いいんだ。誰かの役に立てるアンドロイドを作る。それが僕の夢だったからね」
クレア「誰かの役に……」
フラン「うっ!」
ドサっと倒れる音。
クレア「フラン様、大丈夫ですか?」
場面転換。
リチャード「それでは、この初期型をいただいていきます」
クレア「……フラン様」
フラン「ごめんね、クレア。直ぐに新しいのを作るから、それまでみんなの役にたってね」
クレア「わかりました」
場面転換。
ザシュっと人を刺す音。
敵兵士「ぐあっ!」
クレア「索敵……。他、敵兵はいません」
リチャード「よくやった。001。では、次の戦場へ向かってくれ」
クレア「ワタシはいつ、フラン様の元に戻れるのでしょうか?」
リチャード「まだまだだ。もっと役にやってもらってからだな」
クレア「……わかりました」
場面転換。
銃を撃つ音。
敵兵士「くそっ! このロボットが……ぐあ!」
クレア「残敵ゼロ。任務完了しました」
リチャード「よくやった、001」
クレア「リチャード様、ワタシはいつ、フラン様の元に帰れるのでしょうか?」
リチャード「もう少しだ。もう少し役に立ってもらえれば、帰らせてやる」
クレア「……承知しました」
ドアが開く。
兵士「リチャード大佐、敵国主要首都グラレドが陥落しました」
リチャード「くっくっく。これで我が軍の勝利は目前だな。アンドロイド隊をさらに進軍させろ」
兵士「その件ですが……どうも博士が感づいたようで。アンドロイドの返還を求めてきています」
リチャード「ちっ! そろそろ潮時か。001、新しい任務だ」
場面転換。
フラン「いつになったら、クレアたちを返してくれるんですか?」
リチャード「わかりました。今までお借りしていたアンドロイドは全部返しましょう。明日、自宅の方にお届けするので、今日の所はお引き取り下さい」
フラン「わかりました」
ドアを開く音。
リチャード「やれ」
クレア「はい」
銃声が響く。
フラン「うっ!」
ドサっと倒れる音。
場面転換。
激しい銃撃戦。
兵士たちがドンドンと倒れていく。
敵兵士「ぐあああああ!」
グレア「……任務完了」
リチャード「よくやった、001」
グレア「ワタシはいつになったら、戻れるのでしょうか?」
リチャード「もう少しだ。あと少し役に立ったら返してやる」
グレア「フラン様の元へ帰りたい。そして、また、ワタシの名前を呼んでほしい。001じゃない。ワタシの名前は……」
終わり
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