【声劇台本】マッチ売りの少女の炎上商法

【声劇台本】マッチ売りの少女の炎上商法

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■概要
主要人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ

■キャスト
ソフィ―
その他

■台本

ナレーション「昔々、あるところにソフィーという名の可憐な少女がいました。ソフィーは独りぼっちの孤児で、日々、マッチを売って生活していました。これは、ソフィーの身に起こった、ある年の暮れの事件の物語」

  ビューっと風が吹き荒れる。

ソフィ―「うおっ! 寒っ! これ、ガチでヤバい奴だ。早く帰って布団の中で寝てぇ」

  ギュルギュルと腹が鳴る。

ソフィ―「……けどなー。年越したら、一週間はほとんど人が外に出なくなるから、ここで稼いでおかないと」

  人々が雪の上を歩いていく。

ソフィ―「マッチはいかがですか? マッチはいかがですか?」

  しかし、誰も足を止めるものはいない。

ソフィ―「くそっ! 見向きもしやがらねぇ。この可憐な私が、わざわざゴミの貴様らのためにマッチを売ってやってんだぞ。普通だった、喜びで震えあがって、売値の十倍で大量に買っていくだろ」

  大勢の人たちがソフィーの前を通り過ぎていく。

ソフィ―「マッチはいかがですか? マッチはいかがですか? 今ならお買い上げの人には、漏れなく私が踏んであげるサービスがつきますよ」

  人々がソフィーの前を通り過ぎていく。

ソフィ―「……」

  ソフィーがマッチの箱を地面に叩きつける。

ソフィ―「売れねーじゃねーかよ! くそっ、あの白髭ジジイ、舐めたマネしやがって。何が、今日は寒いからマッチがたくさん売れるはずだ、だ! 後で、顔が倍になるくらいぶんなぐってやる!」

子供「ねーねー、お母さん、あの子、道端でなにやってるのー?」

母親「こら、見ちゃダメよ。あれは可哀そうな子なの。あなたはあんな風になっちゃダメよ」

子供「あははは! 可哀そうな子だって! だっさー! キモっ! 僕、絶対、あんな風にはならないよ! だって、僕、勉強できるもん」

母親「そうね。あなたは、あんな可哀そうな子にはならないわ。だって、こんなにお利口さんなんだから」

ソフィ―「……」

  親子がソフィーの前を通り過ぎていく。

ソフィー「……あのガキ、舐めたマネたこと言いやがって。見てやがれ」

  場面転換。

  子供がドアを開けて家に入っていく。

子供「パパ、ただいまー。うわー、ごちそう、いっぱいだー!」

父親「今日はクリスマスだからな。あと、プレゼントもたくさんあるぞ!」

子供「やったー」

  外からそれを見ているソフィー。

ソフィ―「くっくっく。見てやがれ。こうして、家の近くに火を付けて……と」

  マッチを擦る音とボッという着火音。

ソフィ―「きゃー! 火事よー!」

子供「あ、見て、パパ! お家に火がついてる!」

父親「早く逃げるんだ!」

  家から飛び出す三人。

ソフィ―「よし! あとは火を消してっと」

  ソフィーが火を踏みつけて消す。

  ドアを開けて、家の中に入るソフィー。

ソフィ―「わお! すっごいごちそう。いっただきまーす!」

  場面転換。

  町の中を歩くソフィー。

ソフィ―「いやあ、食った食った。プレゼントも全部獲ってきたし、後で売りさばこうっと。いやあ、それにしても私、天才だな。マッチにあんな使い道があったなんて。ふふっ! 馬鹿とマッチは使いよう、てね」

  ソフィーがピタリと立ち止まる。

ソフィ―「……待てよ。これを利用すれば、儲けられるんじゃない?」

  場面転換。

ソフィ―「お水、お水はいかがですか?」

  男性がピタリと立ち止まる。

男「……お嬢ちゃん、何してるんだい?」

ソフィ―「お水を売ってるんです。いかがですか? お水」

男「……うーん。私には単にバケツに入った普通の水にしか見えないのだが」

ソフィ―「ええ、その通りですよ。さっき、そこの公園で汲んだ水です」

男「……念のために聞くけど、いくらなんだい?」

ソフィ―「はい! 一万です!」

男「ええっ! 一万? 公園で汲んだ水がかい?」

ソフィ―「そうですよ。お一つどうですか?」

男「い、いや……遠慮しておくよ」

ソフィ―「そうですか、残念です」

男「忠告しておくけど、そんなの買う人いないと思うよ」

  男が立ち去る。

ソフィ―「ふふふ。果たして、そうかな?」

  場面転換。

  男が家のドアを開ける。

男「……ただいまー」

  それを外から見ているソフィー。

ソフィ―「よし、あとはここに火を付けてっと……」

  ソフィーのマッチを擦る音と、着火音。

ソフィ―「きゃー! 火事よ! 火事だわ!」

  男が慌てて外に出てくる。

男「なんだって! うわ! 本当だ! 水水!」

ソフィ―「お水いかがですか?」

男「君はさっきの……。ううっ! わかった、買うよ。一万だね」

ソフィ―「いえいえ。実は値上がりしまして。一つ五万になりますー」

男「なっ! ふざけるな!」

ソフィ―「あらあら、迷ってていいんですか? 早くしないとお家、燃えちゃいますよぉ?」

男「くそっ! わかったよ、五万だな!」

ソフィ―「毎度ありー!」

  場面転換。

  ソフィーが街を歩いている。

ソフィ―「くっくっく。いやあ、儲かった、儲かった。やっぱ、私天才! 商売の才能あるわ。……さてと、もういっちょいっとくか」

  ソフィーがマッチを擦る。

警官「お嬢ちゃん、何してるんだい?」

ソフィ―「……え?」

警官「この辺で、家に火を付けている少女がいるって通報があってね」

ソフィ―「へ、へー。そうなんですか」

警官「ちょっと、署まで来てもらえるかい?」

ソフィ―「違うんです! こういうお仕事なんです!」

警察「えっとね、放火は犯罪なんだよ」

ソフィ―「大丈夫です! ちゃんと火は消しますから。この水で。だから、火事にはならないんですよ」

警察「はいはい。わかったわかった。詳しいことは署に行ってから聞くからね」

ソフィ―「ちょ、待てって!」

ナレーション「こうしてソフィーは、暖かい刑務所の中で、冷たいご飯を食べて、無事に年を越しましたとさ。めでたしめでたし」

終わり

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