私の名前はシンデレラ

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■概要
主要人数:7人
時間:30分

■ジャンル
中編、ボイスドラマ、ファンタジー、童話、コメディ

■キャスト
シンデレラ
ナレーション
シーラ
カーラ
ミンシア
王子

その他

■あらすじ
昔々あるところに、シンデレラというとても美しい少女が住んでいました。
シンデレラは亡き父の遺言通り、まっすぐ強く生きています。
全く結婚には目もくれず、最強を目指すシンデレラ。
そんな中、城の王子が嫁探しをするという情報が入ってきて……。

■台本

ナレーション「昔々、あるところにシンデレラと言う、それはそれは、とても美しい娘がおりました。シンデレラはママハハや義理の姉たちと暮らしており、全ての家事を任されていました。さらに、シンデレラは義理の姉たちにイジメられていたそうな……」

  砂利道を巨大な荷車を引いているシンデレラ。

シーラ「なにやってるのよ、シンデレラ! チンタラしてなさいでさっさと運ぶのよ」

  鞭で叩かれるシンデレラ。

シンデレラ「うっ!」

町人1「見て、またシンデレラがシーラさんにイジメられているわ」

町人2「シーラさん、普段はいい子なのにねぇ。どうしてシンデレラにだけはあんなに厳しいのかしら」

町人1「ちょっと常軌を逸してるわよね。あんな巨大な荷車を引くこと自体、普通は無理なのに」

町人2「あの荷車、特注品らしいわよ。シンデレラが街から家まで運ぶまでに一時間を切ったら、さらに大きな荷車に変えるんだって」

町人1「……それは酷いわね。可哀そうに、シンデレラ」

  荷車を引くシンデレラ。

シンデレラ「うおおおお!」

  バンと扉に手を付く、シンデレラ。

シンデレラ「着いた! 時間は?」

シーラ「えーっと……凄いわ! 新記録! 58分」

シンデレラ「やったー! じゃあ、また一回り大きな荷台、頼んでおいてくれよな」

シーラ「ねえ、シンデレラ。もうこんなこと止めない? これ以上、鍛えてどうするのよ」

シンデレラ「何言ってんだよ、シーラ姉。人間の限界に挑む! まさに浪漫じゃねーか」

シーラ「シンデレラ。あなた、女の子なのよ。せっかく、器量がいいのに、嫁の貰い手がなくなってしまうわ」

シンデレラ「いーんだよ結婚なんざ、興味ねえし。俺に必要なのは旦那じゃなく、強者だ」

シーラ「はあ……。なんで、こんな風に育っちゃったのかしら」

シンデレラ「しょうがねえよ、親父の遺言が強く生きろ、だったんだからさ」

シーラ「……それ、そういう意味じゃないと思うわよ」

  カーラがドアを開けて、家から出てくる。

カーラ「あら、シーラ姉さん、シンデレラ、お帰りなさい。早かったわね」

シンデレラ「聞いてくれよ、カーラ姉。ついに、一時間切ったんだぜ!」

カーラ「あら、凄いわね。……って、それって素直に喜べないわ。益々嫁の貰い手がいなくなるもの」

シンデレラ「カーラ姉も、そんなこと言うのかよ。いいんだよ、俺は結婚しないから」

カーラ「またそんなこと言って……って、ほら、そんなところに立ってないで、荷を下ろしましょ」

シーラ「その前に、シンデレラの手当てが先よ。今日は五回も鞭を打っちゃったんだから」

シンデレラ「ああ、それは平気だよ。服が破れただけで、皮膚は裂けてないから」

カーラ「ねえ、シンデレラ。前から思ってたんだけど、どうして私たちが罵倒しながらシンデレラを鞭を打たなきゃならないの?」

シンデレラ「それは俺が、ドSかつドMだからだ。罵倒されると力が湧くんだよ」

シーラ「まさか、妹に変態属性がついていたなんて……。うう、結婚は絶望的だわ」

カーラ「でも、それなら鞭で打たなくてもいいんじゃない?」

シンデレラ「ああ、それは、限界のときに身体にショックを与えることで、身体を動かすことができるんだ。一旦、身体が動けば、それを身体が覚えるから、次は難なく動かせられるようになる」

カーラ「はあ……。鞭を打つ側にもなってよ。おかげで街の人たちから、私たちがシンデレラをイジメてるって噂されてるのよ」

シンデレラ「あれ? おっかしーな。みんなにはああいうプレイだって、説明してるのに」

シーラ「さらに誤解を生むようなことは止めて!」

カーラ「……シーラ姉さん、もう諦めようよ。今更なに言っても遅いわ」

シーラ「はあ、どうしてこんなことに……」

  場面転換。

  シンデレラがものすごい勢いで、床を雑巾がけしている。

シンデレラ「うおおお!」

シーラ「……シンデレラ、手伝おうか?」

シンデレラ「いや、いい。もうすぐで終わるし」

カーラ「じゃあ、私、洗濯の方してくるわね」

シンデレラ「もう! 全部、俺がやるって言ってるだろ! 家事は全身の筋肉をつかう、いい特訓になるだからさ!」

シーラ「でも、妹が必死に働いてる中、何もしないっていうのも、なんだかさ……」

シンデレラ「それなら、料理やってくれよ。料理はいらねースキルだからさ」

カーラ「女の子として、一番必要なスキルよ……」

  そのとき、勢いよくバンと扉が開く。

ミンシア「(息を切らせて)みんな、大ニュースよ!」

シンデレラ「ああ、母さん、お帰り」

シーラ「どうしたの、そんなに慌てて」

カーラ「お母さん、とにかく落ち着いて。はい、お水」

ミンシア「ありがとう」

  水を飲み干す、ミンシア。

ミンシア「ふう」

シーラ「それで、ニュースってなに?」

ミンシア「それがね! ついに、王子が嫁を取るらしいの!」

カーラ「ふーん」

シーラ「へー」

シンデレラ「なんだ、そんな話か」

ミンシア「……リアクション、薄いわね」

シーラ「だって、私たちに関係ないし」

カーラ「ミーハーじゃないし、他人の恋愛事情に興味ないのよね」

シーラ「王様が不倫してたー、とかなら少しは盛り上がるかもだけど」

ミンシア「若い娘の発言とは思えないわ。はあ……私の育て方が悪かったのかしら」

シンデレラ「さてと、洗濯してくっかな」

カーラ「私は晩御飯の準備しないと」

シーラ「あ、手伝うわよ」

ミンシア「ちょっと待ちなさい! ふふふ。この情報を聞いても、そんな態度をしてられるかしら? 実は、なんと、舞踏会を開いて、王子がそこで直接嫁を探すらしいわ!」

カーラ「ふーん」

シーラ「へー」

シンデレラ「なんだ、そんな話か」

ミンシア「期待外れのリアクション!」

シーラ「お母さん、同じだよ。直接選ぶって言っても、私たちが選ばれるわけないわ」

カーラ「そうそう。お母さん、ちゃんと現実は見ないとダメだよ」

ミンシア「我が娘たちながら、ドライ過ぎて、お母さん、ちょっと引いたわ」

シンデレラ「さてと、洗濯洗濯」

ミンシア「シンデレラ、ちょっと待ちなさい!」

シンデレラ「……なんだよ?」

ミンシア「シーラ、カーラ、ちょっと来なさい」

  ミンシアとシーラ、カーラが少し離れたところでひそひそ話をする。

ミンシア「これはチャンスだと思うの」

カーラ「だから、お母さん、現実を見てって」

シーラ「あっ!」

ミンシア「ふふ、シーラは気づいたようね」

カーラ「どういうこと?」

シーラ「シンデレラのことね?」

ミンシア「そう! あの子の容姿なら間違いなく選ばれると思うの。あ、もちろん、あなたたちにもチャンスはあると思うわよ」

カーラ「そういうの、いいから」

ミンシア「……と、とにかく、なんとしてでもシンデレラを今度の舞踏会に連れていくの。さすがのシンデレラも王子の命令なら、嫁に行くはずだわ。これは、シンデレラが結婚できる、一生で一度あるかないかの大チャンスなのよ」

シーラ「でも、シンデレラが素直に行くかしら」

ミンシア「ふふふ。私に秘策があるわ。まずは、シーラ、あなたが行きます! って手を挙げるの。それを見て、カーラが慌てて、私が行くって手を挙げる。そしたら、シンデレラも慌てて手を挙げるから、二人で、どーぞどーぞと譲るのよ。いいわね」

シーラ「わかったわ」

シンデレラ「なあ、なにこそこそ話してんだ?」

ミンシア「舞踏会に行きたい人、挙手!」

シーラ「はい! 私、行きます!」

カーラ「いや、私が行きます!」

シンデレラ「いってらっしゃい。楽しんで来いよ」

シーラ「どーぞどーぞって、あれ?」

  家を出て行ってしまう、シンデレラ。

カーラ「お母さん、話が違うんだけど……」

ミンシア「くぅ……。見てらっしゃい、シンデレラ。必ず、あなたを舞踏会に参加させてみせるわ!」

ナレーション「昔々、あるところにシンデレラという、とてもとても綺麗な娘がおりました。シンデレラは家事に追われる毎日を過ごしていたそうな。だが、そんなシンデレラにチャンスが訪れます。王子様が開く舞踏会。そこに参加すれば、王子様と結婚できるかもしれないのです」

ミンシア「おのれ、シンデレラ。あんたを絶対に舞踏会に参加させてやるんだから」

シーラ「ねえ、お母さん。別にそこまでしなくてもいいんじゃないの?」

カーラ「そうよ。本人だって行きたくないって言ってるんだし」

ミンシア「何言ってるのよ! こんな機会がなければ、あの子が結婚できると思ってるの?」

シーラ「いや、できるんじゃない? あの子、美人だし」

カーラ「そうそう。いつかはあの子だって、恋愛に目覚めると思うわ」

ミンシア「それじゃ遅いのよ……」

シーラ「そうかなぁ? まだ17なんだし、もう少し見守っててもよくない?」

ミンシア「ダメよ! 絶対にダメ!」

カーラ「どうして、そんなに今回のことにこだわるの?」

ミンシア「だって、王子様よ! つまり、あの子と結婚ってことになったら、あの子は時期、王妃様になるってことなの」

シーラ「まあ、そうなるわね」

ミンシア「そして、あの子の母親である私や、あなたたちだって、お城に住めるはずよ!」

シーラ「……うーん。結構、個人的な理由だったのね」

ミンシア「少しくらい贅沢したっていいじゃない! だって、人間だもの!」

カーラ「いっそ清々しいわ」

ミンシア「うう……。あの人が死んでから、我が家の家計は火の車……。あの人を慕っていた人が未だに援助してくれてるからやってこれているけど、それが無くなったら、どうなることか……」

シーラ「だから、私たちが働くってば」

カーラ「そうよ。それにシンデレラだって、時々、イノシシとか熊とか獲ってくるから、食べ物には困らないわ」

ミンシア「私たち、一応は下級とは言え、貴族じゃない? それってどうかと思うの」

シーラ「そんなことも言ってられないんじゃないの?」

ミンシア「わかってるわ! でもね、せっかくのチャンスなんだから、それに賭けてみたいのよ! もし、やるだけやってダメだったら諦めもつくわ」

カーラ「うーん……」

ミンシア「お願い、シーラ、カーラ。お母さんに協力して!」

シーラ「わかったわ。でも、無理強いしたり、懇願したりするのは反対だからね。あの子、ああ見えても、結構、気が利く子だから、望んでなくても進んで犠牲になるんだから」

ミンシア「わかってるわ。あの子自身に、行くって言わせてみせるんだから」

  場面転換。

ミンシア「シーラ、カーラ、準備は出来た? そろそろ出ないと、舞踏会に遅れるわ」

シーラ「ええ、ばっちり」

カーラ「私も」

ミンシア「うん。二人ともいいわね。これなら、王子も目に止めてくれるわ」

シンデレラ「いってらっしゃい。気を付けて行けよ」

ミンシア「……シンデレラ。念のため、もう一回聞くけど、本当にお留守番でいいの?」

シンデレラ「何度も良いって言ってるだろ」

ミンシア「そう……。わかったわ。行くわよ、シーラ、カーラ」

  三人がドアを開けて家を出て行く。

シンデレラ「さてと、掃除でもすっかな」

  場面転換。

  桶でぞうきんを洗う、シンデレラ。

シンデレラ「ふう、思ったより早く終わっちまったな」

  コンコンとドアをノックする音。

シンデレラ「ん? 誰だ? はーい!」

  ドアを開ける。

魔女「こんばんは。私は魔女よ」

シンデレラ「あれ? 母さん、どうしたんだ、そんな格好して。舞踏会に行ったんじゃなかったのか?」

魔女「私は、魔、女、よ!」

シンデレラ「ああ、ごめん。そんな設定なんだ?で? 魔女が俺になんの用だ?」

魔女「あなたを舞踏会に参加させてあげるわ」

シンデレラ「また、その話か。別にいいって」

魔女「どうして、そんなに嫌がるんだい?」

シンデレラ「今の俺に必要なのは、旦那じゃなく、強者だ」

魔女「なら、尚更、舞踏会に行かないと」

シンデレラ「どういうことだ?」

魔女「もし、王子をたらし込めれば、あんたは王女になれるんだよ」

シンデレラ「それがどうしたってんだ?」

魔女「王女になれば、国中、いや世界中から強者を呼ぶ御触れを出し放題だよ」

シンデレラ「なっ! そんな手があったのか!」

魔女「どうだい? 行く気になったかい?」

シンデレラ「もちろんだ! あ……けど、やっぱダメだ。俺、ドレスなんかもってねえし」

魔女「そういうと思ってね。これを着ておゆき」

シンデレラ「これって……母さんが結婚式に来た、大切なドレスじゃねーか……」

魔女「ふふふ。あんたに来てもらえるなら、本望さ。さてと、ここにお座り。ちゃんとメイクもしなくちゃね」

  時間経過。

魔女「うん、完璧!」

シンデレラ「母さん……じゃなかった、魔女、ありがとうな。行ってくる!」

魔女「待ちなさい。あんたが行けば、勝ち確だろうけど、策を授けるわ」

シンデレラ「策……?」

  お城の舞踏会。

  音楽が流れ、人々が踊っている。

シンデレラ「たのもう!」

  音楽がピタリと止まり、部屋が騒めき始める。

貴族1「うわ、すごい美人だぞ」

貴族2「どこの家の者だ?」

シーラ「……あ、シンデレラ」

カーラ「すごーい! 別人みたい」

シーラ「本当に来た……。お母さん、どんな魔法使ったんだろ」

  シンデレラがカツカツと歩いて、王子の前に立つ。

シンデレラ「よう王子。俺……じゃなかった、私と一曲踊れや」

爺「な、なんと無礼な! 王子の前で!」

王子「よい、爺。ふふっ、僕にそんな口をきいたのは君が初めてだ。随分と、面白い子だね」

シンデレラ「ちっ! さっさと立てよ! こっちは時間ねーんだからよぉ!」

王子「なっ!」

爺「かー! なんたる無礼、無礼、無礼! 死刑じゃー!」

王子「下がれ、爺! ああ……今、僕は全身が痺れたようなショックを受けた。頼む、もっと僕を罵倒するような言葉を言ってみてくれないか?」

シーラ「うわぁ……。王子ってドMだったんだ」

カーラ「意外と、シンデレラと相性いいかもね」

シンデレラ「んな、こたどうでもいいんだよ。ほら、さっさと立て!」

  シンデレラが腕を引っ張り、王子を立たせて抱きしめる。

王子「女性にこんなに強く抱きしめられたのは初めてだ」

シンデレラ「おら、踊るぞ。おい! 曲!」

  音楽が流れ始める。

  シンデレラと王子が踊り始める。

  周りが騒めき始める。

シーラ「あれって、踊ってるというより、王子を振り回してるだけよね」

カーラ「でも、振り回されている本人は喜んでるみたいよ。見て、王子、うっとりとした顔をしてるわ」

王子「……ああ、いい! いいよ、君! 言葉で攻められるのもいいけど、こうして体に受ける苦痛もまた、僕の心を高めてくれる!」

  シンデレラが振り回すのを止めて、王子を抱きしめる。

シンデレラ「いいか。俺……私を嫁に選べ。じゃないと、お前をぶっ殺す」

王子「ああー、いい! 君以外に考えられない! でも、君に殺されるのもいい!」

シンデレラ「ふふっ! 今は束の間の時間を楽しもうぜ」

  再び、シンデレラと王子が踊り始めるのだった。

ナレーション「昔々、あるところにシンデレラというとてもとても美しい少女がおりました。シンデレラは家の家事に追われる毎日を過ごしていました。ですが、あるとき、転機が訪れます。それはお城で舞踏会が開かれ、そこで王子が嫁をとるというのです。魔女の力を借りたシンデレラはお城へと向かい、ついに王子と対面し、踊ることとなるのです」

  舞踏会。
  きらびやかに流れる音楽。
  その中で、シンデレラと王子が踊っている。

カーラ「うわー、すごーい」
シーラ「……あれ、踊ってるというより、王子がシンデレラに振り回されてるわね」
カーラ「王子もシンデレラも楽しそう」
シーラ「……王子はすごい、幸せそうな顔してるわね」
カーラ「あっ!」

  シンデレラが王子の手を放してしまう。

シンデレラ「しまった! 汗で滑った!」

  部屋中から悲鳴が上がる。
  王子が壁に激突する。

王子「うぐっ!」
シーラ「振り回す勢いがあった分、飛んでいくスピードも半端じゃなかったわね」
カーラ「すごい勢いで壁に激突したけど……王子、生きてるかな?」

  シンデレラが王子に駆け寄る。

シンデレラ「おい! しっかりしろ! 生きてるか!?」

  そこに兵士たちが現れ、シンデレラを囲む。

カーラ「やっば! シンデレラ、お城の兵士たちに囲まれちゃったわ」
シーラ「……まあ、あんな風に王子を扱ったんだから当然っちゃ当然なんだけど……」
爺「ええい! 重ね重ね、無礼者が! 討ち取ってくれるわ! かかれ!」
兵士たち「うおおお!」
シーラ「まずい! さすがのシンデレラもあの人数で一斉に襲い掛かれたら……」

  戦闘音。

兵士「ぐお……」

  兵士が倒れる。

シンデレラ「おいおい。歯ごたえねえな」
爺「ば、馬鹿な……。我が国最強の近衛兵たちが……」
シンデレラ「それより、王子! 大丈夫か?」
王子「……」
シンデレラ「ふう、気絶してるだけか」
爺「ええい! この化け物女め! 王子から離れるんじゃ!」
シンデレラ「おい、王子、起きろって」

  シンデレラが王子の頬をペチペチと叩く。

爺「きー! この無礼者が! 王子に触るなと言っておろうが!」
シンデレラ「うるせーなあ」

  シンデレラが爺の腹にワンパン入れる。

爺「はうっ!」
シンデレラ「お前は寝てろ」

  どさりと倒れる爺。

シンデレラ「で、お前は起きろ」

  シンデレラが王子の頬をペチペチと叩く。

シンデレラ「起きろ」
王子「……」
シンデレラ「起きろって、言ってんだろ!」

  強烈な一撃を王子の頬に入れる。

王子「はうっ!」
シーラ「……止め刺しちゃったんじゃない?」
カーラ「一瞬、首が変な方向に曲がってたような……」
シーラ「ううん、見てない見てない」
王子「はっ! 今の物凄い衝撃は?」
シンデレラ「起きたな、王子」
王子「おお! 姫!」
シンデレラ「早速だが、俺……私はもういかなきゃならねえ」
王子「そんなっ!」
シンデレラ「悪いな、もう行かねーとならねーんだ。12時で魔法は解けちまうんでな」
シーラ「今、10時だっていうのは、スルーした方がいいのよね」
シンデレラ「じゃあな、王子」

  シンデレラが走り出す。

王子「ま、待ってくれ!」
シンデレラ「おっと、忘れるところだった」

  シンデレラが立ち止まり、靴を脱ぎ始める。

シンデレラ「靴、靴っと……あっ!」

  シンデレラがガラスの靴を落して、割ってしまう。

シンデレラ「やっべ! 割っちまった。もう片方はそっと置いておいてっと……」
シーラ「……シンデレラ、何してるのかしら?」
カーラ「なんで、わざわざガラスの靴を脱いで、床に置いたんだろうね」
シンデレラ「じゃあな、王子!」

  シンデレラが裸足で駆けていく。

王子「素敵な、お方だった……」

  場面転換。
  バンと家の扉が開く。

ミンシア「みんな聞いて! 王子が、ガラスの靴を持って、街に来ているわ! もうすぐ、うちにも来るわよ!」
シンデレラ「よしっ!」
シーラ「ねえ、お母さん。どうしてあんな回りくどいことしたの?」
カーラ「そうよ。あのまま結婚までもっていけばよかったのに」
ミンシア「甘いわね、二人とも。こういうのはドラマティックさが必要なの。ちゃんと王子が探し当てるっていうプロセスが大事なのよ」
シーラ「たしかに、あのままだとシンデレラが王子を脅して、無理やり結婚に持ち込んだように見えるものね」

  ドアがノックされる。

爺「……たのもう。城の者だが、開けてもらえぬか。王子、自らのご訪問である」
ミンシア「はいはーい!」

  ドアを開けるミンシア。

王子「急に、すまぬな。実はこのガラスの靴の持ち主を探している。その方ら、履いてみてもらぬだろうか?」
シーラ「わかりました……。(わざとらしく)うーん、入らないー」
カーラ「(わざとらしく)私も―」
王子「……ダメか」
爺「王子、もう諦めましょう。というか、諦めてください。お願いいたします」
シンデレラ「ふっふっふ。満を持して、俺の出番だな」
王子「うむ。履いてみてくれ」
シンデレラ「いくぞ! おらあー!」

  シンデレラが踏み抜いたことで、バリンと音を立ててガラスの靴が砕ける。

王子「ああっ!」
ミンシア「シンデレラ! なにやってるのよ!」
シンデレラ「しまった!」
爺「その手があったか! (喜々として)さあさあ、王子、帰りましょう! もう、あの化け物女を探すことは無理ですぞ」
シンデレラ「わ、私の名前はシンデレラ! 王子、貴方が探していたのは、この私だ!」
シーラ「……いや、このタイミングで言う台詞じゃないでしょ」
王子「しかし、靴が割れた今、証明する方法が」
シンデレラ「いやいやいや。よく見ろよ。俺だって、俺! 俺俺!」
カーラ「サギっぽいわよ、シンデレラ」
王子「すまぬ。実は顔は覚えていないのだ。私は彼女の心……中身を愛したのだ」
ミンシア「そんな……。ここまできて」
爺「わっはっは! さあ、王子! 帰りましょう、帰りましょう! さっさと帰りましょう」
王子「……そうだな」
シンデレラ「俺の……世界中の強者と戦う夢が……。くそー、ふざけんなっ!」

  シンデレラが王子を思い切り殴る。

王子「ほぶえっ!」
爺「王子ー!」
シーラ「シンデレラ、何してるの!」
シンデレラ「はっ! しまった、つい!」
爺「この化け物女め! 死刑だ! 死刑だ!」
王子「待て、爺。……この衝撃だ」
爺「は?」
王子「この全身に走る、痺れるような衝撃。間違いない! この娘こそ、昨日のあの方だ!」
爺「そんな……」
王子「シンデレラ! 僕と結婚してください」
シンデレラ「おう! いいぜ!」
ミンシア「やったわ、シンデレラ!」
カーラ「……ガラスの靴、意味ないわね」

ナレーション「こうして、シンデレラは王子と結婚し、月に一度、城で盛大な武道大会を開き、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

終わり

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