【声劇台本】いばら姫は眠らない

■概要
主要人数:5人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、童話、コメディ

■キャスト
ローラ
セバスチャン
カイン
王様
魔女
その他

■台本

ナレーション「昔々、あるところにローラという、それはそれは綺麗なお姫様がおりました。ある日のこと、ローラ姫は自分の16歳の誕生日に魔女を呼ぶことにしました」

王様「ローラよ、どうして魔女なんて呼ぶ必要があるのだい?」

王妃「そうですよ。魔女はとても危険な存在。お城に入れるのは心配ですわ」

ローラ「お父様、お母様、大丈夫です。全部、ローラに任せてください」

王様「しかしなぁ」

ローラ「16歳といえば、成人する特別な日。その日を魔女たちにお祝いしてもらえれば、きっと素敵な誕生会になると思うの」

王様「ふむ。ローラには縁談が進んでいるからな。私たちができる最後のわがままを聞いてやるとするか」

王妃「そうですわね、あなた。ローラがお嫁さんに行ってしまったら、こういうわがままも聞けなくなります。これが最後というなら、いいんじゃないですか?」

王様「そうだなぁ。ローラには振り回されてばかりだったが、これが最後となると、ちと寂しく感じるぞ。……よし、ローラよ。魔女を呼ぶことを許可する。誕生会の用意を進めるがよい」

ローラ「ありがとう、お父様!」

  場面転換。

  廊下をかつかつと歩くローラ。

  そこにもう一つの足音が聞こえてくる。

セバスチャン「いかがでしたか? 姫」

ローラ「成功よ、セバスチャン!」

セバスチャン「しかし、姫。じいは反対です」

ローラ「もう、今更何言ってんの。この件は、何度も話し合ったでしょ」

セバスチャン「……ですが」

ローラ「なによ? セバスチャンは私が不幸な人生を歩んでもいいって思ってるの?」

セバスチャン「とんでもございません! じいめは、姫の幸せだけを願っております」

ローラ「なら、協力してね。ふふふふーん! さあ、面白くなってきたわよ」

セバスチャン「はあ……。じいはとても不安でございます」

  きらびやかな音楽が響く。

王様「これはこれは、魔女の皆様。この度はローラ姫の誕生パーティにようこそおいでいただきました。遠いところ、本当に姫のためにありがとうございます」

魔女1「いえいえ。とんでもありません。こちらこそ、呼んでいただき、とても光栄です」

王妃「どうか、ゆっくりと楽しんでいってくださいね」

魔女2「ふふふ。こんなごちそうは久しぶりです。今日は楽しませていただきますよ」

ローラ「今日はたーっぷりと、食べて飲んで楽しんでいってちょうだい。でも、その代わり、私への魔法の誕生日プレゼントも忘れずに」

王様「ローラ。お前はもう少し、こう、言い方があるだろう」

ローラ「いいじゃない。まどるっこしいのは苦手なんだもん」

魔女1「ふふふふ。よいではありませんか。子供というのは素直なのが宝ですよ」

魔女2「それでは、私から。姫には、一年の間、魔法を使えるようにしてあげますわ」

ローラ「わあ、それは素敵! ありがとう!」

魔女1「私からは美を保ち続けられる魔法を……」

魔女3「私からは……」

  場面転換。

ローラ「みんな、ありがとう! ふふふっ! お父様に無理を言った甲斐があったわ」

王様「姫、またお前は……。ああ、もういい」

魔女1「しかし、姫様。どうして、13番目の魔女だけ招待を外したのですか?」

ローラ「へ?」

魔女「私たちは13人の姉妹。でも、招待状の枚数は12枚。一番下の魔女の分がなかったわ」

ローラ「……あれ?」

セバスチャン「姫、だからあれほど、確認してくださいと何度も……」

ローラ「いいじゃない。やっちゃったもんは仕方ないわ。お見上げでも送って……」

魔女4「ふふふふ。随分と舐めた真似をしてくれるじゃない」

ローラ「この声は……?」

魔女4「一人だけ呼ばれないなんて恥をかかせてくれたわね」

セバスチャン「お待ちください! これは手違いで……」

魔女4「黙れ! この私を怒らせたら、どうなるか思い知らせてあげるわ!」

  パーっという光が降り注ぐ音。

  場面転換。

カイン「なるほど。その魔女の魔法で、城の中の全員が眠りについたというわけだな」

セバスチャン「はい。そうなのです。今でも、ローラ姫は城の中で眠り続け、目覚めさせてくれる者を待っているのです」

カイン「ふふふ。いいだろう。このカイル王の息子、カインが見事城へ辿り着き、姫を目覚めさせてやろう」

セバスチャン「なにとぞ、よろしくお願いいたします」

  場面転換。

  森の中を歩くカイン。

カイン「くっ! なかなか深い森だな。だが、このカイン。これしきのことでは……」

怪物「ぐおおおお!」

  木がバタバタと倒れる音。

カイン「なんだ、この化け物は? 竜……か?」

怪物「グルルル……」

カイン「そういうことか。数々の王子が挑んで失敗したわけだ。この化け物に阻まれててってわけだな」

怪物「グオオオオオオ!」

カイン「だが、それも今日までだ。このカインがこの伝説に終止符を打ってやる!」

怪物「ガアアアアアア!」

  カインと怪物がバトルを繰り広げる。

  場面転換。

  ズシーンと大きな音を立てて怪物が倒れる。

カイン「ふう、なかなか手ごわかったな。だが、このカインの敵ではなかった。さて、進むか」

  森を進むカイン。

  ぴたりと足が止まる。

カイン「これは……いばらか。城がいばらに覆われている。ふふっ、この城で眠る姫で、いばら姫、か。よく言ったものだ」

  剣を抜くカイン。

カイン「どうってことはない。切り進んでやる」

  カインがいばらを切って進んでいく。

  場面転換。

カイン「ふう、なかなか骨が折れたな。だが、ついにここまでたどり着いたぞ」

  城の中を歩く、カイン。

  そして、足を止める。

ローラ「……」

カイン「こ、これがローラ姫か。……なんと美しい。よし、今、目覚めさせてやるぞ」

ローラ「ちょっと、おっさんじゃない!」

カイン「……え? どうして、姫が目覚めてるんだ? キスで目覚めるって聞いていたが」

ローラ「はい、ダメ、失格!」

カイン「なにを……?」

ローラ「じゃあ、眠っててね」

  ローラが魔法を使うと、カインが倒れて寝てしまう。

カイン「(いびき)」

ローラ「これでよし、っと」

セバスチャン「姫、ダメでしたか?」

ローラ「ダメに決まってるでしょ! いい! 若くて、お金持ちで、強い、この3つは必須なんだから!」

セバスチャン「しかし、なかなかそんな王子は。姫、少しは妥協をしませんと」

ローラ「嫌よ、諦めないわ! 一生に一度の結婚よ。絶対に失敗できないの。せっかく、13番目の魔女に芝居を打ってもらったんだからさ」

セバスチャン「やはり、あのときに、お止めするべきでしたな」

ローラ「はいはい、じゃあ、また花婿候補連れてきてね。結婚相手を見つけて、早く、お父様や城のみんなの眠りの魔法を解いてあげなくっちゃ」

セバスチャン「やれやれ。姫のわがままには困ったものでございますな……」

ナレーション「こうして、ローラ姫は日々、花婿となる王子を城の中で待ち続けるのでした。めでたしめでたし」

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