【オリジナルドラマシナリオ】神様のプレゼント③
- 2020.05.25
- シナリオ本編
〇 街中・広場
隆志と浩平が立っている。
浩平がスマホを見ながらそわそわと歩き回っている。
そこに美沙が手を振りながらやってくる。
満面の笑みを浮かべる浩平。
〇 水族館
三人で水槽を見て回っている。
魚を、笑みを浮かべながら見ている美沙に見惚れている浩平。
そんな二人を見て微笑む隆志。
〇 同
イルカショー。
イルカが飛んで、水の中に飛び込む。
水しぶきが飛ぶ。
喜ぶ美沙と浩平。
そんな二人をジッと見ている隆志。
〇 喫茶店
テーブルを挟んで向かい合う、美沙と浩平、隆志。
美沙「あー、面白かった」
浩平「よかった、楽しんでもらえて」
隆志「俺はベタ過ぎるからって、止めたんだけどね」
美沙「ううん。すごくよかったよ。水族館ってこういうときじゃないとなかなか行けないから」
隆志「たしかに、一人で行くにはハードル高いよな」
美沙「私、休みの日に一緒に出掛けてくれる友達とかいないから、さらにだよ」
隆志「あー、兄さんと一緒だね」
浩平「うるさいな」
美沙がふふふと笑う。
隆志「ねえ、よかったら、また三人で遊ばない?」
美沙「うん、ドンドン誘って。土日は暇してるから」
テーブルの下でグッと親指を立てる浩平。
苦笑いの隆志。
〇 街中(雨)
傘をさして歩く三人。
クレープ屋を見つけて、店前に行く。
美沙と隆志はすぐに、メニューに載っている商品を指差すが、浩平は腕を組んで悩んでいる。
〇 映画館
三人が並んで座っている。
美沙、浩平、隆志の順。
美沙がぽろぽろと涙を流している。
隆志が浩平にこっそりとハンカチを渡す。
浩平がハッとしてハンカチを受け取り、美沙にそっと渡す。
浩平に微笑み、ハンカチを受け取る美沙。
その微笑みに見惚れる浩平。
〇 街中・広場
真夏で陽炎が揺らいでいる。
隆志と浩平が並んで立っている。
そこに手を振って、美沙が走ってくる。
〇 喫茶店
美沙と浩平が並んで座り、対面して隆志が座っている。
美沙「キャンプ?」
隆志「うん、そう。兄さんも美沙さんも、お盆休みあるでしょ? そこでさ、三人でパーっと遊びに行こうってわけ」
浩平「けど、キャンプって……その、泊まりでしょ?」
ちらりと美沙を見る浩平。
美沙「私は大丈夫だよ」
浩平に微笑みを返す美沙。
パッと、浩平の顔が明るくなる。
隆志「よし、じゃあ、決まり! 俺のほうで必要なものは買い揃えるておくから。兄さんの金で」
浩平「なっ! なんで、僕が」
美沙「あ、私も出すよ」
浩平「(ハッとして)いや、いいよいいよ。僕が出す! この前ボーナスも出たし」
隆志「じゃあ、ここの支払いもよろしくでーす!」
浩平「調子に乗るんじゃない」
三人が笑う。
〇 アウトドアショップ
隆志が色々と店内を見て回っている。
ぴたりと足を止める。
視線の先には、テントの前で三人の家族を模した人形がくつろいでいるというレイアウト。
思わず、笑みを浮かべてしまう隆志。
〇 アパートの駐車場
車に乗っている浩平と隆志。
アパートのドアが開き、美沙が出てくる。
車まで駆け寄り、助手席のドアを開ける。
美沙「ごめんね、お待たせ」
隆志「よし! じゃあ、出発だ!」
美沙が助手席に座りシートベルトを締める。
緊張している浩平。
隆志「……兄さん、出発だってば」
浩平「わ、わかってるって」
ゆっくりと車を走らせる浩平。
〇 車内
緊張しながら運転している浩平。
心配そうに見ている美沙。
隆志「いやいや、気、張りすぎでしょ」
浩平「うるさいな。運転は久しぶりなんだよ」
美沙「ごめんね、私が免許持ってればよかったんだけど」
隆志「いやあ、こういうのは男が運転しないと。ね? 兄さん」
浩平「……え? なにか言った?」
隆志「なんでもない。運転に集中してくれ」
〇 山の全景
森林が広がっている。
〇 キャンプ場の駐車場
浩平たちの車が入ってくる。
〇 車内
車が止まる。
浩平がサイドブレーキを引く。
浩平「つ、ついた……」
ぐったりとする浩平。
隆志「いや、これからが本番だから」
美沙「浩平さん、お疲れ様」
微笑む美沙に笑顔で応える浩平。
〇 山道
荷物を積んだリアカーを引く浩平。
浩平「あのさ、僕、今運転してきたばっかりなんだけど」
隆志「なに? 女の子に力仕事しろっての?」
浩平「お前が引けって話だよ」
隆志「こういうのは家長の仕事だから」
浩平「か、家長って」
美沙の顔が赤くなる。
隆志「さ、もうちょっとだから、頑張って、おとーさん」
浩平「ふ、ふん」
まんざらでもない顔でリアカーを引く浩平。
〇 キャンプ広場
隆志と浩平がテントを設営している。
美沙がリアカーから荷物を降ろしている。
〇 同
テントが完成する。
隆志「よし! 完成!」
美沙「わー、すごーい!」
隆志「よし、一番乗り!」
隆志がテントの中に入っていく。
それを並んで見ている美沙と浩平。
美沙「隆志くんが、あそこまではしゃぐのって珍しいね」
浩平「たしかに。なんか、すごい楽しみにしてたからなぁ、キャンプ」
美沙「私も、楽しみにしてたよ。キャンプ」
にっこり微笑む美沙に見惚れる浩平。
テントから顔を出す隆志。
隆志「ねえ、いちゃついてないで、テントの中に荷物いれよーよ」
浩平「だ、誰がいちゃついてるんだよ!」
荷物を持って、テントのほうへいく浩平。
クスっと笑う美沙。
〇 同(夜)
バーベキューの準備で、火を起こしている隆志。
野菜を切っている美沙と浩平。
楽しそうに話している二人を見て、満足そうに微笑む隆志。
〇 同
バーベキューを楽しむ三人。
〇 空
満天の星空。
〇 キャンプ場
バーベキューの残り火を前にして、椅子に座っている三人。
隆志「うーん。キャンプって感じだねぇ」
美沙「隆志くんは、あんまりキャンプとかしないの?」
空を見上げる隆志。
隆志「母さんが、俺を生むときに死んで、それから親父が精神的にまいっちゃってね。キャンプどころじゃなかったんだ」
美沙「そっか。その……ごめんね」
隆志「いいんだよ。今日、こうしてキャンプできたんだから。ずっと憧れてたキャンプ……きっと、奇跡ってこういうことを言うんだろうなぁ」
美沙「奇跡って、大げさだよ」
隆志「(笑って)なんでもない、平穏な日々は、俺にとっては奇跡そのものだよ」
うつらうつらしている浩平。
隆志「おっと、兄さん、おねむみたいだ。ほら、兄さん、寝るならテントの中に行きなよ」
浩平「お、おう……」
隆志に連れられてテントのほうへ行く浩平。
その様子を幸せそうに見ている美沙。
③終わり
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