【声劇台本】尾行

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
昴(すばる)
真白(ましろ)
真子(まこ)
その他

■台本

昴(N)「真白とは昔ながらの縁だ。いわゆる、腐れ縁というやつ。幼馴染って言うほど昔というわけでもなく、中学から今に至るまで大体、5年くらいの付き合いだ。……付き合いって言っても、別に男女の付き合いというわけではなくて、異性の友達って感じだ。何でも言い合える友達。一緒にいて楽しい。そんな関係。今の関係が一番いい。……そう思っていた」

場面転換。

学校内の教室内。

真白「ねえ、昴。もうすぐ夏休みだよね? どっか出かけない?」

昴「んー? じゃあ、隣町のゲーセン行こうぜ! やりたい新作のゲーム、そこに入るらしいんだよ」

真白「ええー。ゲームセンター? あのさあ、女の子と行くんだよ? もっとさ、ないの?」

昴「ああ……。どうしても、真白だと女っていうより、男友達の感じがするんだよな」

真白「なにそれ、ひっどい!」

昴「あはは。いいじゃねーか。こういうふうに何でも思ったこと話せる友達でよ」

真白「……昴はそれでいいの?」

昴「……それでいいもなにも、今更、真白を女と見れねーよ」

真白「あっそ。わかった。ま、そりゃそうよね。今更、付き合うなんて、あり得ないよね」

昴「そうそう」

真白「あははは。じゃ、これからも友達ってことでよろしく」

昴「おう!」

真白「……」

場面転換。

通学路を一人で歩く昴。

昴「……あ、そういえば、ゲーセン行くのって、どうなったんだっけ? ……まあ、明日、聞いてみるか」

遠くから真白の声が聞こえる。

真白「きゃっ!」

昴「ん? あれ? 真白だ。おーい、まし……え?」

男「ごめん、お待たせ!」

昴「……誰だあいつ?」

真白「ううん、私も今、来たところだよ」

男「じゃあ、行こうか」

真白「うん」

真白と男が歩き出す。

昴「あれ? なに? 今の? 友達か? あいつ、俺以外にも男友達いるんだな」

昴が歩き出す。

昴「……あ、そうだ。明日、どこにいたか当てて、驚かせてやるか」

昴が踵を返し、歩き出す。

遠くから真白の笑い声が聞こえてくる。

真白「あははは!」

昴「なんだよ。あんな顔、初めて見るぞ」

真白「……だってさー。面白いよね」

男「ははは。それはいいね」

昴「……いや、近すぎだろ。友達だからってさ。どんだけ仲いいんだよ。……俺の方が付き合い長いんだからな……」

男と真白が歩き、その後をつける昴。

ウィーンと自動ドアが開き、男と真白が入っていく。

昴も立ち止まる。

昴「……ハンバーガー屋か。くそっ! 金、ピンチだけど、仕方ねーな」

ウィーンと自動ドアが開く音。

店員「いらっしゃいませ」

昴「……あいつらに見つからないように距離を取って……と」

場面転換。

ハンバーガー屋の店内。

周りはがやがやと騒がしい。

ポテトを食べながら。

昴「……あいつら楽しそうだな。なに話してるんだろ? ……偶然を装って、話しかけるか? ……いや、それはさすがに格好悪いよな。偶然って、俺、ここに来たことないくらいだし、バレるよな絶対……」

場面転換。

男と真白が歩いている後ろを尾行する昴。

昴「くそ、もうこんな時間か。あいつら、いつまで一緒にいるんだよ……って、え?」

ガバッと真白が男の腕に掴まる音。

男「どうしたんだ? 急に?」

真白「いいでしょ、腕組むくらい。付き合ってるんだからさ」

昴「え?」

ピタリと立ち止まる。

真白「ねえ、今日はまだ大丈夫なんでしょ? カラオケ行こうよ」

男「ああ、そうだな」

昴「……」

真白と男が歩き去っていく。

昴「……」

ぽたぽたと涙が落ちる音。

昴「あれ? 涙? なんで、俺、泣いてるんだよ?」

ぽたぽたと涙が落ちる。

昴「そっか……。俺、あいつのことが……真白のことが好きだったんだな……」

トボトボと歩き出す昴。

昴「今頃、気付いても遅いよな。……俺、何やってんだろうな」

真子「あれ? 昴くん?」

昴「あ、真子さん」

真子「……泣いてるの?」

昴「い、いえ。なんでもありません」

真子「何かあったの?」

昴「……」

真子「ほら、遠慮せずに。ね?」

昴「……じ、実は」

場面転換。

真子「なるほどねー。真白がねー。最近、家でも浮かれてると思ったら、彼氏ができてたのか」

昴「え? 浮かれてたんですか?」

真子「気づかなかった?」

昴「……」

真子「ねえ、昴くん。付き合っちゃおうか、私と」

昴「え?」

真子「私と。今、私フリーだし、前から昴くん、可愛いなって思ってたからさ」

昴「えっと……その……」

真子「年上は嫌? それとも、真白の姉って言うのが嫌?」

昴「いや、そういうわけじゃないですけど」

真子「それなら、いいじゃん。今の昴くんの失恋、癒してあげるよ」

昴「……嬉しいです。でも、俺……やっぱり、いいです」

真子「どうして?」

昴「俺……あいつのことが……真白のことが好きだから」

真子「でも、その真白は彼氏ができたんだよ?」

昴「……それでも、あいつのこと、好きなんです。例え、叶わない恋でも……それでも、この気持ちは変わりません」

真子「へー、一途―」

昴「……」

真子「だってさ、真白」

昴「……え?」

サッと真白が出てくる。

真白「えっと、その……」

昴「え? え? お前、だって……」

真子「ごめんね、昴くん。実は昴くんのこと、尾行してたんだ」

昴「え?」

真子「つまり、真白の尾行をしていた昴くんの尾行をしてたの」

昴「なんでそんなことを?」

真子「昴くんの気持ちを知りたかったんだってさ。真白に頼まれたのよ」

昴「ど、どういうことなんですか?」

真子「真白が彼氏できたように見せて、どう思うか見てたってわけ。つまり二重尾行だね」

昴「じゃ、じゃあ、ずっと俺が尾行してたのも……」

真白「う、うん……知ってた」

昴「腕を組んだのも」

真白「わざと」

真子「あ、ちなみにあの男は、私の彼氏だよ」

真白「……ごめん」

昴「ふざけんなー! やっていいことと悪いことあるだろ!」

真白「ごめん」

場面転換。

真白「昴―! バス出ちゃうよ」

昴「今いく!」

バタバタと階段を下りてくる昴。

昴「よし、行くか」

真白「うん。海、楽しみだね」

昴(N)「正直に言って、真白のしたことは今でも許せない。でも、そのおかげで、本当の気持ちを知ることができた。……そして、今回のことで得た教訓は――尾行なんてするものじゃないということだ」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉