奇跡の記念日

奇跡の記念日

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
蒼汰

拓也

■台本

キランと流れ星が落ちる音。

蒼汰・葵「あ、流れ星!」

蒼汰「……」

葵「……」

蒼汰「……ぷっ」

葵「ふふ……」

蒼汰「あのー。よく星は見るんですか?」

葵「いえ。今日は流星が見えるって聞いたんで見に来ただけなんです」

蒼汰「あ、俺もなんですよ。普段は星ってあんまり興味なかったんですけど、ニュースでやってたんでなんとなく見に来たんですよね」

葵「私もです! なんか、不思議です。妙にそのニュースが気になったんですよね」

蒼汰「そうだ、星といえば……」

場面転換。

バリンと皿が割れる音。

葵「もういいわよ!」

蒼汰「いや、だから悪かったって言ってるだろ」

葵「なによ、その軽い言い方! 今日は結婚記念日よ! 結婚記念日!」

蒼汰「……仕事だったんだから仕方ないだろ」

葵「どうせ忘れてたんでしょ? 仕事って言ったってただの飲み会じゃない」

蒼汰「明日! 明日、どこか美味い物、食べに行こう! な?」

葵「……いい。行かない」

ドアを開けて部屋を出ていく葵。

バンと勢いよくドアを閉める。

蒼汰「……」

場面転換。

居酒屋。店内はそこそこ賑わっている。

拓也「そりゃ、先輩が悪いっすよ」

蒼汰「そうかぁ? 誕生日ならわかるけど、結婚記念日とか覚えてられないだろ」

拓也「そんなこと言って、奥さんの誕生日だって忘れて、切れられたって愚痴ってたじゃないっすか」

蒼汰「うっ……」

拓也「それに、女性って、そういう記念日っていうか、思い出は大切にするみたいですよ。だから、絶対に忘れちゃダメっす」

蒼汰「忘れないようにって言われてもな……。俺、スケジュール表とか持たないし」

拓也「別に携帯のカレンダーにセットしとけばいいんじゃないっすか?」

蒼汰「けどなぁ……」

拓也「そうやって、面倒くさがってるから、忘れて、奥さんに怒られるんですよ?」

蒼汰「うっ……」

拓也「先輩って、仕事はすげーしっかりしてんのに、そういう私生活に関しては結構、ズボラですよねー」

蒼汰「お前なぁ、ずけずけ言い過ぎだぞ」

拓也「何言ってんっすか。先輩のためを思って言ってんすよ」

蒼汰「ものは言いようだな」

拓也「とにかく、そういう記念日的なものはちゃんとするべきですよ。覚えてくれているってだけで、喜んでもらえるもんなんですから」

蒼汰「随分と詳しいな」

拓也「まあ、俺も昔は色々あったっすから」

蒼汰「さすが、元ホストってとこか」

拓也「あ、それ、偏見っぽい言い方っすよ」

蒼汰「そ、そうか……。すまん」

拓也「あはは。先輩のそういう素直なとこ、好きっすよ」

蒼汰「男に好かれてもな……」

拓也「で? 奥さんとは仲直りできたんすか?」

蒼汰「それが……まだだ。口をきいてくれないほどじゃないけど、不機嫌な感じがする」

拓也「ふーん。そういう空気を感じられるなら、まだ大丈夫っすね。末期になると、奥さんの不機嫌の空気に気づかなくて、さらに怒らせるパターンがありますからね」

蒼汰「……難しいな。それで、なにかいい方法はないか?」

拓也「なるほど。それが聞きたくて、珍しく奢ってくれるってわけっすね」

蒼汰「……珍しくはないだろ。いつもたかってくるくせに」

拓也「あはは。冗談っすよ、冗談。じゃあ、ま、先輩のためにひと肌脱ぎますか」

蒼汰「頼む」

拓也「とはいえ、どうしたもんすかね」

蒼汰「おいおい、なんだよそりゃ」

拓也「こういうのは結構、慎重にならないと逆効果なんっすよ。プレゼント渡すにしても、ご機嫌取りって感じが出ると興ざめされますし、食事に誘うのも同じっすね」

蒼汰「そうなのか……?」

拓也「奥さんの趣味関係で攻めるのはどうっすか? 奥さんってどんな趣味もってるんですか?」

蒼汰「え? あいつの趣味? ……えっと」

拓也「マジっすか。さすがに趣味も知らないとかヤバいっすよ」

蒼汰「うるさいな。えっと……確か……」

拓也「そういえば、先輩と奥さんってどこで出会ったんすか? 趣味関係ってわけじゃないんっすよね?」

蒼汰「……ああ。あれは……。って、今日って何日だっけ?」

拓也「15日っすよ」

蒼汰「……15日か」

場面転換。

夜道を歩く蒼汰。

蒼汰「……あれから、もう4年か。久しぶりに行ってみるかな」

方向転換して、歩き出す蒼汰。

場面転換。

山道を歩く、蒼汰。

蒼汰「確か、この辺だったよな……」

葵「あっ!」

蒼汰「あれ? お前、どうしてここに?」

葵「……別に、なんとなく。あなたこそ」

蒼汰「俺もなんとなく……」

葵「そう……」

蒼汰「……」

キランと流れ星が落ちる音。

蒼汰・葵「あ、流れ星!」

蒼汰「……」

葵「……」

蒼汰「あのー。よく星は見るんですか?」

葵「いえ。今日は流星が見えるって聞いたんで見に来ただけなんです」

蒼汰「……ぷっ」

葵「ふふ……」

蒼汰・葵「あははははは」

蒼汰「よく覚えてたな」

葵「あなたこそ」

蒼汰「……ちょうど、4年前か」

葵「え? 今日ってこと、覚えてたの?」

蒼汰「ああ。お前と初めて出会った日だ」

葵「結婚記念日は忘れたのに?」

蒼汰「うっ……」

葵「あ、ごめん。嫌味じゃなくて……。今日のこと、覚えてたのが、ちょっと意外でさ」

蒼汰「なあ、知ってるか? この地球上で、同じ場所に同じ時間にいるっていうのは、天文学的なすごい確率らしいんだ。つまり、あの日、出会ったのは奇跡みたいなものなんだよ」

葵「ぷっ、ふふふふ……」

蒼汰「なんだよ?」

葵「それ、プロボーズのときも言った」

蒼汰「え? ……そうだっけ?」

葵「もう、肝心なところを覚えてないんだから」

蒼汰「とにかく! 今日は君と出会った、奇跡の記念日なんだ」

葵「うん……」

蒼汰「来年の今日もさ、またここで一緒に星を見ないか?」

葵「うん。私もそうしたい」

蒼汰「……」

葵「……」

場面転換。

スマホを操作する蒼汰。

蒼汰「よし、登録完了」

拓也「あ、先輩。助言通り、カレンダーに登録したみたいっすね」

蒼汰「ああ。それと、ありがとうな。お前のおかげで無事に、奥さんとも仲直りできたよ」

拓也「そうっすか。何よりっす」

蒼汰(N)「こうして、俺のスマホには誕生日と結婚した日と、出会った日の3つの記念日が登録されたのだった」

終わり。

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