【声劇台本】皇帝の運命

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■概要
人数:5~6人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
ウィン(幼少期)
ノア(幼少期)
ウィン(青年期)
ノア(青年期)
オドリック
その他

■台本

双子の赤子の泣き声。

大臣「オドリック様! 双子でございます。しかも、どちらも男……」

オドリック「……」

大臣「皇帝の継承者が2人というのはまずいですぞ。必ずや天を2つに分けます」

オドリック「わかっている」

大臣「どちらかを死産としましょう。どちらにしましょう?」

オドリック「……」

大臣「オドリック様。宰相としての御決断を」

双子の赤子の泣き声

オドリック「御子息は2人とも育てる」

大臣「なんと! しかし……」

オドリック「一人は影武者とする。……もし、即位の際に二人ともご存命だった場合は影武者の方は私の責任を持って始末する。それで良いな?」

大臣「……後悔しますぞ」

オドリック「……」

場面転換。

6年後。

ウィン(6)とノア(6)が木剣で打ち合っている。

ウィン「はっ!」

ノア「あっ!」

ウィンがノアの木剣を弾く。

オドリック「それまで! ウィン様の勝ちです」

ウィン「もう、ノアは相変わらず弱いなぁ」

ノア「あはは……。僕に剣は無理だよ」

オドリック「ノア様……。それではいけません。あなたはウィン様の影武者。いざとなったらノア様がウィン様を守らなくてはなりません」

ノア「うん。ウィンが危なくなったら、僕が盾になればいいんだよね?」

ウィン「大丈夫だ。そうなったら、俺がノアを守ってみせる!」

オドリック「いや、それでは意味がございません……」

場面転換。

川のせせらぎ。

ウィン「ここにいたのか」

ノア「あ、ウィン。うん。今日はちょっと暑いから川に足を入れながら本を読んでたんだ。気持ちいいよ。ウィンもどう?」

ウィン「よし!」

ウィンが靴を脱いで川に足を入れる。

ウィン「ホントだ、気持ちいいな」

ノア「でしょ?」

ぺらりとページをめくるノア。

ウィン「ノアは難しい本を読んでるんだな」

ノア「ん? ああ、うん。経済の本。結構、面白いよ。ウィンも読んでみる?」

ウィン「パス! 勉強はあんまり好きじゃない。剣の特訓の方が楽しい」

ノア「あはは。ウィンらしいや」

ウィン「本当はノアの方が皇帝に向いてるのにな。俺が影武者だったらよかったのに」

ノア「そんなことないよ! 僕、優柔不断だし、優しすぎるって、オドリックに言われるよ」

ウィン「優しいのが、何がダメなんだ?」

ノア「皇帝になったら残酷なことも決めないとダメなんだって。僕には無理だよ。それに、僕は影武者でよかったと思うよ」

ウィン「なんでだ?」

ノア「だって、僕、ウィンが死ぬとこ、見たくないもん。それなら、僕が死んだ方がいいよ」

ウィン「ばーか。それは俺だって同じだっての」

ノア「……ウィンは立派な皇帝になってね」

ウィン「……」

場面転換。

10年後。

バンと、ドアを開けてオドリックが入ってくる。

オドリック「ウィン様……。お父上が崩御されました」

ウィン「……そうか」

オドリック「ウィン様にはすぐに即位していただきます。……そして、即位に当たっては……」

ウィン「わかっている。ノアには死んでもらう」

オドリック「……う、うう。申し訳ありません。私が撒いた種を、ウィン様に押し付けてしまい……」

ウィン「構わん。臣下の者中にはノアを担ぎ上げて、クーデターを企んでいると聞く。反乱の目を摘むのにも、俺が皇帝として、たとえ兄弟でも容赦しないことを見せつけるためにも、いい機会となる」

オドリック「……はい」

ウィン「とはいえ、処刑という形になるのはさすがに忍びない。暗殺で頼む。……せめて楽に逝かせてやれ」

オドリック「はっ……」

場面転換。

バンとドアが開き、大臣が入ってくる。

大臣「ノア様! ……ウィン様が、暗殺未遂にあわれました」

ノア「え? そんな!」

場面転換。

ノア(16)がドアを開けて入ってくる。

ノア「ウィン! 大丈夫?」

ウィン「ノア……」

ノア「顔に包帯……。顔を斬られたの? 大丈夫?」

ウィン「触るな!」

ノア「ウィン……」

ウィン「やってくれたな、ノア。俺が即位するにあたって、自分が消されることを恐れて、俺に暗殺者を仕向けたか」

ノア「そんな! 違うよ!」

ウィン「白々しい。まあ、誰でも命は惜しくなるものだからな」

ノア「僕はウィンのためなら死ねる!」

ウィン「……」

ノア「信じて! 僕じゃない!」

ウィン「お前の臣下がやったことかもしれないが、同じだ。絶対に証拠をつかんで、お前を処刑してやる。皇帝になるのは俺だ」

ノア「ウィン……」

場面転換。

ノア「ウィン……。もう、あの頃に戻れないのかな……」

バンとドアが開き、大勢の兵士とウィンが入ってくる。

ノア「ウィン?」

ウィン「ノア。お前が俺を暗殺しようとした証拠が見つかった。これより、お前を処刑する」

ノア「ウィン……」

ウィン「せめてもの情けだ。俺の手で殺してやる。全員、部屋から出ろ」

兵士「し、しかし……」

ウィン「命令だ! 出ろ!」

兵士「はい……」

兵士たちが部屋から出ていき、ドアが閉まる。

ノア「……ありがとう、ウィン。君の手にかかるなら、本望だ」

ウィン「ああ……」

ウィンがノアの顔を斬る。

ノア「うわっ!」

ウィン「……」

ノア「うう……。どうしたの、ウィン。顔しか斬れてないよ?」

ウィン「……」

ウィンが顔の包帯を取る。

ノア「あれ? 顔に傷がない……?」

ウィン「ああ。襲われたというのは嘘だ。というより、俺が仕組んだ計画なんだ」

ノア「……どうしてそんなことを?」

ウィン「なあ、ノア。覚えてるか? 小さい頃、お前が、俺の死ぬところを見たくないって話」

ノア「うん。今も、同じ気持ちだよ」

ウィン「悪いな、ノア。俺も同じ気持ちなんだよ」

ノア「え?」

ウィン「うわああ! 近衛兵、入ってこい!」

兵士たちが入ってくる。

兵士「こ、これは……?」

ウィン「嫌だ! 嫌だ! 死にたくない!」

ウィンが剣を振り回す。

兵士「こ、これは……?」

ウィン「殺されるくらいなら殺してやる!」

兵士「顔に傷がある方が、ウィン様だ! ウィン様をお守りしろ!」

ウィン「うわーーーー!」

ノア「ダメーー!」

兵士がウィンに剣を突き立てる。

ウィン「ぐっ……はっ……」

ノア「ああっ!」

ノアがウィンに駆け寄る。

ノア「……どうして、こんなこと……」

ウィン「言っただろ……。俺はお前が死ぬところは見たくないって……」

ノア「ダメだよ……。だって、ウィンが皇帝になるんだから」

ウィン「悪いな……。嫌なことを押し付けて」

ノア「うう……」

ウィン「立派な……皇帝に……なれよ……」

ノア「うわあああああ!」

ノア(N)「こうして僕はウィンとして、皇帝の座を継いだ。これから、どんな困難が待ち受けていたとしても、ウィンの代わりに皇帝としての責任を果たしていく」

終わり。

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