【声劇台本】遠くの君へ

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、恋愛

■キャスト
高波 碧人(たかなみ あおと)
朱莉(あかり)

■台本

携帯のコール音。

碧人「はい。高波です。あ、宮下さん! ……はい。今、次のネームを切ってて……え? 打ち切り? ちょ、ちょっと待ってください! あと5週……いえ、3週ください! ここから盛り上がるところなんです! ……はい。……はい。わかりました……」

ピッと、携帯を切る碧人。

机の上に携帯を投げ捨て、乱暴にベッドの上に寝転がる。

碧人「14週か……。もった方なのかな。って、落ち込んでもいられん!」

ガバッと起き上がって机に向かい、原稿を書き始める。

碧人「ダメなら、次にいくだけだ!」

場面転換。

編集部。持ち込みをしている碧人。

碧人「3年前に新人賞をいただいて、週刊の連載も担当してます。まあ、14週だったんですが、今回のは自信があるんです!」

場面転換。

別の編集部。持ち込みをしている碧人。

碧人「今、流行りの異世界転生ものに得意のSF要素を入れてみたんです! 見どころとしては、この惑星のヒロインが……」

場面転換。

さらに別の編集部。持ち込みをしている碧人。

碧人「5話まで描いてあります。すぐに連載をもらっても対応できます! なんなら、この5話も描き直すことも、全然可能です!」

場面転換。

階段を上り、ドアの前に立つ碧人。

碧人「はあ……」

カギを出し、鍵を開けてアパート内に入る。

碧人「さすがに心が折れるな。……って、ん? なんか、届いてる……」

郵便受けを開けて、箱を出す。

碧人「ああ、今日、2月14日か……」

箱を持って部屋に入る。

箱を机の上に置いて、勢いよく、ベッドに寝転がる。

碧人「……」

スマホを取り出し、電話をかける。

朱莉「はい」

碧人「も、……もしもし?」

朱莉「あ、碧人? 久しぶり」

碧人「……よく、俺だってわかったな」

朱莉「(ため息)わからないわけないでしょ」

碧人「いや、3年経ってるからさ。忘れられてるかなって」

朱莉「たった3年で忘れるわけないって。何年付き合ってたと思ってるのよ。で? どうしたの? 碧人からかけて来るなんて珍しいね」

碧人「チョコ、届いた。ありがとな」

朱莉「何を今更。去年も、その前も電話よこさなかったくせに」

碧人「いや、去年とかはホントに忙しかったんだよ」

朱莉「……暇じゃないと電話かけてこないわけ?」

碧人「あ、いや……ごめん……」

朱莉「ま、いいけど。……で、なにかあったの?」

碧人「……ちょっと声聞きたくなってさ」

朱莉「ふーん」

碧人「……元気か?」

朱莉「少なくても、碧人よりも元気だと思うよ」

碧人「そっか……」

朱莉「……打ち切りにでもなったの?」

碧人「え? な、なんでわかるんだ?」

朱莉「しかも、新作を色々なところに持ち込んで、全滅したでしょ?」

碧人「……この部屋に盗聴器でも仕込んでるのか?」

朱莉「あんたの声、聞けばわかるって。学生の頃に、持ち込みしてボコボコに酷評されたときと同じトーンだもん」

碧人「……」

朱莉「スランプにでもなった?」

碧人「なあ、朱莉。俺って才能ないのかも」

朱莉「……」

碧人「プロになれるのなんて、天才の中でもほんの一握りだ。俺なんかじゃ無理だったんだ」

朱莉「……」

碧人「……あの頃は楽しかったな。俺が漫画を描いて、お前が読んで笑ってくれた。それでだけ、満足してた。漫画を描くこと自体が楽しかったんだ」

朱莉「今は違う?」

碧人「怖いんだ。何を描いても、面白くないんじゃないかって思って……。プロになるのって、こんなに辛いだなんて、思ってもみなかった……」

朱莉「……」

碧人「……なあ、朱莉」

朱莉「一流の漫画家になって、お前を迎えに戻る」

碧人「……」

朱莉「そう言って、碧人は上京したよね」

碧人「ああ……」

朱莉「夢、諦めるの?」

碧人「……」

朱莉「今、諦めたら絶対に後悔するよ」

碧人「……けど、もう、3年だぞ。芽が出なかったんだ。才能なかったんだよ」

朱莉「たった3年じゃない。もう少し全力で足掻いてみたら?」

碧人「……」

朱莉「私は待ってる。碧人を信じて」

碧人「朱莉……」

朱莉「けど、どうしても辛くなったら戻ってきて。そのときは、二人で一からやり直そ」

碧人「お前……最高の女だな」

朱莉「今頃気づいたの?」

碧人「サンキュー。気合入った」

朱莉「うん、頑張れ!」

碧人「ああ」

ピッと携帯を切る。

机に座って漫画を描き始める碧人。

碧人「……」

手を止めて、箱を開けて、チョコを頬張る。

碧人「……美味ぇ」

再び、漫画を描き始める碧人。

終わり。  

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