【声劇台本】それぞれの戦い方

【声劇台本】それぞれの戦い方

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■概要
人数:4人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
岸田 智哉(きしだ ともや)
正樹(まさき)
恭祐(きょうすけ)
康太(こうた)
その他生徒

■台本

学校の廊下。

ざわざわしている。

女生徒「やっば! 順位下がっちゃった」

男生徒1「お前、見てかないの?」

男生徒2「俺が50位内に入ってるわけねーじゃん」

男生徒1「一位は今回も岸本か」

男生徒2「今どき、テストの成績を貼り出すって、古いよな」

遠くから見ている智哉。

智哉「……」

正樹「あんまり嬉しそうじゃないな。一位なんか取って当たり前、か」

智哉「そんなことありませんよ、先生。これでも必死なんです」

正樹「受け答えまで、完璧な優等生だな。2位と20点も差をつけておいて、必死はないだろ」

智哉「圧倒的に1位を取ることが重要なんですよ。少なくても、2年生の中で僕を知らない生徒はいないですからね」

正樹「意外だな。お前、意外と顕示欲が高いんだな」

智哉「自己防衛です。これが僕の学園生活での戦い方なので」

正樹「……どういうことだ?」

智哉「……なんでもないです。気にしないでください」

歩き出す智哉。

場面転換。

河川敷を歩く智哉。

恭祐「あはははは! おら、避けろよ! 当たったら痛ぇぞ!」

康太「や、止めっててば!」

智哉「……」

恭祐「うっせー! さあ、第一球、投げました!」

康太「痛いっ!」

恭祐「あはははは!」

智哉「……」

再び歩き出す智哉。

正樹「助けないのか?」

智哉「(立ち止まり)……先生こそ」

正樹「俺か? 俺は助けないな」

智哉「なぜです?」

正樹「お前と同じ理由だよ。問題が起こってることは見えてないからな」

智哉「……」

正樹「お前が言ってたこと、ようやくわかったよ」

智哉「……なんの話ですか?」

正樹「自己防衛。戦い方ってやつだ」

智哉「……」

正樹「ダントツの成績で有名人のお前に手を出そうとする奴はいない。教師どころか、校長のお気に入りをイジメようなんて考える気合の入ったやつはこの学校にはいないからな」

智哉「……」

正樹「なかなかいい手だ。他には目を付けられないように息をひそめるという手もあるが、それでも可能性はゼロじゃない」

智哉「先生はまずいんじゃないんですか?」

正樹「ん? なにがだ?」

智哉「イジメ。止めた方がいいと思いますけど」

正樹「なんで?」

智哉「なんでって……。そういうのも教師の仕事なんじゃないんですか?」

正樹「違うよ。俺の仕事は生徒に勉強を教えることだ」

智哉「……子供を正しい道に導くのも入ってると思うんですが」

正樹「ははは。冗談じゃない。子供を導くのが仕事ってんなら、教師には導く方法の専門的なカリキュラムが組まれるはずだろ。それに、今のご時世、教師は生徒を殴れないどころか、触ることすらできない。生徒を怒れば、あとから親や校長から教師が怒られることになる。こんなんで、子供を導けなんて無理な話さ。権限も与えられていないのに、義務なんか負えない」

智哉「……世間はそう思ってないんじゃないんですか?」

正樹「あの、イジメてる方、確か、恭祐って名前だったっけな。あいつ理事長の息子なんだよ」

智哉「……」

正樹「お前も知ってると思うけど、あいつはそのことを利用して、学園じゃやりたい放題だ」

智哉「……学園生なら誰でも知ってますよ」

正樹「そんな状態なのを、教師は誰も気づいてないと思うか?」

智哉「……あり得ないですね」

正樹「そういうことだ。つまり、教師だってあいつには手を出せない。理事長に目をつけられたら、俺たち普通の教師は終わりだからな」

智哉「問題が起こったらどうするんです? いじめられている方が大怪我、死亡とかしたらさすがにまずいんじゃないんですか?」

正樹「もし、そうなったら、理事長は世間から叩かれ、理事長の座を降ろされる。もちろん、恭祐だって何かしら法の制裁を受けることになる。正直に言うと、俺たちはそうなることを望んでるのかもしれないな」

智哉「そうなったら、先生たちも世間から叩かれるんじゃないんですか?」

正樹「一時期はな。気付きませんでした、すみませんでした、で終わりだよ」

智哉「……最低ですね」

正樹「お前たち、生徒もそうなればいいって、思ってるんじゃないか? 恭祐が消えて欲しいって」

智哉「否定はしません」

正樹「ははは。ホント、お前は面白いやつだ」

智哉「つまり、見て見ぬフリが、先生の自己防衛。戦い方というわけですね」

正樹「そういうことだ。問題を起こさない。それがもう一つの俺の仕事だよ」

智哉「先生は、どうして教師になったんですか?」

正樹「なんだ? 教師に説教か?」

智哉「いえ。純粋な興味です」

正樹「……面白い先生がいたんだよ。その先生がいたから、学校が楽しかった……」

智哉「……」

正樹「問題を起こしたら、本気で怒ってくれてな。志望校に受かった時は自分のように喜んでくれて……」

智哉「……いい先生だったんですね」

正樹「お前、ズルいな」

正樹が歩き出す。

智哉「やめた方がいいですよ」

正樹「今、お前が言うな」

恭祐たちに近づいていく、正樹。

正樹「こらあ! お前ら、なにやってんだ!」

場面転換。

病室。ドアがノックされ、智哉が入ってくる。

正樹「おう、岸田か」

智哉「随分と派手に階段から落ちたようですね。全治、2ヶ月ですか」

正樹「ははは。こうなることはわかってたつもりだったんだけどな」

智哉「……」

正樹「お前は気に病む必要はないぞ。俺が勝手にやったことだからな」

智哉「いえ。気にしてません。先生は戦い方を間違えて負けてしまっただけですから」

正樹「お前、ホント、可愛げないな」

智哉がテレビを付ける。

正樹「おいおい、テレビなんか付けて……」

テレビのニュース。

キャスター「これが教師に暴行している映像です。同じ高校に通っている生徒なのですが、注意されてカッとなったと取り調べて話しているとのことです。この生徒はこの学園の理事長の息子で、当初、理事長は事件をもみ消そうと……」

ピッとテレビを消す智哉。

智哉「今、学園は凄いことになってるみたいですよ。マスコミが殺到して」

正樹「お前……」

智哉「先生が暴行されているのをスマホで撮影して、マスコミと教育委員会に送りました。匿名で送ったので、恭祐から逆恨みもされることもない。これが僕の戦い方です」

正樹「……大物になるよ、お前は」

智哉「そうなったら、教育の現場を変えてあげますよ」

正樹「ははははは。期待して、待ってるよ」

終わり。

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