【声劇台本】町内の都市伝説
- 2021.02.14
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ
■キャスト
達也(たつや)
布姫(ぬのめ)
水麗(すみれ)
男
■関連小説
この作品は小説『トーテムポールと学校の七不思議』の番外編の話になります。
<トーテムポールと学校の七不思議>
ただ、この作品は独立したストーリーなので、小説を読んでいなくても問題ない構成になっています。
■台本
達也「……というわけで、今回の校内新聞はこの都市伝説についてで、いこうと思う」
水麗「王手!」
パチンと駒を将棋盤に叩き付ける音。
布姫「やるわね。でも、私の方が先に王手していたから、私が王を取って終わりよ」
水麗「うわー! やられたー」
達也「聞け! 人の話を!」
布姫「最近、学校内で特に変わった事件が起きないから、町で噂になっている都市伝説を調査するんでしょ?」
達也「……聞いてたなら、ちゃんと反応してくれよ」
布姫「いいんじゃない? 頑張って取材してくれば」
達也「……お前も新聞部のメンバーなんだが」
布姫「知ってるわ」
達也「……手伝う気はゼロ、ということははっきりとわかった」
布姫「都市伝説なんて言っても、ただの見間違いよ。調べたって無駄足になるに決まってるわ」
達也「まあ、そうなんだろうけど、見間違いって結論を出せれば、それはそれで記事になるだろ?」
水麗「ねえねえ、それって、どんな都市伝説なの?」
達也「夜に選挙用ポスターから人が出てきて、女子高生を追いかけてくるって内容だ」
水麗「んー。なんか、学校の七不思議とあんまり変わらないね。もっと派手なのだと思ったよ」
達也「いや、ポスターから人が出てくるんだぞ。十分、派手だと思うんだが……」
水麗「でも、確かに布布(ぬのぬの)の言う通り、見間違いっぽいよねー。その内容だと」
布姫「どうせ、変質者とポスターの人が似てるか、変質者が選挙に出ているかのどっちかよ」
達也「後者は大問題だけどな」
水麗「変質者いえば、半年くらい前にも噂になったよねー。いつの間にか、聞かなくなったけど」
布姫「あー、いたわね。私も遭遇したわ」
達也「え? マジ? 大丈夫だったのか?」
布姫「大丈夫もなにも、単に下半身を露出してくるだけよ。特に危険なことはないじゃない」
達也「ま、まあ、そりゃそうだけど……。じゃあ、お前は無視したってわけか」
布姫「鼻で笑ったら、膝から崩れ落ちてむせび泣いていたわね」
達也「……変質者が出なくなったのは、完全にお前のおかげだな」
水麗「それで、都市伝説を調べるって、どうすんの?」
達也「まあ、ひたすら張り込みかな……」
水麗「地味だねー」
布姫「完全に労力に見合わないわよ」
達也「……はあー。そうだな。今回は止めとくか」
水麗「うん、それがいいよ」
布姫「……」
場面転換。
達也が歩く音。ピタリと立ち止まる。
達也「……これが噂のポスターか。うーん。新しいし、別に変ったところはないよな」
布姫「やっぱり……」
達也「うわっ! 布姫(ぬのめ)! どうしてここに!?」
布姫「止めておくって言ったわりに、早く帰るなんて、バレバレよ」
達也「うっ……」
布目「どうせ、話しているうちに、本当に変質者だったら私たちが危険だと思って、ああ言ったんでしょ?」
達也「……わかってるなら、来るなよ」
布姫「……放っておけるわけないじゃない」
達也「え?」
布姫「あなたが変質者に追いかけられてるなんて、面白い写真を撮るチャンスじゃない」
達也「お前、最低だな」
布姫「なんなら、動画で撮ってあげてもいいわよ。あなたの悲鳴付きで」
達也「弱みを握る気満々じゃねーか。……けど、ポスターが普通ってことは、やっぱりお前が言う通り、変質者と見間違ったってオチだろうな」
布姫「そうだとしても、変質者がいるなら放っておけないわね。学園生のためにも」
達也「……学園生のため? どういうことだ?」
布姫「目撃者がうちの学園の生徒だけなのよ。しかも全員、女生徒。……って、下調べしてないの?」
達也「うっ! ……け、けど、女生徒ばかり狙われるってことは変質者の線が濃厚だよな」
布姫「うちの学園生に絞られてるのがきになるけどね」
達也「偶然だろ。この道、学園に続いてるから、学園生がよく通るんだし」
布姫「確かにこの道、学園生が多く通るわ。だけど、他の人だって通らないわけではないわよ」
達也「うーん……」
布姫「それに、このポスター……」
達也「ん? なんか気になることあるのか? 別に普通だと思うけど」
布姫「ちょっと調べたいことがあるわ。付いて来て」
達也「あ、ああ……」
場面転換。
二人が歩く音。そして、ピタリと立ち止まる。
布姫「……」
達也「ここって、候補者全員のポスターが貼ってあるところか。……って、あれ?」
布姫「気づいたかしら?」
達也「ああ。この中に、さっきのポスターが無い」
布姫「そう。つまり、あのポスターは偽物だってことね」
達也「……単に、前のを剝がし忘れた、とかじゃないのか?」
布姫「それにしては新しかったわ」
達也「あ、確かに」
布姫「何よりおかしいのは、あのポスターの写真の男……私服だったのよ」
達也「……私服の何が変なんだ?」
布姫「選挙ポスターなのよ? つまりは議員になるための宣伝のポスターなの」
達也「……あ! 普通はスーツ姿か」
布姫「ええ。真面目をアピールするべきポスターなんだから、よほど有名人で、その印象が強くない場合はスーツがデフォルトでしょうね。現に、ここに貼ってあるポスターの男は全員スーツ姿よ」
達也「……偽物のポスターを作る理由ってなんだ?」
布姫「わからないわ。だけど、もう一つ気になることがあるのよ。ポスターが貼ってあった場所、街灯の下だった。……それに、地面にはマンホールがあったわ」
達也「もし、意図的に街灯の下に貼ったんなら目立つようにしたかったってことか?」
布姫「無意識にポスターが目に入った後、その人間に追いかけられたら、印象に残るはずだわ」
達也「確かに、ポスターを見てない状態で男に追いかけられたら、単に変質者が出たって噂になるもんな」
布姫「ポスターが目に入るようにしておいて、本人は……」
達也「マンホールの中に隠れるってわけか」
遠くから悲鳴が響く。
男「ぎゃあああー!」
達也「ポスターの場所からだ!」
布姫「現れたってわけね、行くわよ!」
場面転換。
二人が現場に駆け付ける。
男「ぎゃーー! 離せ―! 離してくれ!」
水麗「にっしっし! 妖怪壁男、ゲットだぜ!」
達也「あ、水麗(すみれ)!」
水麗「あ、達っちん! やっと見つけた」
布姫「どういうことか説明してくれる?」
水麗「あ、やっぱり布布、抜け駆けしてるし! わたしも、一緒に調査したかったから、達っちんを探してたら、妖怪ゲットしたって感じだよ」
男「あー! お前は! や、やっと見つけたぞ!」
布姫「……誰?」
男「くっ! お、お前に笑われた男だ。俺は……あれから、自分に自信がなくなって」
布姫「ああ、あの貧相な物ぶら下げてた変質者ね」
男「貧相って言うな―!」
達也「……つまり、この男はお前が心を折った変質者ってわけか。けど、お前、ポスターを見たときに気づかなかったのか?」
布姫「興味ない男の顔を、いちいち覚えてられないわよ」
男「う、うう……。俺は俺は……復讐したかったんだ……」
布姫「さ、警察に突き出しに行くわよ」
達也「……淡白だな、お前」
場面転換。
次の日の部室。
水麗「つまり、どういうこと?」
達也「半年前、布姫に心を折られた変質者は復讐を企てたんだ。どう脅かすかを考えた結果、ポスターの男に追いかけられるというトラウマを植え付けようとした。普通に脅かそうとしてもまた、返り討ちに合う可能性が高いからな」
布姫「だから、マンホールの下に隠れて、学園生が通ったらバレないように出て、後ろから襲い掛かってわけね」
達也「だから、学園生だけが狙われたってわけか」
水麗「でも、それならなんで、布布だけを狙わなかったんだろ?」
布姫「下からだったから顔が見えなかったんでしょ。精々、制服が見える程度よ」
達也「あの男、再犯だし、悪質だから実刑になるんじゃないかって、警察の人も言ってたからな。まあ、なんにしても変質者が捕まってよかったよ」
布姫「その割には浮かない顔してるわね」
達也「……解決したけど、記事にはできないからな」
布姫「あら、どうして?」
達也「本当の新聞に載ったからな。校内新聞にしても、転記にしかならない」
布姫「そう。残念だったわね」
達也「というわけで、今度は人面ツチノコの都市伝説を追おうと思う!」
水麗「ロン!」
麻雀パイを倒す水麗。
布姫「それ、フリテンよ」
水麗「えーー!」
達也「聞け! 人の話を!」
終わり。
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