【声劇台本】君の隣に
- 2021.02.15
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、学園、ラブストーリー
■キャスト
紬(つむぎ)
優馬(ゆうま)
藍(あおい)
■台本
紬「よし! 出来た! って、ちょっと味見を……うん! バッチリ! 美味しい!」
場面転換。
コンコンとドアをノックする音。
優馬「ん? 紬? 開いてるよ」
ガチャリとドアが開き、紬が入ってくる。
紬「優くん。はい、これバレンタインのチョコレート!」
優馬「ありがとう。後で食べさせてもらうよ」
紬「……あ、ごめんね。勉強中だった?」
優馬「ああ。でも、ちょうど休憩しようと思ってたんだ」
紬「ホント? じゃあ、少しお話してっていいかな?」
優馬「うん。もちろん」
紬「へへへ。優くん、大好き!」
場面転換。
学校の教室。
紬「でね、11時くらいまで、ずーっとお話してたんだー」
藍「はいはい。ご馳走様」
紬「何よ、藍。真剣に聞いてよ!」
藍「あのねえ。他人のノロケ話ほど、つまらないっていうか、むかつくことはないのよ」
紬「べ、別にー。ノロケってわけじゃなくってー」
藍「照れながら否定しても逆効果だから。てかさ、紬。大丈夫なの?」
紬「なにが?」
藍「そりゃ、優馬くんとあんたは、学園内でも有名なバカップルだよ」
紬「バカップルって……」
藍「でもさ、ホントに優馬くんって、あんたのこと好きなの?」
紬「な、何言ってんの!? ラブラブだよ! 昨日だって、夜遅くまでずっと話してたんだよ!」
藍「優馬くんは優しいからね。押しかけて来たあんたを追い返すことをしなかっただけで、あんたがマシンガントークしてただけなんじゃないの?」
紬「そ、そりゃ、私が話してることは多かったかもしれないけど……でも、優くんはあたしのこと、好きって言ってくれるよ」
藍「口では何とでも言えるでしょ」
紬「……そんな」
藍「あのね、紬。これは親友だから、あえて忠告させてもらうよ。あんた、優馬くんの優しさに甘えてない?」
紬「え?」
藍「優馬くん、最近、女子の中じゃかなり人気が上がって来てるんだよ」
紬「えへへへ。そりゃ、優くんは素敵だもん!」
バンと机を叩く藍。
藍「真面目に聞いて!」
紬「え? あ、うん」
藍「優馬くん、ここ一年で成績もグンと上がったし、運動だって万能じゃない。それに生徒会にも入って活躍してる」
紬「う、うん……」
藍「それに何といっても、イケメン。こんだけ、高性能な男子を、女子が放っておくわけないでしょ」
紬「でも、優くんと私は付き合ってるんだよ」
藍「そう。だから、他の女の子は告白とかできない。けどね、もし、あんたと別れたとなったら、一気に狙ってた女子が殺到するわ」
紬「別れたりなんかしないよ!」
藍「そりゃ、あんただけの気持ちでしょ? 優馬くんはどう思ってるかわからないじゃない」
紬「……そ、そんなこと」
藍「冷静に考えてみて。あんた、成績は下から数えた方が早いし、運動だってできない。それに最近、太ってきてる」
紬「こ、これは……バレンタインのチョコの研究で……」
藍「確かにチョコレートを渡すのはポイント高いと思うよ。でも、あんたの女としての魅力が一年間で下がってきてる」
紬「……」
藍「はっきり言って、優馬くんに告白する前のあんたはもっと、身だしなみにだって気を張ってたし、女の子として魅力的だった。今のあんたは、優馬くんが好きって言ってくれるから安心仕切ってるでしょ」
紬「……」
藍「もし、他に優馬くんに好きな人が出来たりしたらどうするの?」
紬「そ、それは……」
藍「よく考えて。今のあんた、優馬くんの隣に、胸を張っていられるの?」
紬「……」
場面転換。
紬の部屋。
紬「もし、優くんに別の好きな人が出来たら……か。……いや、そんなの嫌。う、うう……嫌だよ。私、ずっと優くんの隣にいたいよぉ……」
場面転換。
紬が走っている。
紬「はっ! はっ! はっ! ひぃ。体力、凄く落ちてるなぁ……」
場面転換。
カリカリと勉強している紬。
紬「えっと……ここの方程式は……ううー全然、わからない……」
そのとき、グーっと腹が鳴る。
紬「お腹が減って、頭が回らない……。何か甘い物でも……って、ダメダメ! せっかく体重が落ちてきてるのに……」
場面転換。
書店。紬が本をペラペラとめくっている。
紬「えっと、今年の流行りのコーデは……」
優馬「あれ? 紬? 本屋にいるなんて珍しいね」
紬「あ、うん。ちょっとね。優くんは……参考書でも買いに来た、とか?」
優馬「うん。さすが紬。その通りだよ」
紬「……相変わらず、優くんは凄いね」
優馬「ん? なにが? ……それより、紬、最近、頑張ってるみたいだね」
紬「え?」
優馬「成績だって上がったみたいだし、苦手な運動も頑張ってるって先生褒めてたよ」
紬「え、えへへ」
優馬「でも、なんか無理してない?」
紬「え?」
優馬「何か思いつめてない? 最近、ずっと家にも来ないし……。何かあったの?」
紬「う、ううん。何でもないよ」
優馬「顔色も悪いし。ちゃんと食べてる?」
紬「大丈夫だよ! 最近、ちょっと寝不足なだけだから。あ、もうこんな時間。私、帰るね」
優馬「あ、せっかくだから一緒に帰ろう」
紬「ごめん。急いでるんだ!」
紬が走り出す。
場面転換。
ジョギングする紬。
紬「はっ! はっ! はっ! 優くん。私、頑張るからね。優くんに相応しい女の子に……」
フラフラと千鳥足になる紬。
紬「あれ……? 目の前が真っ暗に」
ドサっと倒れる紬。
場面転換。
紬「……あれ? ここ……病院?」
優馬「紬! よかった……目を覚ましたね」
紬「優くん……。私……」
優馬「倒れたのを見てた人が救急車を呼んでくれたんだ。……貧血だって。無茶なダイエットしてたんじゃないかって。それに寝不足と疲労もあるって」
紬「……」
優馬「どうしてこんな無茶をしたの?」
紬「優くん……。私ね……」
ぽろぽろと泣き始める紬。
紬「優くんの隣にずっといたい。優くんが大好きだから。優くんに捨てられたくないから……頑張ろうって……うう」
優馬「……紬」
紬「でも、頑張っても頑張っても……優くんに追いつけなくて……。このままじゃ、優くんの隣にいられないよ」
ガバッと紬を抱きしめる優馬。
紬「優くん?」
優馬「僕は紬のことが大好きだ」
紬「え?」
優馬「紬の隣に胸を張って立てるように、紬にずっと好きでいてもらいたくて……それで、ずっと頑張ってたんだ」
紬「……じゃあ、私と同じ……?」
優馬「うん。だから、僕の隣にいられないんて言わないでくれ。僕は紬の隣にずっといたいんだ」
紬「……優くん」
紬(N)「優くんは、私が思うよりも、ずっと私を好きでいてくれてた。それなのに、私……優くんを信じきれてなかったんだ」
場面転換。
学校の廊下を歩く紬。後ろから優馬がやってくる。
優馬「紬、一緒に帰ろう」
紬「うん」
優馬「そうだ。帰りに駅前のケーキ屋さんに寄って行かない?」
紬「ううん。真っすぐ帰って、勉強しないと」
優馬「え? 紬……。でも」
紬「うん。約束通り、もう無理はしないよ。でもね、優くんにずっと好きでいてもらうための努力は続けたいの」
優馬「そっか……」
紬「だから、私の家で一緒に勉強しよ」
優馬「うん」
紬(N)「私はこの先もずっと努力を続けていく。胸を張って優くんを好きと言えるように。そして、胸を張って優くんに好きと言ってもらえるように」
終わり。
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