【声劇台本】あなたは私の光りです
- 2021.03.04
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブストーリー
■キャスト
裕翔(ゆうと)
御門 花(みかど はな)
不良
女性
■台本
裕翔(N)「親で子供の人生が決まる。金持ちの家に生まれた奴は、将来お金持ちになるだろうし、子供時代は良い物が食えるし、良い高校にだって行けるだろう。そして、子は親を選べない。これはこの世の真理だ。父親がチンピラ。この時点で、俺の人生は決まったようなものだ」
裕翔が不良を殴る。
不良「ぐえっ!」
裕翔「……ふん」
不良「くそ、てめえ、覚えてろよ」
裕翔「リベンジしたけりゃ、いつでも来な」
裕翔が立ち去る。
歩き続ける裕翔。
裕翔(N)「高校に行く頃には立派な不良の出来上がりってわけだ。いや、俺には不良の道しか残ってなかったと言った方が正しいだろう。何か都合の悪いことが起これば俺のせいにされるし、俺が何かいいことをしたとしても信じて貰えないか、裏があるんじゃないかと疑われる。そんな中で普通の人間に何かなれるわけがない。周りがそう望むなら、俺は望んだとおりに行動するだけだ。今だって、なんとなくむしゃくしゃしたから、喧嘩を売って憂さ晴らしをした。こんな生活が、この先もずっと続くと思っていたんだ」
場面転換。
学校のチャイム。
花「あー、裕翔くん、またこんなところでサボってるー。わーるいんだー」
裕翔「悪いことするから、不良なんだよ」
花「あははは。そりゃ、そっか」
ガサガサと袋を漁って、パンを取り出して、食べ始める花。
花「むぐむぐ。あー、このパン美味しー。当たりだー」
裕翔「おい、花。お前、何してんだよ」
花「ん? パン食べてるー」
裕翔「んなことは見りゃわかる。もう、チャイムなったぞ」
花「うん、知ってるよー。むぐむぐ。おいしー」
裕翔「授業始まるぞ」
花「そだねー」
裕翔「いや、そだねー、じゃねえよ。早く行けよ」
花「なんで?」
裕翔「なんでって……。あー、もういいや。勝手にしろ」
花「うん、勝手にするー。あ、裕翔くん、パン食べる―?」
裕翔「いらねえよ」
花「あれ? 裕翔くん、口の中、切れてるよー?」
裕翔「あん? いつもだ」
花「ダメだよ、見せてー。はい、あーん!」
裕翔「はあ……。わかったよ。あー」
花「えいっ!」
裕翔の口に花がパンを突っ込む。
裕翔「うごっ! ごほっ! ごほっ! ごほっ! なにしやがる!」
花「パン、美味しかったー?」
裕翔「アホか。それどころじゃなかったっての」
花「そっかー。じゃあ、はい! 今度は味わって食べてねー」
裕翔「いや、いらねーって……」
花「美味しいよー」
裕翔「……はあ。わかったよ」
裕翔がパンを奪い取って食べる。
裕翔「お、美味い」
花「でしょー? でもー、焼き立てだともっと美味しいと思うんだよねー。だから、放課後、一緒にパン屋さん行こ―ねー」
裕翔「勝手に決めるな」
花「さてとー!」
花が立ち上がる。
裕翔「……授業行く気になったのか?」
花「ううん。パン食べちゃったから、売店でほじゅーしてくる―」
裕翔「……」
花「じゃあ、放課後に校門のとこにしゅーごーねー」
花が走って行ってしまう。
裕翔「あ、待て! 行くって言ってねーぞ……って、行っちまった」
裕翔(N)「御門花。数日前から突如、俺に付きまとってきた女だ。どんなに追い払おうとしても、全く聞く耳を持たずに絡んでくる。……学園広しといえど、俺なんかに好き好んで話しかけてくるのはあいつくらいだろう。けど、俺なんかに絡んで何の得があるんだ? ……全く、何を考えてるかわからん奴だ」
場面転換。
学校のチャイム。
周りは帰宅する生徒たちで賑わってる。
そんな中歩く裕翔。
花「やっほー、裕翔くん、待ってたよー」
裕翔「……お前、俺が来なかったらどうするつもりだったんだよ?」
花「んー? んー、裕翔くん来てくれると思ってたから、来ないなんてこと考えてなかったー」
裕翔「……おいおい。どんだけおめでたい頭なんだよ」
花「でもー、来てくれたしー」
裕翔「はあ……。で? どこ行くって?」
花「パン屋さんだよー! さあ、レッツゴー!」
場面転換。
パン屋。店内。
花「むぐむぐむぐ。おいしー!」
裕翔「お前、見た目と違って、凄い食うな」
花「だってー、美味しいんだもん。裕翔くんは2つで足りるの? もしかして、パン嫌いだった?」
裕翔「いや、元々、小食なんだよ、俺」
花「へー、いがい―」
裕翔「そっくりそのまま返す。……にしても、パン屋ってコーヒーも美味いんだな」
花「裕翔くん、おとなだよねー。ブラック飲むなんて」
裕翔「ブラックが一番、コーヒーの味がわかるんだよ」
花「えへへ。裕翔くん、また来ようねー」
裕翔「……気が向いたらな。なあ、花。……お前、なんで俺に構うんだ?」
花「んー。楽しいからー」
裕翔「楽しい? 俺といることがか?」
花「うん。……裕翔くんは、私と一緒にいるのは嫌?」
裕翔「……そんなことは……ない」
花「わーい! やったー」
裕翔「お、おい! 静かにしろって」
場面転換。
裕翔と花が並んで歩く。
女性の声「ちょっと止めてください!」
裕翔「……花。お前、先に行ってろ」
花「裕翔くん?」
裕翔「いいから、帰ってろ。また明日な」
裕翔が走っていく。
場面転換。
女性「止めてって言ってるでしょ」
不良「まあ、そんなこと言うなよ」
裕翔「はあ……。世の中、クズばっかりだな。まあ、人のこと言えないが」
不良「な、またお前か!」
裕翔「また……? 前に殴ったことあったっけか?」
不良「次見つけたらぶっ殺すって決めてたんだ!」
ナイフを出す不良。
不良「うおおおお!」
花「だめーー!」
裕翔「なっ! 花っ!」
花が飛び出し、腕を切られる。
花「きゃあ!」
不良「くっ! 邪魔しやがって! 今度こそ……ぐえっ!」
裕翔が不良を殴り飛ばし、不良吹っ飛ぶ。
裕翔「花! 大丈夫か!」
花「へ、平気平気―。ちょっと切られただけだからー」
裕翔「バカ、無理するな。病院行くぞ」
花「大げさだよー」
裕翔「いいから、黙ってろ」
裕翔が花を抱き抱える。
花「わおー。お姫様抱っこだー」
裕翔「黙ってろって」
裕翔が走り出す。
花「ねえ、裕翔くん。さっきさ、どうして裕翔くんに一緒にいるかって聞いたよね?」
裕翔「ああ……」
花「裕翔くんはね、私にとっての光なんだ」
裕翔「……光? 闇の間違いだろ」
花「裕翔くん、さっきの女の人みたく、私を不良から助けてくれたんだよ。覚えてない?」
裕翔「……悪いな。覚えてない」
花「ははは。それだけ、いっぱい助けてるってことだね。……やっぱり裕翔くん、優しい人だよ」
裕翔「……憂さ晴らしに喧嘩してるだけだ」
花「ううん。優しい人だよ裕翔くん。私にはわかるもん」
裕翔「……」
花「それにね、裕翔くんは私のことトロくさいとか、変だって言わないもん。普通に話してくれるの、裕翔くんだけだよ」
裕翔「……俺も」
花「ん?」
裕翔「いや、なんでもない」
裕翔(N)「こんな俺に話しかけてくれるのはお前だけだ。花。俺にとってもお前は、光なんだ」
終わり。
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