【声劇台本】綺麗なバラには棘がある

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
太陽(たいよう)
大地(だいち)
花純(かすみ)

■台本

放課後の教室。

教室には太陽と大地の二人だけ。

太陽「綺麗なバラには棘がある。このことわざは、美人に不用意に近づいたら怪我をするという戒めから生まれたものだろう。つまりは、告白なんかしようものなら、一刀両断される。心に深い傷を負うことになる。だから、美人には近づかずに遠くから眺めているのが一番いいということなんだ」

大地「違う、違う! そのことわざは、美人を手に入れるためには多少の怪我は覚悟の上で行けってことだよ。虎穴に入らずんば虎子を得ず。これと同じだって」

太陽「いやあ、お前、どれだけの生徒が玉砕したか知ってるのか? もう、三桁に行くって噂だぞ」

大地「三桁って、いくらなんでも大げさだろ。……いや、あの美貌ならあり得そうなのが怖いな」

太陽「何が怖いって、玉砕した人はみんな病院送りになってるって話なんだよ」

大地「は? それって、フラれたショックで精神的に病むって話か?」

太陽「詳しいことはわからないんだけど、告白して失敗したら死ぬって話だぞ」

大地「は? いくらなんでも、そりゃ嘘だろ」

太陽「いや、本当なんだって。学校の七不思議に数えられるくらいなんだから」

大地「なんだよ、その胡散臭い学校の七不思議は」

太陽「新聞部に調査を依頼してみようかな」

大地「おいおい。話が逸れてるぞ」

太陽「おっと、そうだな。……で、どうする? それでも行く気か?」

大地「俺は当然、行くべきだと思う。そもそも、それが目的でクラブに入ったんだからな」

太陽「けど、引っかかるんだよな」

大地「噂なんかで、日和るなよ」

太陽「いや、噂だけじゃなくって。大体さ、クラブに俺たちしか……」

ガラガラと教室のドアが開く。

花純「あら、太陽さん、大地さん。まだ、教室にいらしたんですね。そろそろ、クラブが始まる時間ですわよ」

太陽「あ、花純先輩!」

大地「すいません、すぐ行きます!」

場面転換。

教室内。

本をペラペラとめくる花純。

太陽「あ、あの、花純先輩……」

花純「なんでしょう?」

太陽「このクラブって、文芸部……ですよね?」

花純「ええ。正しくは文芸クラブ、ですけどね」

太陽「……どうして、その……薬学の本ばかり読んでるんですか?」

花純「あら、薬学書も立派な書物ですわよ。文芸といっても問題ありませんわ」

大地「そ、そうですよね! おい、太陽! なに、変なこと聞いてるんだよ!」

太陽「す、すいません……」

花純「……もしかして、専門書を読むのは嫌でしたか? ごめんなさい。自分勝手なお願いばかりしてしまって……」

太陽「あ、違います! 嫌ってわけじゃないんですよ!」

花純「そうですか。よかったです」

太陽「は、ははは……」

大地「花純先輩! こっちの毒についての本の要約が終わりました!」

花純「あら、早いですわね! 大地さんはいつも熱心にやってくれて、本当に助かりますわ」

大地「えへへへへ」

太陽「……そういえば、花純先輩。清水先輩、最近クラブにきませんけど、どうしたんですかね?」

花純「ああ、達也さんですか。入院されましたよ」

太陽「入院? 怪我、とかですか?」

花純「いえ。何かの病気とお聞きしてますよ。なんでも、急に吐血したとか」

太陽「……あ、あの、失礼ですけど、清水先輩、花純先輩に告白した、とかしませんでしたか?」

花純「え?」

大地「おい、太陽、お前、なに変なこと聞いてるんだよ!」

花純「いいえ。告白なんてされてません。わたくしなんかに、達也さんが告白なんてするわけありませんわ。達也さん、他に好きな女性がいたみたいですし。それにそもそも、わたくしは、そんな魅力的な女性なんかじゃありませんもの」

大地「そんなことありません! 花純先輩は、本当に、美人で優しくて、素敵だと思います!」

花純「あら、大地さん、ありがとうございます。嬉しいですわ」

大地「えへへへ」

花純「……はあ、みんな、大地さんみたいに思ってくれたら、どんなに幸せだったでしょうね」

太陽「……なにか、あったんですか?」

花純「わたくし、男性にフラれてばかりなんですよ。きっと、女性としての魅力がないんですわね」

太陽「え?」

大地「いやいやいやいや! 嘘ですよね? 花純先輩を振るなんて奴、存在するわけないですよ! こんなに美人なのに!」

花純「ふふふ。ありがとうざいます。でも、残念ながら、本当のことなんですのよ」

大地「花純先輩……」

花純「あ、そうだ。大地さんは、今、好きな人っていらっしゃいます?」

大地「い、います!」

花純「……そうですか。いるんですか。その恋、実るといいですわね」

大地「は、はい! 絶対に実らせます!」

花純「そうですわ。喉乾きません? お茶にしましょうか」

大地「そうですね。喉、カラカラです」

場面転換。

太陽と大地が並んで歩いている。

太陽「なあ、どう思う?」

大地「俺の恋は実ると思う!」

太陽「そうじゃなくって、花純先輩がフラれたって話」

大地「どう考えても嘘だろ。あんな美人、フるなんて、男じゃねえだろ」

太陽「まあ、な。あとさ、清水先輩だけど、どう見ても、花純先輩のこと好きだったよな?」

大地「ああ。凄いわかりやすかったけどな。もしかしたら、花純先輩が勘違いしたのかもな」

太陽「なるほどな。確かに、花純先輩は自分への好意とかには鈍感そうだし」

大地「……ん?」

大地が立ち止まる。

太陽「どうした?」

大地「なんか、腹が痛ぇ」

太陽「大丈夫か?」

大地「いたたた……。太陽、頼む。きゅ、救急車呼んでくれ!」

場面転換。

教室のドアが開き、太陽が入って来る。

太陽「お疲れ様ですー」

花純「いらしたわね。それじゃ、今日のクラブ活動を始めましょうか」

太陽「あ、そうだ、花純先輩。大地なんですけど、体調崩して入院したので、しばらくは学校、お休みになります」

花純「そう……」

太陽「……」

場面転換。

本を読んでいる花純がピタリと手を止める。

花純「太陽さん。一つお聞きしたいんですが、究極の愛というのはどんなものだと思いますか?」

太陽「え? きゅ、究極の愛……ですか? 難しいですね。なんでしょうかね」

花純「わたしくが考える究極の愛は、一緒に死んでくれることだと思いますの」

太陽「……え?」

花純「逆に言うと、一緒に死ねないくらいでは、それは愛とは呼べないと思いますの」

太陽「……そ、そうですか……ね」

花純「だから、わたくし、いつも告白するときに、一緒に死んでいただけるかを聞きますの。ですが、誰一人、了承してくれる方はいらっしゃいませんでしたわ!」

太陽「で、でしょうね……」

花純「ですが、わたくしの告白を断ったのに、他の女性と付き合っている男性もいますのよ。……それは、どう考えても偽物の愛だと思いません?」

太陽「……」

花純「わたくし、思いますの。世の中には偽物の愛がまん延してます。だから、わたくしが粛清しなくてはいけませんわ」

太陽「……もしかして、清水先輩と大地は……」

花純「チャラチャラと偽物の愛をほのめかす輩には天罰がくだっただけですわ。ふふふふ。当然の報いですわね」

太陽「……」

太陽(N)「……学校の七不思議。花純先輩に告白して失敗したら病院送りになるのではなく、花純先輩の告白を断ったら病院送りにされていたんだ。日ごろから毒について調べているのはそんな理由だったのか。花純先輩は、物凄い美人だけど、物凄いメンヘラだった。綺麗なバラには棘がある。まさしく、花純先輩には棘があった。それも猛毒を持った棘だ。やっぱり、このことわざは、美人に不用意に近づいたら怪我をするという戒めで合っていた。うん。綺麗なバラは見ているだけが、一番良いみたいだ」

終わり。

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