【声劇台本】不思議な館のアリス 世界一高い場所

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■概要
人数:1人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
アリス

■台本

アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」

アリス「あなたも、すっかり常連様になりましたね」

アリス「お客様の中には、あなたがここの使用人か何かだと思ってる方も多いらしいですよ」

アリス「ふふふ。冗談です」

アリス「……え? 逆に自分以外、お客を見たことがない? あははは。これは一本取られてしまいましたね。ですが、ご安心ください。ちゃんと、お客様はいらっしゃいますよ」

アリス「ですから、今回もあなたにお話しするために、物語を用意しています」

アリス「それでは、さっそく、お話を始めましょうか。ただ、今回のは不思議、というよりはある人の生き方の話になります」

アリス「……そんなガッカリした顔をしないでください。人の人生というのは学ぶべきことが多いものですよ」

アリス「あなたは身長のことで悩んだことはありますか?」

アリス「実は私、今でこそ普通より少し高いくらいですが、小さい頃は同年代の子供たちよりも頭二つ分高くて、悩んだものです」

アリス「今回は、私とは真逆の、背の低いことに悩んだ人の物語です」

アリス「そのお客様には、祖父がいらっしゃって、その祖父と言うのが結構、有名な方らしかったんです」

アリス「ロッククライミング、というのを知っていますか? ……ええ、そうです。あの、断絶壁を登っていくスポーツのことです」

アリス「その方の祖父は80歳になっても、現役で色々なところへ出かけていったそうですよ」

アリス「ロッククライミングにはハーケンやはしごのような道具を使って登る、エイドクライミングと、命綱のような、安全を道具以外のものを使わずに登る、フリークライミングというものがあるらしいのですが、その方の祖父はフリークライミングをやっていたそうです」

アリス「すごいですよね。高齢の方がロッククライミングするだけではなく、さらに体一つで登っていくのですから」

アリス「しかも、必ず1ヶ月に1回は登りに行くというのですから、凄いを通り過ぎて、周りは心配で困っていたそうです」

アリス「そこで、その祖父に聞いてみたそうです。どうして、そこまでしてロッククライミングをするのか、と」

アリス「すると、答えは一言だったらしいです」

アリス「高いところに行きたいから」

アリス「ふふふ。高名な登山家の方みたいですよね。そこに山があるから登る、と同じような感じでしょうか」

アリス「ですが、その回答に納得できなかった、その方はさらに祖父に対して、理由を聞いたそうです。最初はあまり話してくれませんでしたが、何度も聞いていくうちに、少しずつ語ってくれるようになりました」

アリス「祖父が子供の頃、家は貧乏で食べるものがほとんどなかった時代。栄養失調のためか、身長がほとんど伸びなかったそうです」

アリス「同じ年代の人たちと比べても頭一つ分以上、低いことに対してコンプレックスを抱いていたみたいです」

アリス「いつも見下ろされることが嫌で、人と一緒にいることを極力、避けていそうですよ」

アリス「ですが、ふと公園に立ち寄ったときのことです。祖父はあるものを目にしました。……それはジャングルジムです」

アリス「ふふ。その当時は珍しいものじゃなかったらしいですよ。今は、危ないという理由で撤去されているところが多くて、探すのが難しいらしいですが」

アリス「すいません、話が逸れましたね」

アリス「その祖父がジャングルジムを見て、何気なく登ってみたそうです」

アリス「するとそこには、今まで見たことがない風景が広がっていた……」

アリス「いつもは見上げていた自分が、世界を見下ろしている。周りにいた子供たちも、ジャングルジムの頂上に上った自分を見上げていたそうです」

アリス「そこで、こう思ったそうです。自分の身長が低いなら、高いところに登ればいい」

アリス「ふふ。なかなか面白い考えをする方ですよね。ですが、本人にとっては、まさしく世界が変わるほどの発見だったようですね」

アリス「そこからは色々な高い場所を登ることが趣味になったらしいです」

アリス「学校や建物の壁、鉄塔なんかも毎日通っては登っていたそうです」

アリス「色々なところに上るうちに、自分の身長が低いというコンプレックスは消えていたそうです。というより、悩む暇がないほど、登ることに没頭していたということですね」

アリス「人の身長は大きくて、20センチ程度の差です。ですが、建物や建物に登れば、数メートルですからね。鉄塔だと10メートルを超します。20センチの差なんて気にもならないでしょう」

アリス「私は、実に素晴らしい考え方だと思います。人には何かしら、コンプレックスがあります。ですが、それを悩むのではなく、考え方を変えることで乗り越えていく。なかなか難しいことだとは思いますが、素敵だと思いませんか?」

アリス「その方も、祖父の話を聞いてものの見方が変わったそうですよ」

アリス「その話を聞いてからは、祖父についていくようになったらしいです」

アリス「ただ、その方はロッククライミングよりも登山のほうにハマったようですが」

アリス「……そんな中、祖父が亡くなりました。老衰で満足そうな表情だったそうですよ」

アリス「祖父が亡くなったときに、その方にある夢が出来たそうです」

アリス「それは世界一の山、エベレストに上ることです」

アリス「そして、エベレストの頂上に祖父の遺灰を埋めるのだそうです」

アリス「世界一高い場所に、祖父を連れて行くのだと嬉しそうに語っていましたよ」

アリス「どうでしょう? 今回は不思議な話ではありませんでしたが、楽しめていただけたでしょうか?」

アリス「世の中にはどうやっても解決できない悩みが存在します。ですが、考え方や夢中になるものがあれば、乗り越えられる、気にならなくなるという教訓になるような話じゃないでしょうか」

アリス「もし、あなたにも何か悩みがあるとするのなら、大胆に考え方を変えてみてはいかがでしょう」

アリス「これで、今回のお話は終わりです」

アリス「それではまたのお越しをお待ちしております」

終わり。

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