【声劇台本】したきりすずめ

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
下桐 雲雀(したきり ひばり)
亮二(りょうじ)
真(まこと)
その他

■台本

美容院。

髪を切っている雲雀。

雲雀「つまり、小さなつづらを選んだとしても意味がなかったんですよ」

女性1「えー? 舌切り雀って、そんな話だったっけ?」

雲雀が手を止める。

雲雀「はい、これでどうですか?」

女性1「うん。バッチリ! やっぱり、雲雀くんに担当を移してよかった」

雲雀「ははは。ありがとうございます。それじゃ、仕上げに入りますね」

ドライヤーを使い始める雲雀。

女性1「そういえば、雲雀くんの名前って、本名なの?」

雲雀「え? どうしてですか?」

女性1「だって、雲雀くんって、どう見ても日本人じゃないよね? それなのに、雲雀って、日本人でも珍しい名前なんだもん。芸名か、なにか?」

雲雀「ははは。どうでしょう?」

女性1「なんか、雰囲気も気品があるっていうか、特別な感じだし。もしかして、どこかの国の王子様、だったりして?」

雲雀「秘密です」

女性1「えー、その言い方、気になる」

雲雀「ふふふ」

亮二「おい、下桐! タオル切れてるぞ! 洗って、畳んでおけって言っただろ!」

雲雀「ああ、すみません」

亮二「早く、裏に行って、やってこい!」

雲雀「ですが、今、お客さんの……」

亮二「あとは俺がやる。いいから行け!」

雲雀「……はい。それじゃ、お願いします」

雲雀が行こうとしたときに、亮二が足を引っかける。

雲雀「あっ!」

派手に転ぶ、雲雀。

亮二「はは。情けねえ、転び方」

女性1「雲雀くん、大丈夫?」

雲雀「ええ。大丈夫です」

立ち上がり、歩いていく雲雀。

亮二「ワックスか何か、付けます?」

女性1「あ、もういいです」

女性1が立ち上がる。

亮二「ちっ……」

その時、店のドアが開き、女性2が入ってくる。

女性2「あの、予約入れてたんですけど。雲雀くんいますか?」

亮二「あー、あいつ、今、ちょっと手が離せないんですよ」

女性2「でも、予約してたんですけど」

亮二「そうなんですか。ホント、ダメな奴ですね。お客様との約束も守れないなんて。最低ですよ。良かったら、俺、今、手が空いてるので担当させていただきますよ?」

女性2「……いや、その……雲雀くんの手が空くのを待ちます」

亮二「一時間以上、かかると思いますよ」

雲雀「お待たせしました、お客様。どうぞ」

女性2「あ、雲雀くん」

亮二「な、お前! タオルはどうした?」

雲雀「真さんがやってくれるって言ってくれて」

亮二「……ちっ!」

ズカズカと歩いていく亮二。

場面転換。

亮二「真さん! あいつを甘やかさないでくださいよ!」

真「優先すべきはお客様だろ? それに、一緒に働く仲間じゃないか。もっと仲良くしろって」

亮二「……あんな奴、仲間じゃないっすよ。俺から客取りやがって! ちょっと顔が良いからって調子に乗りすぎですよ!」

真「……そう思ってるなら、まだまだだな」

亮二「どういうことっすか?」

真「とにかく、もう少し優しくしてやれ。一人で外国に来て働くって、大変だと思うぞ」

亮二「けっ! さっさと、自分の国に帰れってんだ!」

真「意地悪っていうのは、自分に返ってくるもんだぞ。大体……」

亮二「そういう説教は止めてもらえますか」

場面転換。

ガンとゴミ箱を蹴る亮二。

亮二「あー、くそ! 面白くねえ。あんな奴、消えちまえばいいのに……。あ、そうだ!」

ポケットから携帯を出し、操作する亮二。

コール音。

亮二「あ、もしもし?」

場面転換。

ドアが開き、亮二が入ってくる。

亮二「ちーっす。って、あれ? 真さん、どうしたんっすか? 朝から青い顔して」

真「……雲雀が」

亮二「ん? 下桐がどうかしたんっすか?」

真「なんか、ヤバそうなやつらに連れていかれたらしい」

亮二「あー。いつかこうなるとは思ったんっすよね。別にいいじゃないっすか。あんな問題児、いなくなって清々したっすよ」

真「……俺、ちょっと行って来る。店長には早退したって言っておいてくれ」

亮二「あ、真さん……」

ドアを開けて出ていく真。

亮二「あーあ、行っちまったよ。どうせなら、真さんもそのまま消えちまえばいいのにな」

場面転換。

亮二「ちょ! 真さん! 独立って、どういうことっすか!?」

真「いや、それが……さ。雲雀のやつ、どこかの国の王族だったみたいなんだよ。なんか、お忍びで日本に来て働いてたらしい。けど、タレコミでバレたらしくて、連れ戻されたんだって」

亮二「……なんすか、その嘘くさい話」

真「俺もそう思ったんだよ。けど、あの豪邸を見たら、信じるしかないよな」

亮二「……」

真「あいつに会いに行ったらさ、お土産につづらを2つ出されたんだ」

亮二「つづら?」

真「大きいのと、小さいの。どっちか選べって、言われて……で、。小さいのを選んだ」

亮二「……で、その中に入っていたのが、新築の美容室とその権利書だったんすか」

真「ああ。せっかく、雲雀からもらったチャンスだから、やってみようって思ったんだ」

亮二「あいつが……王族? 嘘だろ」

真「そうだ、お店の皆にはお世話になったから、お礼がしたいって言ってな」

亮二「あいつ、今、どこにいるんっすか?」

場面転換。

亮二「ま、マジか……」

雲雀「真さんも同じような顔してましたよ。……すみません。黙っていて」

亮二「い、いや。別に気にしてない……してませんよ」

雲雀「先輩にもお世話になりましたからね」

パチンと指を鳴らす。

護衛「はっ……かしこまりました」

護衛がドン、ドンと二つつづらを置く。

雲雀「舌切り雀。……僕が日本で一番最初に読んだ本で、一番好きなお話です」

亮二「つづら……」

雲雀「ええ。大きい方と小さい方、どちらかプレゼントしますよ」

亮二「ふ、二つともくれっていうのは?」

雲雀「あはははは! 先輩、面白いこと言いますね。けど……」

護衛「通ると思っているのか?」

亮二「で、ですよね……。じゃあ、大きい方……いや! 小さい方で」

雲雀「どうぞ。持って帰ってください」

亮二がつづらを持って出ていく。

護衛「……良かったんですか?」

雲雀「僕は優しい人間だからね。それに、まさか2つとも、なんて面白いことを言った、ご褒美ってことかな」

護衛「……」

雲雀「……舌切り雀の話ではさ、お世話になったおじいさんに、大きいつづらと小さいつづらを選ばせたけど、きっと、あれはあんまり意味はなかったと思うんだ」

護衛「と言いますと?」

雲雀「だってさ、お世話になったおじいさんにお礼をするんだよ? お礼の品を変えると思う?」

護衛「……ということは、つづらの中身は」

雲雀「うん。きっと同じものが入ってたんだと思う。どっちを選んでも、同じ量の財宝が入ってたんじゃないかな。まあ、雀はおじいさんが小さい方を選ぶって知ってたかかもしれないけどね」

護衛「……では、その後の……」

雲雀「うん。意地悪したお婆さんが来た時も、同じだね」

場面転換。

亮二が机につづらを置く。

亮二「よし! 小さい方を選んだぞ。これで、俺も独立して……」

カパッとつづらを開けると、シャーと蛇の鳴く声が響く。

亮二「え? 蛇? なんで? 小さい方を選んだのに!」

場面転換。

雲雀「大体さ、意地悪した相手に、財宝なんて渡すわけないよね? おばあさんは、なんで貰えると思ったんだろ?」

護衛「……確かに」

雲雀「舌切り雀の教訓は、欲を出したら痛い目を見る、じゃなくて、自分の行いは返って来る。因果応報なんじゃないかな」

場面転換。

亮二「なんでだよ! くそ、来るな! 来るなー!」

シャーっと蛇の鳴く声。そして、ガブっと噛まれる音。

亮二「ぎゃーーー!」

終わり。

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