【声劇台本】寝苦しい夜
- 2021.04.25
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
明(あきら)
忍(しのぶ)
その他
■台本
大学の教室内。
生徒たちの話声などでざわざわしている。
明「……ってわけで、寝不足なんだよ」
忍「ふーん。それって、いつから?」
明「三日前。地元で有名な、穴場で最強の心霊スポットに行ってからだな」
忍「完璧に、連れ帰ったわね、それ」
明「だよなー。俺、霊感ないから大丈夫だって思ったのに……」
忍「で? 寝苦しいって、どんな感じ?」
明「なんていうかな、こう、ずっしり重い感じ? 朝起きたら、すっげー疲れてるんだよ」
忍「姿とか、声とかは?」
明「見えないし、聞こえない」
忍「気のせいってことはないの?」
明「三日連続でか? それまでは、毎日、快眠だったんだぞ」
忍「……ご愁傷様」
明「忍―、見捨てないでくれよ。なんとかしてくれ」
忍「はあ……。明、あんたねー、不用意にそんなところに行くのが悪いのよ」
明「ううー。もう行かないって誓うから!」
忍「私、別に霊能力者とかじゃないし、お祓いとかできないわよ」
明「でも、忍は霊感が強くて、今までも色々幽霊系のことは、対処してきたんだろ?」
忍「まあ……それなりにね」
明「だったら、俺にも頼む!」
忍「……しょうがないわね。色々、対策立ててあげるから、ちょっと待ってなさい」
明「サンキュー!」
場面転換。
大学の食堂。
忍「はい。まずは、お札」
明「お! マジで! これがあれば、怖い者なしだ!」
忍「ちょっと待ちなさい! 私は専門家じゃないの。あくまで、気休め程度のお札だから、過信しちゃダメよ」
明「そ、そうなのか……」
忍「とにかく、そのお札をベッドの近くに貼って置いて。それから、窓のカギを開けてから寝て」
明「え? 窓のカギを? なんで?」
忍「お札を部屋に貼った時に、幽霊が家から出ようと思っても出られないでしょ」
明「けど、幽霊なんだから、すり抜けとかできるだろ」
忍「あのね、幽霊にも色々いるの。人間の時の感覚が残っていて、本来、すり抜けられるはずなのに、思い込みですり抜けられないとかあるのよ」
明「めんどくせー」
忍「そういうものだと思って諦めなさい」
明「けど、窓を開けとくって、防犯的にどうなんだ?」
忍「ああ、開けなくていいの。カギさえ開けておいてもらえれば」
明「そうなんだ? けどなぁ……」
忍「大丈夫よ。男のあんたを狙うような人なんて、滅多にいないって」
明「ま、幽霊がいなくなるまでの我慢か」
忍「そうよ。で、最後に、これも渡しておくわ」
明「ん? なんだこれ?」
忍「睡眠導入剤」
明「ええ? 睡眠薬って、まずいんじゃないか? 素人が勝手に飲んだりしたら」
忍「だから、睡眠薬じゃなくて睡眠導入剤! 一時的な不眠症に使用するものよ。睡眠薬ほど強くないから安心して」
明「あ、ああ。わかった、けど……。なんでこれが必要なんだ?」
忍「だって、眠れないんでしょ?」
明「そうだけど……お札貼って終わりなら、別にこれはいらないだろ」
忍「だーかーら、お札は気休め! 幽霊がすぐにいなくなるかわからないんだから、その間は強引に寝るしかないじゃない」
明「……そっか。まあ、やってみるよ」
忍「さっそく、今日試してみて。で、明日、結果を教えてちょうだい」
明「わかった。ありがとな」
場面転換。
明の部屋。
明「さてと、そろそろ寝るかな。……えっと、お札は壁に貼ったし、窓のカギは開けたし、最後に睡眠導入剤を飲んでっと……」
場面転換。
朝。スズメが鳴く声。
明「うーん……」
場面転換。
大学の教室。
明「忍、試してみたよ」
忍「ど、どうだった?」
明「うーん。まあ、寝れたは寝れたよ。けど、幽霊は出て行ってないみたいだ」
忍「どうして?」
明「体がなんか重いんだよ。なんか、圧迫されてた感じ」
忍「そっか……。じゃあ、長期戦だね」
明「ああ。どうしてもダメだったら、お祓い行くわ。……そのときは金貸して」
忍「……はあ。はいはい」
場面転換。
大学の教室。
明「忍、ヤバい……」
忍「ど、どうしたの? なんかあった?」
明「レベルアップしてる」
忍「どういうこと?」
明「ベッドに長い髪の毛があった。それに、なんか、温かいんだよ。絶対、布団の中に入って来てる!」
忍「あー、髪か……」
明「やっぱ、髪はマズイのか?」
忍「う、ううん。そういうのじゃなくって……。とにかく、そこまで心配しなくていいと思う」
明「そ、そうなのか?」
場面転換。
明の部屋。
ベッドの上で寝返りを打つ明。
明「……なんか寝れないな。……あ、睡眠導入剤、飲んでないな」
その時、カラカラと静かに窓が開く音。
明(N)「え? ……まさか、幽霊来た? ヤバいヤバい、超怖い!」
トンと床に降りる音。
明(N)「うわ、入ってきた!」
ゆっくりと足音が近づいてくる。
明(N)「来るな! 来るな! 来るな!」
布団の中に誰かが入ってくる。
明(N)「うわーうわー! 入ってきた! 布団の中に入ってきたよ!」
忍「明……。はあはあ……。大好き!」
明(N)「うわー! 抱き着かれたー……って、あれ?」
ガバッと起きる明。
そして、パチリという、電気をつける音。
忍「あっ!」
明「……忍?」
忍「なんで、起きてるの?」
明「睡眠導入剤、飲み忘れたんだよ」
忍「ええ! ちょっと、何してんのよ!」
明「いや、そりゃこっちの台詞。何してんだ、お前?」
忍「ああ、いや、これは……その……明が幽霊に睡眠を妨害されてないか、心配で……」
明「……幽霊じゃなくて、お前に妨害されたけどな。……って、いうか、お前の仕業だったのか―!」
忍「きゃー! ごめんなさいー!」
幽霊「よかった。……バレてないみたいね。それじゃ、これからも、よろしくね。明くん。ふふふ……」
終わり。
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