【声劇台本】悲報ニュースサイト
- 2021.04.26
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー
■キャスト
仁(じん)
壱成(いっせい)
渡(わたる)
■台本
橋の下の河川敷。
川が流れる音。
電車がゴーっと音を立てて通り過ぎる。
仁「……あいつ、遅ぇな」
壱成「なあ、仁。お前さ、悲報ニュースサイトって知ってる?」
仁「なに、壱成って、ニュースサイトなんか見てんの? 真面目だな」
壱成「いや、違う違う。普通のニュースサイトじゃなくてさー、なんか都市伝説系のサイト」
仁「どゆこと?」
壱成「なんかさー、このサイトに名前が載ると、書いてある日付に死ぬんだって」
仁「は? なにそれ?」
壱成「仁、お前の名前出たらどうする?」
仁「けっ、嘘くせー」
その時、渡が走ってくる。
渡「はあ、はあ、はあ……」
仁「渡くーん。随分と遅かったねぇ。時間を守るのは人として当然のことだよー?」
渡「え? で、でも、今、5時になったばっかりだよ?」
仁「あのさー、待ち合わせって、5分前行動が当然なの。その、腕時計の時間、5分早めとけよ」
渡「う、うん。わかった」
仁「よし、じゃあ、今日の分は、1分遅刻につき、罰金、千円! だから5千円な」
壱成「あははは。仁は鬼だなー」
渡「ぼ、僕。そんなに持ってない……」
仁「あん? じゃあ、いくらあるんだよ?」
渡「3、3千円……」
仁「そっかぁ。じゃあ、仕方ないな」
渡「……」
仁「1発殴って、100円。体で払っていただきましょー」
渡「え?」
壱成「きゃはは! 仁、20発殴るの大変そうだから手伝ってやるよ」
仁「おお! さすが親友。助かる―」
渡「……」
場面転換。
川が流れる音。
渡「う、うう……」
仁「痛って。拳の皮、剥けちったよ」
壱成「いやいや。渡の顔面見てみろよ。皮どころ話じゃないだろー。あははは」
渡「ううう……」
壱成「おい、渡。俺たちが憎いか?」
渡「……」
壱成「じゃあさ、この、悲報ニュースサイトに投稿してみれば?」
仁「なに? さっきのサイトの話?」
壱成「そうそう。このサイトって、自分の名前を書き込めば、一人だけ他の人の名前を書き込めるらしいんだよ」
仁「なに? それって、自分の命と引き換えに相手を道連れにするってこと?」
壱成「そうそう。そんな感じ」
仁「へー。じゃあ、渡くん。やってみれば?」
渡「ひっ!」
壱成「ま、渡にはそんな度胸ないか」
渡「ううう……」
場面転換。
橋の下の河川敷。川が流れる音。
電車がゴーっと音を立てて通り過ぎる。
渡が走ってくる。
渡「はあ、はあ、はあ……」
仁「おお! 5分前。やればできるじゃん、渡くーん」
渡「あ、あの……お願い。今日は許して」
仁「ああ?」
渡「お、弟が行方不明なんだ。探さないと」
壱成「あららら。弟思いのお兄ちゃんだね」
仁「うう。俺は感動した! その兄弟愛に免じて、5ラウンドスパーリングで、今日は許してやる」
渡「……え?」
仁「15分、俺の攻撃を耐えきったら、行っていいぞ」
渡「そ、そんな……」
場面転換。
川が流れる音。
渡がドサっと倒れる。
仁「はあ、はあ、はあ……。きっつー。5分殴るのも疲れるなー。おい、渡くん。飽きたし、もう行っていいよー」
渡「……」
仁「渡? もう行っていいって言ってるだろ。早く行けよ」
渡「……」
壱成「お、おい、仁。渡、息してねえぞ」
仁「え? 嘘だろ? 渡? おい、渡!」
渡「……」
壱成「おい、さすがにヤバいって」
仁「……いやいやいや。嘘だろ?」
壱成「だ、大丈夫だ。未成年だから、たぶん、捕まらないって」
仁「けど、前科つくんだろ? 嫌だよ、こんなやつのせいで……」
壱成「どうする? 事故に見せかけるか?」
仁「川に投げ込もう。確か、水死だと膨らむらしいから、殴ったのもバレないと思う」
壱成「上手くいけば事故に出来るかもな」
仁「よし……。あ、その前に……」
カチャカチャと腕時計を外す音。
壱成「何してんだよ?」
仁「どうせだから、こいつの腕時計もらう」
壱成「ったく、お前は……。ほら、早く投げるぞ」
仁「おう」
ドボンと川に渡を投げる音。
場面転換。
ピンポーンというインターフォンの音。
ガチャリとドアが開く音。
壱成「あ……仁か」
仁「どうしたんだよ? 学校休んで」
壱成「ヤバい、ヤバいって!」
仁「あん? 渡のことは自殺ってニュースでやってたじゃん。弟が死んだショックで身投げしたんだろう、ってさ」
壱成「違うって! この、悲報ニュースサイト。見てくれ」
仁「お前さ、まだ、あの嘘くさいサイト見てんのか?」
壱成「いいから見ろって! ここ! 渡の名前が書いてあるし、日付も合ってる!」
仁「いや、ぐ、偶然だろ?」
壱成「俺もそう思うだけどさ。……その下、見てくれよ」
仁「その下?」
壱成「俺の名前も書いてある。日付は今日」
仁「それで、学校休んで家に閉じこもってたのか」
壱成「仁。すまん。今日は俺んち泊まってくんね?」
仁「ああ、いいよ」
場面転換。
カチカチとゲームの音。
仁「……渡がサイトに書いたのかな? 壱成の名前」
壱成「なんで俺なんだよ……。仁のほうがイジメてたじゃん」
仁「ま、まあ、とにかく、今日を乗り切ろうぜ。そしたら安心だからさ」
壱成「そ、そうだよな」
仁「それより、腹減ったな。俺、何か買ってくるよ」
壱成「すまんな」
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
仁「買ってきたぞ。総菜が安かった」
壱成「……仁。お、お前の名前もサイトに載ってる。今日の日付で」
仁「はあ!? なんでだよ? 一人だけだろ? 書けるのって。渡がお前の名前書いて……じゃあ、俺のは誰が書いたんだよ?」
壱成「し、知らねえよ」
仁「と、とにかくさ、今は10時だろ? あと2時間乗り切れば勝ちだ。余裕だって」
壱成「そ、そうだな。余裕余裕」
仁「ああ、余裕だよ。じゃあ、飯食おうぜ。総菜暖めるから、レンジ貸してくれ」
場面転換。
チンとレンジが鳴る。
仁「アチチ。温める前に切れば良かった」
ザクっと包丁でカツを切る音。
壱成「え? お前、何やってんの?」
仁「何って、カツが一枚だから半分に切ってんだけど」
壱成「……お前、包丁まで買ったの?」
仁「そんなわけねえって。お前のだよ」
壱成「いや、俺んちに包丁なんてねえよ」
仁「え?」
仁が振り向くと同時に、ズバッと切れる音。
壱成「……あ。ああ……」
仁「ば、馬鹿! お前、なんで後ろにいるんだよ!」
壱成「ああああー!」
ブシュ―と血が噴き出る音。
そして、壱成が倒れる。
仁「あ、ああ……。い、壱成? ……し、死んでる? 嘘だろ……。まさか、あのサイト、やっぱり本物……。うわああああ!」
仁が慌ててドアを開けて外に出る。
場面転換。
路地裏でガタガタと震えている仁。
仁「ヤべぇ! ヤベぇ! クソ! どうなってんだよ! ……今、何時だ? 今日が過ぎれば大丈夫なはずだ」
ガサガサとポケットを漁る仁。
仁「くそ! スマホ、壱成の家に置きっぱなしだ! 取りに戻るか? いや、危険だな……。何かないか……」
ガサガサとポケットを漁る。
仁「あ、渡から取った腕時計があった。えっと、今何時だ?」
腕時計を見る仁。
仁「は、ははははっ。11時59分。……あと少しで今日、終わりじゃん!」
仁「5、4、3、2、1、0! やったー! 俺の勝ちだー!」
浮かれて走り出す仁。
仁「あはははははは! あんなサイトにビビッて損したぜ」
車のブレーキ音。
仁「え?」
そして、ドンと仁がはねられる音。
仁「あがっ! あがが……。ど、どうし……て? 今日は過ぎてる……は……ず……なの……に……がはっ! うう……」
終わり。
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