【声劇台本】マニアのプライド

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
涼(りょう) 小学生
美鈴(みすず) 小学生
母親
店長

■台本

涼の部屋。

涼「ごほっ、ごほっ」

母親「どう? 学校、行けそう?」

涼「うーん……。止めとく」

母親「涼が学校休むなんて、珍しいわね。じゃあ、休むって連絡しておくわね」

涼「うん。ごめんね」

ドアを開けて、母親が部屋から出ていく。

涼「今は……7時45分。母さんが家を出るのは、9時45分。あと、2時間か……。寝ないようにしないと。寝坊したら最悪だもんね」

場面転換。

母親の声がドアの外から聞こえてくる。

母親「それじゃ、お母さん、パート行くから、ちゃんと寝てるのよ」

涼「わかった……」

ドアがバタンと閉まり、鍵を掛ける音が聞こえる。

ガバッと涼が起き上がる。

涼「9時45分。すぐに準備して行かないと」

場面転換。

道を走る涼。

涼「……開店の10時まであと2分。なんとか、間に合うかな……。あ、もう開いてる! もう! そこの店長は、ホント時間にいい加減なんだから!」

ウィーンと自動ドアが開き、涼がお店の中に入る。

そのままカウンターまで走る。

涼「あの! 今日、発売の限定のガオレインのフィギアください!」

店長「え? ガオレイン? ……ああ、あれか。あったかな?」

涼「ええ! 今日、発売日なんだから、あるはずだよ!」

店長「いやー。あんなの売れると思わなかったからさー。仕入れてないかもしれないな」

涼「そんな!」

ガサガサと店長が戸棚を漁る。

店長「ああ、あったあった。限定品だから、念のため1つだけ仕入れたんだった」

涼「ほ……。よかった。じゃあ、それください」

店長「はいはい。いやいや、よかったよ。正直、売れ残るかなって心配してたんだ」

そのとき、ガーッと自動ドアが開く。

美鈴「ちょっと待ちなさい!」

涼「え?」

美鈴「そのフィギア、私が買うわ!」

涼「な、何言ってるんだよ! 僕の方が先に頼んだんだ」

美鈴「2万円出すわ」

涼「え?」

美鈴「つまり、倍の金額を出すってことよ」

涼「そ、そんなのダメだよ! 僕の方が先なんだから、僕が買うんだ」

美鈴「誰に売るかは、店長の意思次第よ。そうよね?」

店長「あ、うん……。まあ、商売って売りたい側と買いたい側の合意があっての契約だからね」

涼「待ってよ! 僕は今日のために、お小遣いを4ヶ月分も貯めたんだ!」

美鈴「どうやってお金を工面したのかなんて、関係ないわ。今は、どのくらい出せるか、って話よ」

涼「うう……」

美鈴が歩み寄って、カウンターの前に来る。

美鈴「さあ、私に売りなさい」

店長「あ、ああ……」

涼「……相応しくないよ」

美鈴「……なんですって?」

涼「お前なんかが、ガオレインのフィギアを手に入れる資格なんてないよ!」

美鈴「……面白いこと言うわね。なんで、私に資格がないのかしら?」

涼「横入りする奴なんか、正義のガオレインを持つ資格なんてないよ!」

美鈴「じゃあ、あなたには持つ資格があるっていうのかしら?」

涼「当たり前だよ!」

美鈴「ふーん。それをどうやって証明するっていうのよ?」

涼「僕はガオレインのことなら、何でも知ってるから」

美鈴「……それなら、勝負して決めるっていうのは、どうかしら?」

涼「勝負?」

美鈴「お互い、クイズを出し合って、答えられなかった方が負け。で、勝った方がフィギアを買える。どうかしら?」

涼「う、うん。いいよ」

美鈴「それじゃ……」

店長「ちょ、ちょっとお店の中で、変なこと始めないでくれよ」

美鈴「……それもそうね。表へ出なさい」

涼「望むところだ!」

二人が歩いて外へと出る。

美鈴「それじゃ、私から行きますわよ。ガオレインレッド役の人の名前、年齢、趣味、家族構成、経歴を答えて」

涼「瀬戸川卓史(せとがわ たくふみ)、34歳。趣味はアユ釣り。女優の仙田川文香さんと4年前に結婚して、今、2歳の女の子の子供がいる。学校は、聖将学園を卒業してから、帝制プロダクションに、オーディションで受けて入所している」

美鈴「……ふん。なかなかやるじゃない」

涼「それじゃ、今度は僕の番だね。じゃあ、ガオレインが変身した後のポーズをしてみてよ」

美鈴「あら、そんな簡単な問題でいいのかしら? こんなの余裕よ」

バッ! とポージングを取る美鈴。

美鈴「こうよ!」

涼「ぶぶー! 外れ!」

美鈴「な、なんでよ!」

涼「右足。あと、5センチ内側に入ってないとダメだ」

美鈴「そ、そんな……」

涼「ふふ。僕の価値みたいだね。それじゃ、フィギアは僕が……」

美鈴「ふふふ。なーんてね。そういうと思ったわ」

涼「……どういうこと?」

美鈴「第132話」

涼「……132話? 132話って言えば、伝説の……ああっ!」

美鈴「気づいたようね。132話は瀬戸川卓史が怪我の為、唯一、変身後の中の人は別の人が演じているのよ」

涼「……それで、足の角度が違うって、炎上してる……」

美鈴「そういうこと」

涼「君も、なかなかやるね」

美鈴「当然よ。それじゃ、今度は私の番ね」

涼「ごくり……」

美鈴「第3問、ガオレインは……」

場面転換。

涼「はあ、はあ、はあ……」

美鈴「はあ、はあ、はあ……」

涼「それじゃ、57問め。ガオレインの」

美鈴「ちょっとお待ちになって」

涼「……なに?」

美鈴「お互い、ガオレイン愛が強いってことは十分にわかったわ」

涼「う、うん……」

美鈴「だから、二人で買うの」

涼「二人で?」

美鈴「そう。お金を二人で出し合って買うの」

涼「でも、それだとフィギアは、どうするの?」

美鈴「交代で持つの。一週間ずつ、家に持って帰って、フィギアを愛でるの。で、1週間たったら、相手に渡す。そして、1週間たったらまた、返す。これでどうかしら?」

涼「うん。わかった。それでいいよ!」

美鈴「ふふ。決まりね。それじゃ、フィギアの持ち主の相棒して、これからもよろしくね」

涼「うん、よろしく」

場面転換。

ガーッと自動ドアが開き、涼と美鈴が店に入って来る。

美鈴「フィギアを出してくれるかしら? 二人で買うことにしたわ」

店長「あー、えっと……売れちゃった」

涼「え?」

店長「あの後、すぐ、サラリーマン風の人が来て、3万出すからって言って、勝って行ったんだ」

美鈴・涼「ええーー! そんなぁ!」

終わり。

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