【声劇台本】待ちぼうけ
- 2021.06.03
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
翔(しょう)
沙紀(さき)
■台本
翔(N)「……うう。緊張してきたな。もうすぐ約束の時間だ。来てくれるかな? ……いや、無理だよな。いきなり、見知らぬ男から、デートに誘われて、来てくれるわけないよな……。いや、でも、結構、感触は良かったし、諦めるのは早いか? けど……」
そのとき、沙紀が走って来る。
沙紀「翔?」
翔「え? あ、沙紀……」
翔(N)「げっ! よりによって沙紀と遭遇かよ……。早く追い払わないと」
沙紀「いつもと雰囲気違うね。ビックリしたよ」
翔「あ、ああ。ちょっとな。たまにはイメチェンもいいかなってさ」
沙紀「うん。いいんじゃないかな」
翔「それより、お前も今日は普通の格好なんだな。いつも休日はコスプレとかしてるだろ」
沙紀「あのねえ。イベントは先週までだったの。イベントがないのに、コスプレして、町に出て来るわけないでしょ」
翔「まあ、そりゃそっか。けどさ、改めて見ると……」
沙紀「な、なによ?」
翔「その格好、似合ってるな。普段から、普通の格好してれば、モテるんじゃないのか?」
沙紀「なっ! なによ、あんたが急に褒めてくるなんて……。あんた、最近、変じゃない? なんか、あったの?」
翔「いや、別に……」
翔(N)「って、やばい! あんまり悠長に話しられないな。沙紀には悪いが、早くこの場から立ち去ってもらわないと」
沙紀「で? 今日は何するの?」
翔「え? 俺? えっと……映画でも見ようかなって思って」
沙紀「映画かぁ……」
翔「それより、沙紀はどうなんだよ? 用事とかあるんじゃないのか?」
沙紀「へ? ううん。別に用事とかはないけど」
翔「そ、そうなのか……」
翔(N)「くそ、単に街中をブラブラしに来てただけか。……となると、どうしようかな。どっか行けなんて言ったら、勘繰られるだろうし、かといって、このままだとヤバいし……あ、そうだ!」
翔「なあ、沙紀。喉乾かないか?」
沙紀「え? うん。ちょっと乾いたかな」
翔「俺、金払うからさ、路地裏の店で飲み物買って来てくれないか?」
沙紀「へ? それなら、あっちの喫茶店に入ろうよ」
翔「いや、ごめん。俺、ここから動けなくってさ」
沙紀「え? なんで?」
翔「まあ、いろいろあるんだよ」
沙紀「ふーん。そうなんだ? わかった。じゃあ、買ってくるね」
翔「すまんな」
沙紀が歩いて行く。
翔(N)「ふう。これでよし、と。あとはあの人が来てくれれば、すぐに出発しよう。沙紀には二人分飲んでくれって、メールをすればいいだろう」
場面転換。
沙紀「お待たせ。ごめんね。お店混んでてさ。時間かかっちゃった」
翔「……」
沙紀「どうかしたの?」
翔「あ、いや……なんでもない」
沙紀「いや、なんでもないって顔じゃないんだけど」
翔「あのさ、沙紀。例えばなんだけど、待ち合わせして、30分過ぎたとしたら、これはもう脈なしってことなのかな?」
沙紀「なによ、急に?」
翔「……」
沙紀「んー。そうね。まあ、場合によるかな。急用ってこともあるかもだけど、連絡ないなら、ドタキャンじゃないかな」
翔「でもさ、ほら、寝坊とか考えられないかな?」
沙紀「待ち合わせ時間によると思うけど、寝坊してる時点で、たいして重要じゃないって思われてるんじゃない?」
翔「うっ! そうだよな……」
沙紀「え? なになに? さっきからどうしたのよ? 今日のあんた、ちょっと変だよ?」
翔「……沙紀は、一目惚れってしたことあるか?」
沙紀「一目惚れ? んー。ないかな。私って、どっちかっていうと、徐々に相手を好きになってくタイプだからさ」
翔「俺さ……。初めて、一目惚れしたんだ」
沙紀「……え?」
翔「街中で、その人を見たとき、ものすごいショックを受けたんだ。……電流が走ったっていうのかな。気付いたら……恋に落ちてた」
沙紀「……」
翔「俺さ、ナンパなんてしたことなかったのに、思わず声をかけたんだ」
沙紀「それで……どうなったの?」
翔「その人はさ、急に声をかけたのに、嫌な顔一つしないでさ……。俺の話を聞いてくれたんだ」
沙紀「そ、そうなんだ……」
翔「話してみたらさ、すごく気も合ってさ。なんていうかな。初めて会ったのに、ずっと前から知り合いだったみたいな感じでさ」
沙紀「……」
翔「この人しかいないって思ったんだ。だから、デートに誘ってみたんだよ。そのときはさ、絶対に行くって言ってくれたんだ。嬉しそうに……言ってくれたんだよ……」
沙紀「でも、結局、当日は来てくれなかったってこと?」
翔「ああ……」
沙紀「そっか……。そういうことだったのか」
翔「……なにがだ?」
沙紀「その人にフラれたから、私でいいやってことなんだね」
翔「何の話をしてるんだ?」
沙紀「おかしいと思ったんだよね。急に翔がデートに誘ってくるなんてさ」
翔「え? デート? 俺が? お前に? いつ?」
沙紀「はああ!? 先週よ! 駅前で!」
翔「……先週? 駅前?」
沙紀「この期に及んでとぼける気? それなら、なんで、今日、ここで待ち合わせ場所に時間通り来てるのよ!」
翔「……あっ! もしかして、あの人、お前……だったのか?」
沙紀「……は?」
終わり。
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