【声劇台本】2番手のプライド
- 2021.06.10
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
ルーク
リオン
ボス
■台本
ルーク(N)「2番手。一般的に見れば、1位とあまり変わらず、凄いと思われるだろう。だが、こと強さに関してはこの感覚は当てはまらない。誰が言ったのか忘れたが、優勝以外は一回戦負けと同じだ、という言葉。まさしくその通りだ。ボクシングを例に考えてみるとわかりやすいかもしれない。その階級で一番強い人間がチャンピオン。2番目は世界ランキング1位になる。チャンピンと1位。これは本当に天と地の差がある。現に、チャンピオンの名前を知っている人は多いかもしれないが、世界ランキング1位の人間の名前はすぐに出てこないように。つまり、何が言いたいかというと、あくまで2番手というポジションは、一番強い奴の引き立て役にしかならないだろう」
場面転換。
リオン「ルーク。頼んだぞ。何とか、持ちこたえてくれ」
ルーク「ああ。わかってるさ。その代わり、しっかり修行してきてくれよ。リオン。お前の手に世界の命運がかかっているんだからな」
リオン「任せてくれ。必ず、今の何倍も強くなって帰って来る」
ルーク「待ってるからな、親友」
リオン「おう!」
ルーク(N)「2番手。決して、物語の主人公にはなれない。一番強いやつの引き立て役。時間稼ぎや、せいぜい、敵のボスの手下を何人か倒す程度の活躍。つまり、スポットライトなどはほとんど当たらない。じゃあ、何のために戦うのか? ……不思議なことに俺自身、その理由を知らない。まあ、知る必要はない。俺はただ、目の前の敵と戦うだけだ」
場面転換。
ボス「随分と舐められたものだな。その程度の力で、この私に勝てるとでも思っているのか?
ルーク「思ってないさ。だから、今、俺の親友がお前倒すための修行中だ」
ボス「ほお。私を倒すための……。なるほど。なら、貴様はそれまでの時間稼ぎということだな?」
ルーク「……」
ボス「いいだろう。少し、遊んでやろう」
ボスが指を鳴らすと、魔物が現れる。
魔物「キシャ―!」
ボス「まずはこいつと戦ってみろ。少しはいい勝負をしてくれよ?」
ルーク「くっ!」
魔物「グギャー!」
魔物が咆哮して、ルークに向かって来る。
ルーク「はあああ!」
魔物「グギャアア!」
ルークと魔物との戦い。
ルーク「てやああ!」
魔物「グガア!」
ルーク「はっ!」
魔物「ギャアアア!」
ルークの攻撃で、魔物が吹っ飛ぶ。
ルーク「ふう……」
ボス「ふふふふ。少しは楽しませてくれそうだな。……では、行くぞ!」
ルーク「はあああ!」
場面転換。
ボス「はあっ!」
ルーク「ぐあああ!」
ボスの攻撃により、ルークが吹き飛ぶ。
ボス「そろそろ諦めたらどうだ? お前、そいつに見捨てられたんだ。いくら待っても、来るはずはない」
ルーク「いや……。あいつは来る。そして、お前を倒してくれるはずだ」
ボス「……はあああ!」
ルーク「ぐあっ!」
ボスの攻撃で、再びルークが倒れる。
ルーク「ま、まだまだ……」
ボス「根性だけは褒めてやろう。だが、これで終わりだ!」
巨大な火の玉が、ルークに迫る。
ルーク「くそ……。こりゃ、死んだな。すまん、リオン。俺は……お前との約束を守れなかった……」
爆発音が響く。
ボス「……なっ! 今の攻撃を弾き返しただと?」
リオン「ふう。間一髪ってところかな」
ルーク「……リオン。遅いぞ」
リオン「すまん。ちょっと修行に戸惑ってな」
ルーク「修行はバッチリなんだろうな?」
リオン「ああ。後は俺に任せて、ルークは休んでてくれ」
ルーク「……そうさせてもらう」
場面転換
ルーク(N)「リオンが来るまでの時間稼ぎ。ある意味、本当の戦いの前の、前座。なんとか、ここまで辿り着いた。物語としては、ここからが本番だろう。だが、俺にとってはここで終わり。……二番手がやれることはここまでだ。なんのスポットライトも当たらない、地味なポジション。それでも、俺は強大な敵が現れれば、また同じように時間稼ぎのための戦いに身を投じるだろう。それが俺のプライドなのだから」
終わり。
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