【声劇台本】バレンタインデーにて

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
中山 尚樹(なかやま なおき)
真也(しんや)
藤咲(ふじさき

■台本

ガラガラと教室のドアを開き、尚樹が入って来る。

歩いて、自分の席に座り、机の中を漁る。

尚樹「……無いか」

真也「何期待してるんだよ」

尚樹「うおお! ビックリした! 真也、急に話しかけるなよ!」

真也「すまん、すまん。けど、尚樹。お前、今日、何回トイレ行ってんだよ」

尚樹「……別にいいだろ」

真也「緊張してんのか?」

尚樹「悪いかよ」

真也「いやいやいやいや! ないって! ないない! 無駄な緊張だって」

尚樹「うるせーな。そんなのわからねーだろ」

真也「じゃあ、去年は何個だよ?」

尚樹「……1個」

真也「どうせ、母親からだろ?」

尚樹「そういうお前は? お前だって、去年、貰ってるところなんて、見なかったぞ」

真也「ああ。そうだな。去年はゼロだ」

尚樹「ほら見ろ。人のこと言えねーじゃん」

真也「去年は去年だよ。今年は違うからな」

尚樹「なんでだよ?」

真也「見ろよ、ほら! 髪形、決まってるだろ?」

尚樹「あ、ホントだ! 自分でやったの?」

真也「いや、昨日、美容室に行った。で、風呂でも頭だけは洗わなかったんだよ」

尚樹「マジで! 美容室行ったの? くっそ! 考え付かなかった。その手があったか」

真也「どうせ、お前は、自分でやったんだろ? そのセット」

尚樹「……そうだよ」

真也「普段、寝ぐせついてるくらいの俺たちが、いきなりセットしようとしたって上手くいかねーって」

尚樹「……いや、ホントにそうなんだよ。1時間早起きしたんだけどさ、全然、うまくいかねーの。本の通りにやってんのにさ。おかげで、髪がベタベタになって、何回もシャワー浴びることになって、親に怒られたよ」

真也「わかるわかる。まさに去年の俺と同じだな。だから、俺は今年はちゃんとプロにやってもらおうって思いついたんだよ」

尚樹「いいなー。俺も、そうすればよかった」

真也「今日の為に、3か月くらい髪切らないで、調整してたからな」

尚樹「作戦勝ちだな」

真也「ってことで、今年は、5個は固いと見た。ま、お前は俺が貰うところを羨ましそうに見ているんだな」

尚樹「ふっふっふ。果たしてそうかな」

真也「な、なんだよ?」

尚樹「俺が、今日の為になんの策も考えてないとでも思ったのか?」

真也「お前も、何か準備してたのか?」

尚樹「ああ。もちろんだ」

真也「何したんだ?」

尚樹「実は……2ヵ月前から筋トレしてたんだよ」

真也「筋トレ! マジか! あー、その手があったか……」

尚樹「最初さ、腕立て、15回しかできなかったけど、今は30回できるからな」

真也「2倍か。すげーな」

尚樹「ほら、女子ってさ、たくましい男が好きっていうじゃん。だから、めっちゃ、頑張った」

真也「いや、でも、2ヶ月続けてるってすげーな。俺なら、ぜってー無理」

尚樹「目標があれば、やれるもんだよ。ほら、見て見て! 少し、力こぶができるようになったんだぜ」

真也「ホントだ。くそー、筋トレか。俺もやればよかったな」

尚樹「だから、俺、今日は自信あるんだよね」

真也「シャツのボタン、2番目まで外しておけば? ワイルドに見えるかも」

尚樹「そっか。そうだよな。そうしよう」

ボタンを外す尚樹。

尚樹「……ん?」

真也「どうした?」

尚樹「なあ、真也。藤咲さん、チラチラ、こっち見てないか?」

真也「……え? あ、ホントだ」

尚樹「本を読む合間にチラチラ見てるよな?」

真也「俺とお前、どっちかな?」

尚樹「あのさ、貰えなかったからって、不機嫌になったりするのは止めようぜ。恨みっこなしで、ちゃんと相手を祝うってことで」

真也「……わかった。約束だ」

尚樹「……それにしても、藤咲さん、地味に可愛いよな」

真也「ああ。いつも本読んでるから、暗いってイメージだけど、意外と可愛いよな」

尚樹「ほら、よく、ゲームのキャラでいう、眼鏡キャラっぽくない?」

真也「あー、わかる、わかる。眼鏡外したら美少女になるやつだろ?」

尚樹「そうそう、それそれ」

真也「俺さ、藤咲なら、全然、付き合える」

尚樹「俺も俺も。てかさ、そもそも、俺、ギャル系っていうか、軽いやつは好きじゃないんだよね」

真也「わかる! なんかさ、二股とかかけられそうで、怖いよな」

尚樹「俺! 真面目な人の方が好きだな!」

真也「……お前さ、今の台詞、わざと大きめの声で言っただろ? 藤咲に聞こえるようにさ」

尚樹「い、いや、そんなことねーって」

真也「ホントか? それならさ……俺! 毎月、10冊、本読むんだぜ!」

尚樹「ちょ、おまっ! それ、ズルいって」

真也「なにが?」

尚樹「いや、明らかに声が大きかったし、会話の流れと全然違ったしさ」

真也「そうか?」

尚樹「藤咲さんがいつも本読んでるからって、本好きアピールすんなよ。大体、お前が漫画以外の本を読んでるとこなんて、見たことねーぞ?」

真也「別に、漫画だって本だろ」

尚樹「いやいや、漫画と小説を一緒にすんなよ」

真也「それよりさ、告白までされたら、どうする?」

尚樹「え? そんなの付き合うに決まってんだろ」

真也「いや、そりゃそうだけどさ。デートとかどうすんの? 行く場所とか、知ってんの?」

尚樹「……ヤバい。知らない。あ、でも、昨日買った、雑誌にそういうの書いてたかも」

真也「ああ、髪形セットするために買ったやつか」

尚樹「そうそう。ああいう雑誌なら、そういうことも書いてるんじゃね?」

真也「……頼む、尚樹! その雑誌、後で貸してくれ!」

尚樹「ジュース1本な」

真也「おい! ぼったくりすぎだって!」

尚樹「いや、だって、あれ、500円くらいしたんだぞ」

真也「マジか。そういう雑誌って高いんだな」

尚樹「それとさ、今度の休みに古着屋行かね?」

真也「え? 古着屋? なんで?」

尚樹「……お前、デートに来ていく服、持ってんの?」

真也「……あ」

尚樹「だろ? さすがに、今持ってる服だと、デートで藤咲さんに恥をかかせちゃうからさ」

真也「確かに、痛Tはマズイよな」

尚樹「ってことで、さっそく、土曜日に行こうぜ」

真也「あー、くそ、美容院代、少し残しておけばよかった」

尚樹「まあ、お互い、金出し合って買って、その後は貸し借りとかしてもいいかもな」

真也「お前、天才かよ」

尚樹「彼女が出来ても、俺たちの友情はかわらないよな?」

真也「もちろんだ!」

尚樹「それにしても、チラチラこっち見てるけど、なかなか来ないな」

真也「あー、もしかしたら、教室だと言い辛いんじゃないか?」

尚樹「あー、確かに! 教室で告白とかハードル高いもんな」

真也「ここはさ、二人とも、一旦、廊下に出ないか? そういう優しさもポイント高いだろうし」

尚樹「そ、そうだな。出よう……」

真也「あ、ちょっと待て! 藤咲が立ち上がったぞ」

尚樹「お、お、お!」

真也「来た来た来た! やっぱり、こっちだ!」

藤咲「あ、あの……中山君」

尚樹「よしっ! 俺だ!」

真也「くっ!」

尚樹「それで何かな? あ、そうだ、教室だと言い辛いだろうから、一旦、廊下に出る?」

藤咲「ううん。いい」

尚樹「そ、そっか。……で? なにかな?」

藤咲「ズボンの……チャック開いてる」

尚樹「……へ?」

終わり。

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