【声劇台本】チェンジスキルで余裕の異世界生活

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■概要
人数:5人以上
時間:15分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
ショウ
エリザ
ロレンス
ローラ
その他

■台本

ショウ(N)「ニートで引きこもりの俺は、親に刺されて他界した。そこからは良くある話で、チートスキルをもらって異世界転生した。そして、俺が貰った、チートスキルは……」

場面転換。

街中を歩くショウ。

ショウ「さてと、誰にしようかな」

ローラ「ロレンス!」

ロレンス「ローラ!」

ショウ「ん?」

ローラ「無事でよかったわ。心配したんだから」

ロレンス「ごめん。でも、遠征も成功したからしばらくは街でゆっくりできそうだよ」

ローラ「そう。……よかった」

ショウ「……ふーん。ローラって人は、男の方に惚れてるみたいだな。……うん、あいつ、なかなかのイケメンだし、あいつにするか。えーと、ウィンドウを出して……ロレンス、ロレンスっと……あった」

ロレンス「……な、なあ、ローラ」

ローラ「なに?」

ショウ「チェンジ!」

ロレンス「うっ!」

ローラ「ロレンス? どうしたの?」

ショウ「なんでもないよ、ローラ。それより、俺と結婚してくれないか?」

ローラ「……ホント? 嬉しい!」

ショウ(N)「俺のチート能力はチェンジ。つまり他人と魂を入れ替えるというものだ。俺はチェンジする前の記憶と、入れ替わった方の記憶が継承される。つまり、入れ替わっても、そのままそいつの生活をするのに何不自由なくできるってわけだ。で、入れ替わられた方の相手は、今までの体の記憶が消え、元の俺の体の記憶で塗り替えられて、入れ替わられたことに気付かないらしい。このスキルがあれば、イケメンにチェンジすれば、ハーレムも作れるし、金持ちとチェンジすれば、贅沢な生活ができる。まあ、同じ体に二度は入れないって条件があるけど、戻るなんてことはないからな。まったく、問題ない。ふふ。我ながら、良いスキルを考え付いたものだ」

場面転換。

パチンと平手打ちの音。

ショウ「……ローラ?」

ローラ「遠征で変わっちゃったね。……そんな人じゃなかった。まるで、別人よ」

ショウ「……」

ローラ「ごめんなさい。結婚の話はなかったことにして」

ローラが走り去っていく。

ショウ「くそ、なんなんだよ。手っ取り早く、甘い結婚生活を楽しもうと思ったのになぁ」

歩き始めるショウ。

ショウ「次は金持ちとチェンジしようかな。このむしゃくしゃした気持ちを豪遊で癒したい」

そのとき、ワーッと歓声が上がる。

ショウ「なんだ?」

町の人1「ライオネット様が戻られたぞ!」

町の人2「若くして、聖騎士団の団長だもんな。しかも今回の遠征では黒竜を仕留めたらしい。こりゃ、国王から莫大な報奨金が出るんじゃないか?」

町の人3「ああ。もしかしたら、姫と結婚、なんてこともあるかもな」

ショウ「……へー。騎士団団長か。名声もあるし、金持ちにもなりそうだし、お姫様と結婚……。よし、次はあいつにしよう」

場面転換。

街中を歩くショウ。

子供1「わあ、ライオネット様だ!」

子供2「すっげー! 格好いい!」

ショウ「ふふ。こうやって、注目されるのって悪くないな。芸能人って、こんな気持ちなのか。よし! 今日も女の子のいる店で朝まで飲むぞ!」

町の人1「うわー! 赤龍だ! 黒竜の仇を討ちに来たんじゃないのか?」

ショウ「え……?」

町の人2「ライオネット様! お願いです! 赤龍を倒してください!」

ショウ「え? え? え?」

子供2「ライオネット様は強いんだよね? あんな龍なんて、簡単にやっつけられるよね?」

ショウ「お、おう! もちろんだぜ!」

そこに兵士が走って来る。

兵士1「ライオネット様。討伐隊の編成が整っています。指揮を!」

ショウ「あ、ああ! よし、行くぞ。……みんな! このライオネットがいる限り、何も心配はない! 安心して討伐の報告を待っているがいい!」

ワーッと歓声が上がる。

場面転換。

赤龍「グオオオオオ!」

ショウ「……なんだよ、ありゃ。バケモンじゃん」

兵士1「さあ、ライオネット様! 行きましょう!」

ショウ「いやいやいや。無理無理。あんなの勝てる人間、いないって」

兵士1「え?」

ショウ「この体は、もういいや。チェンジ!」

ショウ(N)「あの後、ライオネットが龍にやられてからは、兵士たちは総崩れになって全滅し、国自体が崩壊した。危ない危ない。さっさと入れ替わっておいて良かった」

場面転換。

森の中を歩くショウ。

ショウ「さてと、早く隣の国に行って、チェンジしないとな。人がいるところじゃないと、チェンジできないからな。……ん?」

立ち止まるショウ。

エリザ「……」

ショウ「……エルフの子供?」

エリザ「ひっ! 人間っ」

ショウ「あー、待って! 別に危害を加えようってわけじゃないんだ! ほら、武器も持ってない!」

エリザ「……酷いこと、しない?」

ショウ「しないしない」

エリザ「ホント?」

ショウ「ホントホント」

エリザ「……よかった」

ショウ「でも、なんで一人なんだ? 親とか仲間は?」

エリザ「赤龍に、全滅させられたの」

ショウ「あ……そっか。なあ、もし、一人なら、俺と一緒に来ないか?」

エリザ「え?」

ショウ「あ、しまった。もう少し格好いい顔の奴にチェンジしてから言えばよかった」

エリザ「……ん?」

ショウ「いや、なんでもない。それより……一緒に来るか?」

エリザ「……うん、行く」

ショウ(N)「エルフの女の子はエリザという名前らしい。最初は警戒してたが、すぐに打ち解けるようになって、今では俺を兄のように慕ってくる」

場面転換。

エリザ「ショウ。疲れたー。おんぶして」

ショウ「またかよ、しょうがないな。ほら」

エリザ「わーい!」

エリザがショウの背に乗っかる。

エリザを背負って歩くショウ。

エリザ「エリザね、ショウのこと、だーい好き」

ショウ「はは。ありがと。俺もエリザのこと好きだよ」

エリザ「えへへへ。それじゃーね。エリザ、大きくなったら、ショウと結婚してあげる」

ショウ「それって、何年後?」

エリザ「えーっと、150年くらい?」

ショウ「うん。俺、死んでるな」

エリザ「ええー!」

ショウ(N)「家族が出来たみたいで嬉しかった。こんな気持ちは、前の世界の家族に対しても思ったことは無い。……この先、どんなことがあっても、エリザのことは守ってみせる。……どんなことがあっても」

場面転換。

グルルルと、オオカミの群れの唸り声。

エリザ「……ショウ」

ショウ「大丈夫だ、エリザ。下がってろ」

オオカミ「ガアア!」

ショウ「ぐあ!」

ショウがオオカミに噛まれる。

ショウ「くそ! このままじゃ……」

エリザ「ショウ!」

ショウ「エリザ、逃げろ!」

エリザ「でも……」

ショウ「大丈夫だ! こいつらやっつけて、すぐに追いつく。だから、行け!」

エリザ「う、うん!」

エリザが走って行く。

ショウ「よし。……とはいえ、このままだと殺される。近くに誰かいないか? ……いた! ハンターか。よし、こいつと変わるしかない。チェンジ!」

場面転換。

山道を走るショウ。

ショウ「待ってろよ、エリザ。絶対にお前を守ってやるからな」

エリザ「ショウ!」

ショウ「エリザ!」

ハンター「エリザ、大丈夫だったか?」

エリザ「うん、うん。ショウが死んじゃうんじゃないかって心配だった」

ハンター「はは。危機一髪だったけどな。けど、もう大丈夫だ。エリザのことは、俺が絶対に守ってやるからな」

エリザ「うん! ショウ、大好き!」

ショウ「……そっか。入れ替わったから、俺はもう、エリザにとってのショウじゃないんだな。はは。……まあ、エルフの子供なんて、足手まといだし、ハーレムに入れられるのも、150年先だし、大体、あの体は、顔も不細工だし、貧乏だしな。後悔は全くないよ。せいせいした……」

回想。

エリザ「エリザね、ショウのこと、だーい好き」

エリザ「えへへへ。それじゃーね。エリザ、大きくなったら、ショウと結婚してあげる」

回想終わり。

ショウ「う、うう……。エリザ、エリザ……。そっか。俺は、ずっとこういうことをしていたんだな……。人の人生を狂わせていたんだ……」

ショウ(N)「この後、俺は山奥に住み、二度と誰かとチェンジすることはなかった」

終わり。  

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