【声劇台本】西田家の受難 初夢とおみくじ

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■シリーズシナリオ
<シュークリーム事件> <西田怪談> <留年未遂事件> 
<幼馴染の謎の行動> <アウトドアの恐怖> <ご馳走>
<クリスマスと不思議な旅> 〈初恋の約束〉

■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ

■キャスト
西田 正志
西田 清
西田 総士
西田 隆志
高坂  陽菜

■台本

正志「うわあああああ!」

ガバッとベッドから上半身を起こす正志。

正志「……ゆ、夢か」

場面転換。

正志が歯を磨いている。

そこに総士がやってくる。

総士「あれ? 兄貴。休みの日に、こんな時間に起きるなんて珍しいね」

口をゆすぐ正志。

正志「ああ……。新年早々、悪夢を見てな。飛び起きたんだよ」

総士「初夢から悪夢なんて、縁起悪いね」

正志「初夢?」

総士「あれ? まさか知らねえの? 元旦の夜、つまり2日の朝に見る夢を初夢っていって、一年の縁起を占うものなんだよ」

正志「マジか……。最悪だな」

総士「ちなみに、どんな夢だったの?」

正志「それがさ……。なぜか富士山に登ろうって話になって、富士山の麓に行ったんだよ。そしたらさ、それは富士山じゃなくて、巨大なナスだったんだ……。なんだこれ? 首を捻ってたら、いきなり巨大なナスがバラバラになって、ナスの雪崩に巻き込まれるんだ。うわ、これ死ぬ! って思ってたら、鷹に助けられた」

総士「それって、めちゃめちゃ縁起いいんじゃねーの?」

正志「その後、鷹の巣に連れていかれて、ヒナのエサにされた」

総士「……兄貴らしいカオスな夢だね。まあ、総合的に見て、普通くらいの運勢じゃねーのかな」

正志「そうか。おみくじで言うと、吉って感じか」

総士「いや、兄貴。吉って、大吉の次にいいやつじゃん」

正志「え? そうなのか? 真ん中くらいじゃないのか?」

総士「えっと、確か、大吉、吉、中吉、庄吉、末吉、凶、大凶だったと思うよ」

正志「ふーん。まあ、どうでもいいや」

総士「話を振っておいて、それは雑すぎね?」

正志「あー、腹減った。雑煮でも食うか」

総士「兄貴って、ホント自由人だな……」

場面転換。

コンロに火をかけ、餅を焼いている正志。

清「……正兄ぃ。何やってんの?」

正志「見てわからんか? 餅を焼いてるんだよ。雑煮用の」

清「……いや、なんでコンロで焼いてるのって話。電子レンジ使えばいいんじゃないの?」

正志「いや、直火で焼いた方が美味そうじゃね? 新年なんだから、いいものを食わないとな」

清「……ガス臭くなるんじゃないの? 電子レンジの方が柔らかくなるし、楽だと思うけど」

正志「ちっちっち。今年の俺は去年までの俺は違うんだよ。料理はちゃんと手間暇をかけることにしたんだ」

清「あ、そ。勝手にすれば」

正志「見ろ、清! 餅が膨らんできたぞ! やべえ、美味そうだ!」

その時、パンと餅が弾ける。

正志「ぎゃーーー! 熱ぃ!」

転げまわる正志。

清「はあ……」

場面転換。

正志「あちち。くっそ……。新年早々、火傷とかついてないな」

総士「兄貴。親父が金返せって言ってるよ」

正志「は? 俺、親父に借金なんてしてねーぞ」

総士「昨日渡したお年玉袋に、間違って、多めに入れてたらしいから、その分返せってさ」

正志「なんだそりゃ! お年玉返せなんて親のすることかよ!」

総士「いや、俺に言われても知らないし」

正志「くそ! 今年は羽振りいいなと思って喜んでたのに……」

総士「ま、月々の小遣いを減らされないうちにちゃんと返した方がいいと思うよ」

正志「くそう……。やっぱり、全然ついてねぇ。やっぱり、初夢は今年一年の絶望を暗示してたんだ……」

総士「いや、大げさだと思うけど」

場面転換。

正志「くそ。お金を返金したら、なんか損した気分だな……。結局、餅も食い損ねたし。……なんか、おやつとかねーかな」

戸棚をガサガサと漁る正志。

正志「あっ! クリスマスのために買ってたケーキだ! 豪華に過ごそうと思って3つ買ってたんだよな。あいつらにバレないように隙を伺ってたら、すっかり忘れてたぜ。ふふ、まさに棚からぼたもち。ラッキーな気分になるな」

そこに隆がやってくる。

隆「正志お兄ちゃん。お母さんが呼んでるよ」

正志「くっ! こんな時に……」

場面転換。

正志「ふう、思いのほか重労働させられたな。まあ、その分、ケーキを美味しくいただけるな」

戸棚を開ける正志。

正志「……あれ? ない! なんで? さっきまであったのに!」

清「正兄ぃ、うるさいよ。昼間っから何?」

正志「清! 俺のケーキを知らないか? さっきまであったのに、なくなってるんだ!」

清「……なんかデジャブだね。また、ミラの仕業なんじゃない?」

正志「ば、バカな……。ついに一番上の戸棚まで到達するようになっちまったのか……。なんて恐ろしい猫なんだ」

清「ま、運が悪かったと思って、諦めるんだね」

正志「うう……。恐ろしい。俺は今年一年が恐ろしくなってきた……」

場面転換。

チャイムが鳴り響く。

正志「はいはい……」

正志がドアを開ける。

陽菜「やっほー」

正志「ああ、陽菜か。どうしたんだ、急に?」

陽菜「えっとね……ってあれ? 今日は随分家の中静かだね。みんな出かけてるの?」

正志「いや、兄弟全員、腹痛で苦しんでる」

陽菜「え? なにか悪い物でも食べたの?」

正志「さあな」

陽菜「正志は大丈夫なの?」

正志「ああ。俺は平気だ。きっと、あいつらは俺に内緒で美味いものでも食ったんだろ。その罰が当たったんだ」

陽菜「そっか。大変だね」

正志「で? 何の用だ?」

陽菜「あ、そうそう。駅前に新しいスイーツ店がオープンしたみたいなの。一緒に食べに行かない?」

正志「うーん。どうしようかな……」

陽菜「あ、私、今年、多めにお年玉もらえたから、奢ってあげるよ」

正志「マジか! 行く行く!」

陽菜「はあ、ホント、正志は現金ね」

正志「やっぱ、あの夢は幸運の暗示でもあったんだな。……ってことは、今年のラッキーアイテムは陽菜なのかもな」

陽菜「……物扱い? 失礼ね」

正志「とにかく、今年はお前が幸運のキーポイントになりそうだから、極力一緒にいるようにしよう」

陽菜「え? あ、うん……。ふふ、おみくじの大吉は、伊達じゃないわね」

正志「ん? なんか言ったか?」

陽菜「ううん。なんでもない。さ、行こう」

正志「ああ」

二人で並んで歩き出す。

終わり。

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