【声劇台本】ステーション

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■概要
主要人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブストーリー?

■キャスト
希美(のぞみ)
ひかり
その他

■台本

希美(N)「私はその日――恋に落ちた」

希美が改札に走って来る。

希美「はっ! はっ! はっ!」

ピッと定期をかざして、改札を抜けていく。

アナウンス「3番線を急行列車が通過します。白線より下がってお待ちください」

電車がゴーっと音を立てて通過していく。

希美(N)「一目見たときに電流が走ったような、そんな感覚が私の体を駆け抜けていった。……たぶんそれは、一目惚れというものだったんだろう」

場面転換。

希美が改札に走って来る。

ピッと定期をかざして、改札を抜けていく。

希美「お願い! 間に合って!」

階段を駆け上がっていく希美。

目の前をゴーっと電車が通過していく。

希美「あー……。間に合わなかった」

場面転換。

学校。

希美「はあー」

机に突っ伏す希美。

ひかり「なーに、落ち込んでんのよ」

希美「あ、ひかり……。聞いてよー。今日は間に合わなかったの―」

ひかり「間に合わなかったって……。別にあんた、遅刻してなかったじゃない」

希美「違うのよー。目の前で通過しちゃってさー、お姿を見ることができなかったの」

ひかり「あー、はいはい。希美が一目惚れしたっていう、愛しのお姿が見れなかったってことか」

希美「そう! あー、もう最悪―。今日一日、ホントやる気出ない」

ひかり「……見れなくて、そんなに落ち込むなら、写真とか撮ったら? それなら、いつでも見られるんじゃない?」

希美「ダメ! 絶対ダメ! そんな隠し撮りみたいなことできないよー。それに、この目で見るってことに意味があるの!」

ひかり「あんたも変わってるよね。見るだけでいいなんてさ」

希美「届かない恋は、そんなものだよ。すぐ近くでも、見てるだけ。……この絶妙な距離感がいいんだよ」

ひかり「……ごめん。理解できない」

希美「ひかりだって、好きな人が出来れば、この気持ちわかってもらえると思う」

ひかり「いやー。さすがに見てるだけなんて、マゾっぽいのは無理だわ」

希美「近づき過ぎたら怪我をする。当たり前のことでしょ?」

ひかり「まあ、それはシャレにならないと思うけど……」

希美「ねえ、ひかり。今度、一緒に見て見ない? ひかりだって、あの凛々しい姿を見れば、イチコロだよ」

ひかり「イチコロって……。いや、止めとくよ。親友と取り合うなんて嫌だからさ」

希美「ええー……」

ひかり「けどさ。あんた、ホントにこのままでいいの?」

希美「なにが?」

ひかり「もうすぐ卒業だよ? 卒業したら、引っ越すんだからさ。そしたら、もう……」

希美「……お願い。それ以上は言わないで」

場面転換。

蛍の光が流れる。

場面転換。

希美が走って来る。

希美「お待たせ!」

ひかり「……あーあ。もう卒業か。なんか、実感湧かないよね」

希美「……」

ひかり「……さ、最後に会いに行こっか」

希美「うん……」

場面転換。

駅。

希美「……」

アナウンス「3番線に電車が参ります。白線より下がってお待ちください」

電車がやってきて、停まる。

そして、プシューとドアが開く。

ひかり「……ほら、行ってきな」

希美「う、うん……」

希美が走って行き、立ち止まる。

希美「……ずっと、ずっと好きでした。最後に……写真……撮らせてください……」

パシャと写真を撮る音。

そして、プシューとドアが閉まる音。

電車が出発する。

希美「……」

ひかり「……気が済んだ?」

希美「……う、うう……。うわーん!」

ひかりに抱き着き、大泣きする希美。

ひかり「よしよし、思い切り泣きな」

希美(N)「こうして、私の恋は終わりを告げた……」

場面転換。

希美が改札に走って来る。

希美「はっ! はっ! はっ!」

ピッと定期をかざして、改札を抜けていく。

階段を駆け上がって、駅に出る。

アナウンス「6番線に電車が参ります。白線より下がってお待ちください」

希美「はー、はー、はー。……ごめん。寝坊した……」

ひかり「あんたねえ。この電車逃したら、遅刻だったよ。入学式から遅刻なんてシャレにならないって」

希美「ごめんごめん。でも、間に合ったからいいじゃな……」

電車がやってきて停まる。

そして、プシューとドアが開く。

希美「……格好いい」

ひかり「はあっ!?」

希美「見てよ、ひかり! すごいクールなお姿! 惚れた!」

ひかり「そ、そう……」

希美「ひかりも格好いいと思わない?」

ひかり「ごめん。理解できない……って、乗らないと!」

ひかりが希美を引っ張って、電車に乗る。

希美「ふふ。うふふふふ」

ひかり「……あんたさ、そろそろ人間の男の人に興味持ったら?」

希美「ああ……これから毎日、この電車に乗って大学に通うとか、最高!」

ひかり「……うーん。やっぱり、私には鉄ちゃんの感覚は、わからないわね」

希美(N)「私はその日――恋に落ちた。こうして、私の恋は再び走り始めたのだった」

終わり。

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