【声劇台本】裏切り者の親友
- 2021.07.20
- ボイスドラマ(10分)
■概要
主要人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
一樹(いつき)
一真(かずま)
一花(いちか)
■台本
一樹(N)「一真と一花は、いわゆる幼馴染の関係だ。何となく気が合って、遊ぶときは3人で、どこに行くにも一緒だった。それは高校に入ってからも、変わることはなかった……」
場面転換。
一樹と一真が並んで歩いている。
一真「一樹は行きたいところは、あるのか?」
一樹「うーん。海……とか?」
一真「ベタだな」
一樹「うるせーな。一真はどうなんだよ?」
一真「んー。山でキャンプ、とか?」
一樹「お前もベタじゃねーかよ」
そこに一花が走ってきて、後ろから二人の背中をバンと叩く。
一花「おっはよー!」
一樹・一真「痛っ!」
一花「あははは。隙だらけなのがいかんのだよ」
一樹「朝から、テンションたけーよ」
一花「にゃはは! 元気が、一花ちゃんの取り柄なのだー!」
一真「疲れる……」
一樹「ああ、そうだ。一花は夏休み、行きたいところあるか?」
一花「ん? んー。ニューヨーク、とか?」
一真「すまん。普通に行けるところで、行きたいところだ」
一花「じゃあ、市民プール」
一樹「……そこまで日常的じゃなくていい」
一花「ん?」
一真「まあ、一花はどこに行っても、楽しめそうだから、俺たちで決めちまおう」
一樹「そうだな」
一花「でもさ、でもさ! なんで、急に旅行の計画なんて立てるの?」
一樹「あー、そういえば、なんでだっけ?」
一真「まー、いいじゃねーか。高校最後の思い出ってことで」
一樹「いや、俺たち、まだ2年だから。高校最後は早すぎるだろ」
一真「いやいや。一年なんて、過ぎるの早いぞ。それに、来年になったら、受験とかあるから、あんま遊べないだろ」
一樹「うっ! 考えたくない現実を突きつけやがって……」
一花「にゃはははー。受験かー。2人とも頑張ってねー」
一樹「なんだ、そりゃ? お前、大学いかないつもりか?」
一花「ううん。にゃにゃんと! 一花ちゃんは、既に推薦を貰えることが決まっているのだー!」
一真「……学年一位は伊達じゃないってか」
一樹「こんなのが、学校内で一番頭がいいって、なにか間違ってる……」
一真「とにかく、俺たち2人は、来年、地獄なんだから、今年の夏は全力で遊ぶぞ!」
一花「おー!」
一樹「地獄って言うな……」
場面転換。
一樹(N)「一真の言う通り、時間なんてすぐに過ぎ去っていく。楽しい時間なら、尚更だ。気付けば、夏休みも最後の日になっていた」
場面転換。
一樹と一真が並んで歩いている。
一真「いやー、充実した夏休みだったな。今までで最高の夏休みだったよ」
一樹「……その分のツケも膨大だけどな。あーあ、半年先まで小遣い前借りしちまったからなー。しばらく、贅沢はできねーな」
一真「小遣いのことを気にするのもいいけど、宿題、やってるのか?」
一樹「あああー! やべえ! 全然、やってねえー」
一真「はははは。だと思った」
一樹「お前は、どうなんだよ?」
一真「やってねーよ」
一樹「なんで、そんなに余裕なんだ?」
一真「……そういえば、今日、流星が見れるみたいだな」
一樹「なんだよ、急に?」
一真「いや、夏休みの最後を締めくくるに相応しいな、って思って」
一樹「うーん。ここまで来たら、もう宿題は諦めて、怒られることにするか……」
一真「いつものことだな」
一樹「うるせーな。じゃあ、一花も呼んで、3人で流星、見に行くか」
一真「……なあ、樹」
一樹「なんだよ、急に真面目な声出して」
一真「俺たち、親友だよな?」
一樹「な、なんだよ! 金ならねーって言ったばかりだろ」
一真「いや、そうじゃなくてさ。この先、何があっても、裏切ったりしないよな?」
一樹「当たり前だろ。っていうか、その言い方だと、フラグにしか聞こえねーぞ。なんか、企んでるのか?」
一真「まあ、な」
一樹「おい!」
一真「お前さ、一花のこと、どう思ってる?」
一樹「は? さっきから、なんなんだよ! お前、最近、ちょっと変だぞ?」
一真「いいから、答えてくれよ」
一樹「……幼馴染」
一真「建前じゃなくて、本当の気持ちを知りたいんだ」
一樹「……」
一真「教えてくれよ。俺たち、親友だろ?」
一樹「俺さ……。3人でいるのが、すげー楽しいんだ。この先も、ずっと、このままでいたいなって思ってる」
一真「そんなことは……」
一樹「ああ。無理だ。けどさ、せめて、高校の間だけは、この関係でいたいんだ」
一真「……そうか」
一樹「一真の、一花への気持ちはわかってる。だけど、ごめん。あと1年だけ、待ってくれよ。卒業までは3人でいたいんだ」
一真「……わかった」
一樹「……すまん」
一真「ま、とにかく、今日は夏休みの最後の日だ。思い切って、楽しもうぜ」
一樹「じゃあ、一回、家に帰ってから18時に集合しようぜ」
一真「ああ、わかった。一花には俺が連絡入れとく」
一樹「おう、頼んだ」
一真「一樹、ありがとな」
一樹「……なにが?」
一真「今回の夏休み、すげー楽しかったよ」
一樹「あ、ああ……」
場面転換。
ガサガサと棚を漁る樹。
一樹「えーっと、虫よけとか持ってった方がよさそうだよな?」
そのとき、スマホが鳴る。
一樹「ん? 一真からメール? ……なっ!」
場面転換。
一樹が全力で走る。
一樹「くそ、あいつ! 何考えてるんだ!」
一真のメールの内容。
一真の声「すまん、樹。やっぱり、俺、一花への思いを抑えきれなかった。それで、一花を呼び出して、告白した。俺たち、付き合うことになったから、今日は、お前は来ないでくれ」
走る一樹。
一樹「くそ! くそ! くそ! 裏切らないって言ったばかりだろ! 一真―!」
場面転換。
一樹が走って来る。
一樹「一花!」
一花「……いっちー?」
一樹「俺も、俺……。お前のことが好きだ! ずっと、ずっと好きだった!」
一花「……え?」
一樹「あ……。ご、ごめん。いきなり、こんなこと言われても困るよな……」
一花「う、うう……。ふえー」
一樹「な、なんで、泣くんだよ!」
一花「だって、嬉しくて―。一花ちゃんも、いっちーのこと、大好きでー」
一樹「ちょ、ちょっと待て! なら、どうして一真の告白を受けたんだよ?」
一花「ふえ? かずくん? なんの話?」
一樹「え? 一真に告白されたんじゃ……?」
一花「ううん。かずくんには、ここでいっちーが来るのを待ってろって」
一樹「あいつ、何考えてるんだよ!」
スマホで電話を掛けるが出ない。
一樹「なんなんだよ、あいつ……」
場面転換。
一樹(N)「一真は、夏休みが終わったら、親の転勤で引っ越すことをずっと黙っていた。一真にとって、今年が3人で過ごす最後の夏休みだったんだ。3人で、思い出を作って、最後に俺と一花を付き合うように仕向けた。ホント、あいつはとんだ裏切り者で……最高の親友だ」
終わり。
-
前の記事
【声劇台本】嘘のサイン 2021.07.19
-
次の記事
【声劇台本】最弱で最強の陰陽師 2021.07.21