【声劇台本】電波と宇宙の間に
- 2021.08.14
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
真(まこと)
羽村 美夜(はむら みや)
■台本
真(N)「放課後。学校の屋上で空に向かって祈りを捧げる少女。その姿は儚く、神秘的で……そして、綺麗だった。たぶん、それは一目惚れという奴だろう。彼女の名前は羽村美夜。電波系ということで、学校では噂になっていた」
学校のチャイム。
真「なあ、羽村。お前はいつも、何を祈ってるんだ?」
美夜「……祈ってるんじゃないわ。交信してるの」
真「交信? なにとだ?」
美夜「宇宙人」
真「……そ、そっか。羽村はすげーな」
美夜「ううん。全然、すごくない」
真「そんなことねえって。普通は、宇宙人と交信なんて、できないだろ?」
美夜「同じ」
真「……なにがだ?」
美夜「私もまだ成功したことない。だから、他の人と同じ」
真「そ、そっか……。でもさ、こういうのは諦めないことが重要だと思うぜ」
美夜「うん」
真「……羽村は、宇宙人と交信が成功したら、どんな話をするんだ?」
美夜「……あ」
真「どうした?」
美夜「考えてなかった。何を話そう……?」
真「……考えてなかったのかよ。で、でもまあ、今、気付いてよかったんじゃないか? せっかく繋がってもフリーズしたら勿体ないもんな」
美夜「そうね……。ありがとう。考えてみる」
真「お、おう……」
美夜「……」
真「……」
美夜「決めた」
真「何にしたんだ?」
美夜「好きな人を聞く」
真「……宇宙人のか?」
美夜「違う。私の」
真「……お前の好きな人を、宇宙人に聞くのか?」
美夜「そう」
真「……それはクイズ的なことか? 本物なら知ってるとか、そういう感じの」
美夜「ううん。違う。私もわかないから、聞いてみるの」
真「……お前にもわからないのに、答えられないだろ」
美夜「そんなことない。宇宙人は凄いの。きっと、答えてくれる」
真「そ、そっか」
美夜「これで、交信できても、困ることはなくなった。それじゃ、交信する」
真「が、頑張れよ」
美夜「……」
真「なあ、羽村。他に方法って試してみたのか?」
美夜「他の?」
真「ああ。今までその方法で交信に成功したことないんだろ? それなら別の方法にした方がいいんじゃねーの?」
美夜「……盲点だった。確かに、そうね」
真「他にはどんな方法があるんだ?」
美夜「……わからない」
真「知らないのかよ……」
美夜「どうしよう?」
真「うーん。そうだなぁ……。あ、いいこと思いついた」
美夜「なに?」
真「あーいや、その……準備があるからさ。明日、教えるよ」
美夜「うん。わかった」
場面転換。
真「お待たせ。ほら、これが昨日言ってた、いいこと思いついたってやつ」
カチとスイッチを入れるとノイズ音が響く。
美夜「……トランシーバ?」
真「ああ。このトランシーバは自由にチャンネルを設定できる奴みたいなんだ。もしかしたら、宇宙人と繋がるチャンネルがあるかもしれないぞ」
美夜「ありがとう。うん。頑張ってみる」
カチっとスイッチを入れて、チャンネルのバーを細かく調整している美夜。
美夜「……」
真「気に入ってくれたみたいで、何よりだ」
美夜「……」
真「そこまで夢中か。すごいな」
美夜「……」
真「じゃ、じゃあ。俺、そろそろ帰るな」
美夜「……」
真「……凄い集中力だな」
場面転換。
真がガラガラと教室のドアを開く。
放課後なので誰もいないので、静か。
真「このくらいの距離なら届くよな」
真が机に座り、トランシーバーのスイッチを入れる。
ザザザというノイズ音が響く。
しばらくした後、プツという繋がる音。
真「来た……」
通話ボンタンを押す真。
真「我は……宇宙人だ」
美夜の声「あ、繋がった」
真「我は宇宙人。何でも聞きたいことを言え」
美夜の声「えっと……」
真「……」
美夜の声「……」
真「な、ないのか? 聞くこと」
美夜の声「うん……。ない。困った」
真「あれ、どうしたんだよ? 好きな人を聞くってやつ」
美夜の声「あれは解決したからいいの」
真「……解決?」
美夜の声「うん。わかったから、もういいの」
真「……え? わかったって……」
美夜の声「好きな人、わかったの」
真「だ、誰なんだ? それ?」
美夜の声「えっとね。宇宙人」
真「ええ! 宇宙人なのか!?」
美夜「うん。本人がそう言ってる」
真「……そっか。宇宙人か。まあ、ずっと交信したかった相手だもんな。じゃ、じゃあ。何か願い事はないか? 宇宙人はすげーからな。大体……いや、叶えられる範囲で叶えてやるぞ」
美夜の声「ううん。いい。願いごとも叶ったから」
真「叶った?」
美夜の声「うん。ついさっき」
真「そっか……。宇宙人と話すこと、か。確かに叶っているな」
美夜の声「あのね」
真「うん? なんだ?」
美夜の声「私、いろいろお話したい」
真「お、おう。いいぞ! 宇宙人……我のことだな? わかる範囲で答えてやるぞ」
美夜の声「今日、売店でね……」
真「えらい、個人的な話だな……」
場面転換。
ドアを開けて、真が入って来る。
真「よお、羽村。昨日はどうだった? 宇宙人と繋がったか?」
美夜「うん。つながった」
真「そっかそっか。よかったな」
美夜「うん。ありがとう」
真「今日も、話すのか?」
美夜「うん。話したい」
真「そっか。じゃあ、俺は邪魔だろから、帰るな」
歩き出すがピタリと止まる。
真「そういえば、良かったな。願いが叶って。宇宙人と話すことが願いだっただろ?」
美夜「ううん。こっちは叶わなかったけど、新しい願いは叶った……」
真「新しい願い?」
美夜「うん。好きな人といっぱい話すこと」
真「……好きな人……ああ。宇宙人か。そうか。じゃあ、今日もたくさん、願いを叶えろよ」
美夜「うん。ありがとう」
真「じゃあな」
歩き去る真。
場面転換。
ガラガラと教室のドアを開ける真。
放課後なので誰もいないので、静か。
真が机に座り、トランシーバーのスイッチを入れる。
ザザザというノイズ音が響く。
しばらくした後、プツという繋がる音。
真「我は……宇宙人だ」
終わり。
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