【声劇台本】夏休み
- 2021.08.18
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
将吾(しょうご)
ハナ
その他
■台本
セミの鳴く声。
廊下を歩く将吾。
将吾「あちぃ……」
女生徒たちが歩く音。
女生徒1「聞いた? あの噂」
女生徒2「ああ、七不思議? トイレで出たのを見たって話でしょ?」
女生徒1「そうそう。それでさ……」
将吾が歩き続ける。
将吾「……七不思議、ね」
場面転換。
将吾が屋上のドアを開けて、歩いて来る。
将吾「よお」
ハナ「ん」
将吾「屋上にいていいのか?」
ハナ「まだ明るいから」
将吾「ふーん」
ハナ「……」
将吾「なあ、ハナ。もうすぐ夏休みだな」
ハナ「知ってる」
将吾「予定、あったりするか?」
ハナ「あると思う?」
将吾「どっか、出かけないか?」
ハナ「……は?」
将吾「いや、夏休み。旅行にでも行かないか?」
ハナ「いや、無理でしょ」
将吾「じゃあ、何とかしたら行ってくれるか?」
ハナ「……まあ、いいけど」
将吾「約束だぞ」
場面転換。
セミの鳴く声。
道路を自転車に乗って走らせる将吾。
ハナ「……意外と何とかなるものね」
将吾「そんなもんだよ」
ハナ「それより、なんで自転車?」
将吾「車持ってねえし。……てか、普通、高校生は車ないだろ」
ハナ「電車とか使えばいいんじゃないの?」
将吾「金もない」
ハナ「……よく、それで私を誘ったわね」
将吾「まあ、こうやって時間かけて移動するのもいいもんだろ」
ハナ「まあ……ね。こういうのはなかなか新鮮」
将吾「せっかく自転車で移動してるんだ。見たいところとかあったら言えよ」
ハナ「じゃ、あそこの道の駅に寄ろうよ」
将吾「道の駅? なんで?」
ハナ「トイレ」
将吾「……恥ずかしげもなく、ストレートに言うなよ。……で? まさか、我慢してた、とか?」
ハナ「ううん。観光」
将吾「おい!」
場面転換。
道の駅内。
ハナ「お待たせ」
将吾「早かったな。もういいのか?」
ハナ「うん。それにしても……最近の道の駅のトイレって、すごいきれいなんだね」
将吾「まあ、こういうところのレジャー系はだいたいそうだよ」
ハナ「へー」
将吾「よし、じゃあ、行くか」
ハナ「待って。あれ……」
将吾「ん? 土産屋か?」
ハナ「記念になんか買いたい」
将吾「そういうのは帰りに……って、まあいいか」
場面転換。
自転車を走らせている将吾。
将吾「……はあ」
ハナ「なに? どうしたの?」
将吾「まさか、お前の方が金持ちとは思わなかったよ」
ハナ「まあ、あんまり買い物しないからね。溜まってくのよ」
将吾「……ふーん」
ハナ「貸さないわよ」
将吾「うっ!」
ハナ「それで? 旅の目的地はどこ?」
将吾「海。お前、前に行きたいって言ってただろ?」
ハナ「よく覚えてたね。かなり前の話でしょ」
将吾「まあ、な」
ハナ「……好きなの? 私のこと」
将吾「ば、バカ! ちげーって」
ハナ「私に惚れたら、大変だよ」
将吾「だから、ちげーって言ってんだろ」
ハナ「……嬉しいよ」
将吾「ん?」
ハナ「言ったの、覚えててくれたこと」
将吾「……」
ハナ「……あ、でも、水着ない。……まあ、現地で買えばいいか」
将吾「え? なに? 泳ぐ気なの?」
ハナ「海って言えば、泳ぐでしょ?」
将吾「泳げんの? お前?」
ハナ「何事も経験。やってみないとわからない」
将吾「溺れるとか勘弁しろよ」
ハナ「大丈夫。……だと思う」
将吾「急に弱気になったな」
場面転換。
ドアがガチャリと開く。
女将「こちらの部屋でございます」
将吾「へー。部屋から海が見えるんですね」
女将「ええ。ここからの眺めも、好評いただいて……あら、ごめんなさい。少し、エアコンが効きすぎみたいですね」
将吾「いや、いいですよ。そのままで」
女将「そうですか。夕飯は18時から21時までで、バイキング形式になっています。それで、朝ご飯は……」
場面転換。
ハナ「んー! 畳だ。久しぶり。いいね」
将吾「あー、そっか。そういやそうか」
ハナ「それよりさ」
将吾「ん?」
ハナ「なんで、部屋一つなの?」
将吾「は? あ、い、いや! そりゃ……その……金なくて……さ」
ハナ「なるほど。体が目的だったんだ」
将吾「アホか!」
ハナ「いいよ」
将吾「は?」
ハナ「連れてきてくれたお礼」
将吾「いや、それは、また、別の話でさ、そういうつもりとかじゃ……」
ハナ「そんな度胸はないか」
将吾「お前なぁ。あんまり、俺を舐めるなよ。やるときはやる男だぞ、俺は」
ハナ「ま、そういうことにしておいてあげる」
将吾「くそ……」
ハナ「でもね。本当に嬉しい。連れてきてくれたこと」
将吾「……」
ハナ「ありがと」
将吾「ああ……」
場面転換。
海。浜辺。波の音が響く。
ハナ「おお。海だ。すごい」
将吾「晴れてよかったな」
ハナ「波が高い」
将吾「まあ、あんなもんだよ」
ハナ「水が流れてる」
将吾「そうだな」
ハナ「トイレみたい」
将吾「おい!」
ハナ「よし、じゃあ、泳ごうかな」
将吾「大丈夫なのか?」
ハナ「たぶん」
将吾「たぶんって……」
ハナ「一緒に泳ご」
将吾「……あ、ああ」
場面転換。
学校のチャイム。
廊下を歩く将吾。
女生徒1「聞いて! 私、見たの!」
女生徒2「なにが?」
女生徒1「トイレの花子さん」
女生徒2「ええ……。昼間から?」
女生徒1「ホントに見たんだって!」
将吾「……」
場面転換。
ガチャリと屋上のドアが開き、将吾がやってくる。
将吾「よお」
ハナ「ん」
将吾「学校、始まったな」
ハナ「知ってる」
将吾「……」
ハナ「…楽しかった」
将吾「ん?」
ハナ「初めて、夏休みが楽しいって思った」
将吾「そっか」
ハナ「うん」
将吾「冬休みも行くか? 旅行」
ハナ「うん。楽しみにしてる」
将吾「じゃあ、計画立てておくよ」
学校のチャイムが鳴り響く。
終わり。
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