【声劇台本】悪魔のエクソシスト
- 2021.08.30
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
御子柴 貴也(みこしば たかや)
ミレイ
他
■台本
貴也(N)「エクソシスト。人間の心の隙に入り込む悪魔を祓う仕事。爆発的に精神病患者が増えたことにより、様々な研究が行われた結果、悪魔の仕業だと証明された。依然は、エクソシストはごく限られた人間にしかできなかったが、国がエクソシストの育成に着手。10年が経過した今、エクソシストは独自の国の機関として発足されたのだった」
貴也「今日から配属になった御子柴孝也です! よろしくお願いいたします!」
所長「おお、貴也くん。話は聞いてるよ。アカデミーでは主席だったらしいじゃないか」
貴也「はい! ですが、新人です! 色々と現場で経験を積み、早くみなさんの力菜になれるよう、努力します」
所長「ははは。発言まで優等生だな。……そんな貴也くんに質問だ。悪魔とは何だと思う?」
貴也「姑息で、憎むべき、人に害をなす存在です」
所長「ふむ……。君にはミレイの下についてもらおう。ミレイくん、来てくれ」
ミレイ「……はい」
ミレイが立ち上がり、歩み寄って来る。
貴也「……」
所長「ミレイくん、新人の貴也くんだ」
ミレイ「聞こえてました」
所長「貴也くん。こっちはミレイくんだ」
貴也「……」
所長「どうかね? ミレイくんの印象は?」
貴也「とても綺麗な人だと……」
所長「はっはっはっは。正直者だな、貴也くんは」
貴也「はっ!? あ、いえ、申し訳ありません」
所長「まあ、正直というのは美徳だ。この荒んだ世の中では、君のような人間はなかなかいない」
貴也「恐縮です」
所長「だが、我々は悪魔と対峙する仕事だ。正直なだけだと生き残れないぞ」
貴也「は、はい! 申し訳ありません」
所長「うむ。……それでだ、君にはミレイくんの下についてもらうのだが」
貴也「はい」
所長「ミレイくんは……悪魔だ」
貴也「……は?」
所長「はは。まあ、大概は最初はそんなリアクションだ」
貴也「あの……どういうことでしょうか?」
所長「言葉通りだ。ミレイくんは現世に顕現した悪魔なんだよ」
貴也「待ってください。悪魔がエクソシストなんですか?」
ミレイ「何か、問題があるのか?」
貴也「……悪魔が悪魔を祓っている、ということですか?」
ミレイ「ああ、そうだ」
貴也「所長、私はアカデミーでは、悪魔は滅ぼすべき存在だと習いました。どんな例外もない、と」
所長「それは違うな。人間に害をなす悪魔は、だ」
貴也「……違いがあるのでしょうか?」
所長「罪を犯した……例えば、殺人を犯した人間は裁かれるべきだと思うかい?」
貴也「人間であろうと、罪を犯したのであれば、罪は償うべきです」
所長「ふむ。では、罪を犯す人間がいるから、人間全体を裁くべきだと思うかね?」
貴也「いえ、それはさすがに、乱暴な理論です」
所長「そういうことだよ」
貴也「……」
所長「納得いっていないようだな。まあ、ミレイくんと仕事をすれば、わかるようになるさ」
ピンポーンとチャイムのような音が鳴る。
アナウンス「エクソシストの派遣要請が出ました」
所長「ちょうどいい。さっそく、二人で行ってきてくれないか?」
ミレイ「承知しました」
貴也「……」
場面転換。
ミレイと貴也が並んで歩いている。
貴也「あの……悪魔というのは本当ですか?」
ミレイ「何度も、そう言っている」
貴也「悪魔が顕現する、なんて始めて聞きます」
ミレイ「だろな。私も、私以外の事例は聞いたことがない」
貴也「……」
ミレイ「不満そうだな」
貴也「悪魔が悪魔を祓っているということですよね?」
ミレイ「ああ。そうだ」
貴也「できるんですか? 仲間を祓うんですよ? 手心を加えたりは……」
ミレイ「おかしなことを言うな、君は」
貴也「え?」
ミレイ「この世界には警察という組織がある。その警察では人が人を捕まえる仕事だ。その警察官に対して、同じ人間を捕まえるのに手心を加えるのでは、と一々心配するのか?」
貴也「そ、それは……。でも、それとは……」
ミレイ「納得がいってないようだな。まあいいさ。君が納得しようがしまいが、私はエクソシストとして悪魔を祓う。それだけだ」
二人が立ち止まる。
ミレイ「ここだ」
チャイムを押すミレイ。
ミレイ「エクソシストです」
女性の声「通報は誤報です。帰ってください」
ミレイ「確認しますので、中に入れてください」
女性の声「必要ありません!」
ミレイ「とのことだ。行くぞ」
貴也「帰るんですか?」
ミレイ「強行突破だ」
バキっとドアを破壊する音。
場面転換。
ツカツカと廊下を歩くミレイ。
女性「な、なにを? 帰ってください」
ミレイ「悪魔がいないと確認できれば帰ります」
女性「だからいないと……」
貴也「まずくないですか?」
ミレイ「君は黙っていろ。……ここか」
女性「やめて!」
ガチャリとドアを開けるミレイ。
女の子「きゃあ! な、なに?」
女性「娘です! 手出しはしないで」
ミレイ「なるほど……。遺体に宿ったか」
貴也「どういうことです?」
ミレイ「おそらく、娘は病気だったんだろう。死ぬ間際に悪魔が宿った」
貴也「……」
ミレイ「当の娘は既に死んでいる。つまり、悪魔が死体を操っている」
女性「違います! あれは娘です」
ミレイ「……娘はもう死んでる」
女の子「お母さん……」
女性「大丈夫よ。心配いらないわ。……とにかく、帰って。たとえ、悪魔だろうと、私の娘です」
ミレイ「受け入れられないのか? 娘の死が」
女性「あんたに何がわかるっていうのよ! この子は私の娘! 悪魔だからってなによ! この子は何も悪いことはしてないわ」
ミレイ「悪魔が人間に宿る場合、精神的エネルギーは宿主から吸い取る。だが、この悪魔の宿主は死んでいる。では、どこから精神エネルギーを得ているのか……」
貴也「……母親から」
ミレイ「そうだ。何も悪さしていないわけではない。あなたに実害が出ている」
女性「だから何なのよ! 私自身がいいって言ってるのよ!」
女の子「私ね、悪魔だけど、悪いことしてないよ? お母さんとずっと一緒に暮らしたいだけ。他の人にも迷惑はかけないわ」
貴也「……あの、お互いに納得しているのなら……」
ミレイ「私たちの仕事は悪魔を祓うことだ」
貴也「でも、この事例は誰にも害は出ていません。祓わなくたって……」
ミレイ「おそらく、母親の方は10年くらいはもつだろう。だが、その後はどうする?」
子供「お母さんが死んだら、私も消えるわ」
ミレイ「どこにその保証がある? ……いや、きっと、この母親が死ぬ前に他者から精神エネルギーを得ようとするだろう」
女の子「それがなによ! 別に死ぬまで吸い取るわけじゃないからいいじゃない!」
ミレイ「死ぬ死なないじゃないんだ。悪魔が他者から精神エネルギーを得ることは、人間の世界では違法なんだ」
女性「やめて! 帰って!」
ミレイ「言い残すことはあるか?」
女の子「お願い! 助けて! 見逃して」
ミレイ「……消えろ」
女性「やめてーーーー!」
場面転換。
ミレイと貴也が並んで歩く。
貴也「本当によかったんでしょうか?」
ミレイ「なにがだ?」
貴也「母親の方は精神的に異常をきたしました。あれなら、まだ……」
ミレイ「悪魔を残しておいた方がよかった」
貴也「……」
ミレイ「エクソシストは悪魔を祓うのが仕事だ」
貴也「それはそうですが……」
ミレイ「君は本当におかしい奴だな。私より、よっぽど君の方が悪魔に手心を加えている」
貴也「……」
ミレイ「エクソシストをやっていれば、こいうことはある。助けた人間から罵倒されることだって、な」
貴也「ミレイさんは気にならないんですか?」
ミレイ「気にする必要はあるのか? 何度も言うがエクソシストは悪魔を祓う仕事だ。それ以上でも以下でもない。どんな罵声や誹謗中傷を受けても、気にせず仕事を全うするだけだ」
貴也「強いですね……」
ミレイ「悪魔だからな。人間の言うことで傷ついたりはしない」
貴也「さすがです」
ミレイ「ん!」
ピタリとミレイが立ち止まる・
貴也「……アンティークショップに何か用なんですか?」
ミレイ「見ろ! あの人形! 凄い可愛いと思わないか!?」
貴也「はは。ミレイさんって、何か、あんまり可愛いものって似合わないですよね」
ミレイ「……っ! ガーン……」
貴也「あれ? 人間の言うことで傷ついたりしないんじゃないんですか?」
終わり。
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