【声劇台本】好意の贈り物
- 2021.10.01
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー
■キャスト
隼(はやと)
仁(じん)
御門 祥子(みかど しょうこ)
■台本
学校のチャイム。
隼が廊下を歩いている。
隼「……あいつ、どこ行ったんだ? あ、いた! おーい、仁!」
仁「ああ、隼」
隼「ああ、隼、じゃねえよ。探したぞ。帰りに本屋寄るんだろ?」
仁「そうだったな。じゃあ、ごめん。行くね」
祥子「あ、う、うん。さよなら」
隼「……」
仁「ほら、行こうぜ」
隼「あ、ああ……」
隼と仁が歩き出す。
隼「……あの子、だれ?」
仁「ああ、御門祥子さん。隣のクラスの子なんだけどさ、結構、話が合ってさ」
隼「マジで? お前と話合う奴がいるのか」
仁「失礼な」
隼「……抜け駆けは許さねえぞ」
仁「は? ああ、いや、彼女とかそんなんじゃねーよ」
隼「ならいいけど……」
仁「それより、走るぞ。本屋閉まりそうだ」
隼「いや、お前を探してて遅くなったんだぞ」
二人が走り出す。
場面転換。
自動ドアが開き、二人が出てくる。
仁「いやー、あったあった。さすが、町で一番デカい本屋だな」
隼「……笑顔でその本を買うのは、やっぱり怖いって」
仁「そうか? でも、この呪い辞典スゲーんだぞ」
隼「いや、だから、俺はそれには興味ねーって」
仁「そうか。楽しいのになぁ」
隼「やっぱ、お前、変わってるよ」
場面転換。
学校のチャイムが鳴る。
廊下を歩いている隼。
隼「……えーっと、いた! おーい、仁」
仁「ああ、隼。ごめん、今、行く。御門さん、じゃあね」
祥子「う、うん。さようなら」
二人が廊下を歩く。
隼「……なあ、仁。やっぱり、お前ら」
仁「気にしすぎだって。それに、お前のことも聞かれたぞ」
隼「へ? 俺のこと?」
仁「ああ。名前とか血液型とか、誕生日とか、色々。もしかしたら、俺より、お前に興味があるのかもな」
隼「え? マジで? あーでも、どうだろうな? あんまり接点ない子だし」
仁「なんか、俺とよくいるから、見てたって言ってたぞ」
隼「……そ、そうなんだ?」
仁「おい、なににやけてるんだよ。抜け駆けは許さねーんじゃなかったのか?」
隼「わ、わかってるって」
場面転換。
階段を走って登る隼。
隼「はっ! はっ! はっ!」
階段を登り切り、ドアを開ける。
隼「ご、ごめん。お待たせしちゃって。……で、あの、話ってなに?」
祥子「あ、あの……隼さんに贈り物があって……」
隼「へ? 俺に?」
祥子「はい。あの……この人形、私だと思って受け取ってくれませんか?」
隼「え? その……あ、うん。わかった。ありがとう」
祥子「それで、その……。代わりと言ってはなんですけど、髪の毛を一本いただけませんか? お守りに入れたくて」
隼「ああ、もちろん、いいよ! はい!」
祥子「ありがとうございます。大切にしますね」
隼「う、うん……」
場面転換。
道を歩く隼と仁。
隼「ふふふふーん」
仁「随分とごきげんだな。なんかいいことあったのか?」
隼「いや、別に」
仁「そういえば、昼休み、どこ行ってたんだ?」
隼「ああ。ちょっと腹壊してさ。トイレにこもってた」
仁「ふーん……」
場面転換。
学校のチャイムが鳴り響く。
階段を上り、ドアを開ける隼。
隼「祥子ちゃん、お待たせ」
祥子「来てくれてありがとうございます」
隼「で、今日はなに?」
祥子「今日はこれを貰ってほしくて……」
隼「ありがとう。祥子ちゃんがくれるってだけで、嬉しいよ」
祥子「ありがとうございます」
隼「でもさ、なんで、こんなに俺にプレゼントくれるの?」
祥子「私の持ち物を、隼さんが持っててくれる……。そう考えるだけで嬉しくって」
隼「そ、そうなんだ? 肌身離さず持ってるよ」
祥子「ありがとうございます!」
隼「あ、あのさ、祥子ちゃん」
祥子「なんですか?」
隼「えーっと、その……ううん。なんでもない。また今度ね」
祥子「はい。……って、あれ? 隼さん、指の絆創膏、どうしたんですか?」
隼「ああ、調理実習でちょっと切っちゃってさ」
祥子「血がにじんでますよ。新しいの貼りかえますね」
隼「ありがとう」
祥子が隼の絆創膏を貼りかえる。
祥子「じゃあ、この古い絆創膏は私の方で処分しておきますね」
隼「うん。ありがとう」
場面転換。
隼と仁が歩いている。
隼「仁、ごめん」
仁「なんだ、いきなり」
隼「俺、抜け駆けするわ」
仁「……え? なんだ? 彼女が出来たって話か?」
隼「まだだけど……多分、俺のこと好きなんだと思う」
仁「へー。誰?」
隼「あの、その……言いにくいんだけど、祥子ちゃん」
仁「……御門さん?」
隼「そう。てっきり、お前のことが好きなのかなって思ってたんだけどさ、俺の方を好きだったみたい。だから、今度、俺から告白しようかなって思って」
仁「そっか……」
隼「実はさ、昼休み教室にいなかったのは、祥子ちゃんに会ってたんだ」
仁「怪しいとは思ってたんだよ。毎日、腹壊してたからさ」
隼「ごめん。黙ってて。祥子ちゃんから、色々プレゼント貰ってさ。なんか、それをお前に言うのが照れ臭かったんだ」
仁「プレゼントか。ちなみに、どんなの?」
隼「これと、これと、これ……」
仁「……」
ピタリと立ち止まる仁と隼。
隼「おい、急に立ち止まって、どうしたんだよ?」
仁「これ、御門さんから?」
隼「うん。こんなにプレゼントしてくれるのって、好意があるってことだよな?」
仁「……えっと、お前の方から髪の毛とか血とかくれって言われなかったか?」
隼「は? えーっと、ああ、髪は言われたな。血は……ああ、絆創膏についてたかも」
仁「……」
隼「どうしたんだよ?」
仁「これ、呪いの儀式のものばっかりだ」
隼「……へ?」
場面転換。
学校のチャイムが鳴り響く。
バタンとドアが開き、仁が戻って来る。
隼「しょ、祥子ちゃん、なんて言ってた?」
仁「えっと……。いつも俺と話しているのを邪魔するから、目障りだったんだってさ」
隼「……」
仁「呪いの方はちゃんと止めさせたから安心していいぜ」
隼「……女って怖ぇ」
終わり。
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