【声劇台本】そっくりなあいつ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
俊(すぐる)
喜多村 孝也(きたむら たかや)
美弥子(みやこ)
志保(しほ)
その他

■台本

俊「えっと……どちら様ですか?」
美弥子「とぼけないで! あなたに捨てられた、美弥子よ!」
俊「ああー。もしかして、喜多村孝也の知り合いの方?」
美弥子「あなたを殺して、私も死ぬ―」

ナイフを振り回す美弥子。

俊「ちょ、ちょっと待ったー!」

俊(N)「くそ。まただ! あいつのせいで、俺は……」

場面転換。

俊(N)「喜多村孝也。俺と同年代の俳優だ。6歳の頃、子役としてデビューし、20年経った今でも、現役のトップ俳優として活躍している。そこまでだったら、別にいい。同年代の俳優として、応援もしただろう。だが……。これだけは……これだけは、絶対に許せないのだ」

中年女性「あらー。俊くん、あの子役……喜多村孝也くんにそっくりね―」

高校生女子「あの、俊先輩って、俳優の喜多村孝也に似てますよねー。格好いいです」

大学生男子「おい、俊! お前、今度の合コン、絶対に出てくれよな! 喜多村孝也にそっくりってだけで、すげー盛り上がるからさ」

俊(N)「そりゃ、少しは良い目もしてきた。イケメン俳優とそっくりということは、俺自身もイケメンということだ。……まあ、ほとんど、喜多村孝也にそっくりという目でしか見られていなかったが……。ただ、そんなある日のことだった……」

女性1「聞いた? 喜多孝(きたたか)、三股だってさー。サイテー」
女性2「知ってるー。ちょっと、イケメンだからって調子に乗り過ぎ」
女性1「性格も最悪って聞いたよ」

俊(N)「……言ってしまえば他人のことなのだから、気にしなければいい。別に自分の悪口を言われているわけではない。ただ……そのへんをごっちゃにする人も少なくないわけで……」

女性3「私、喜多村の顔を見るだけで嫌な気分になるの」
女性4「顔が似てるってことは、性格も似てるってことでしょ?」
女性5「似てるだけって、芸能人じゃないなら意味ないよねー」

俊(N)「奴の世間の評価がひっくり返った瞬間、俺の世間の評価もひっくり返ってしまった。当時付き合っていた人とも別れることになった。あなたも二股かけてるでしょ、と言われて……。だから、俺は吹っ切れた。あいつのせいで、俺が損するっていうなら、あいつにも損させてやる」

女性6「ええー。そんなこと言って―。また二股かける気なんでしょ? ……でもいいよ。喜多村孝也と知り合いなんて、友達に自慢できるし」
美弥子「ホントですか? 芸能界に口利きしてくれるんですか? わかりました。私、なんでもします!」
店員「かしこまりました。喜多村孝也様で、ツケにしておきますね」

俊(N)「まあ、今更、一つや二つの悪い噂が立っても、どうせ本人も気づかないだろう。そんな考えで、色々と問題を起こしていたときだった……」

志保「私は俊くんが好き。喜多村孝也に似てなくたって……全然違う顔でも好きになったと思う。だって、私は俊くんの心が好きだから」

俊(N)「俺は悪行をすっぱりと止めた。ちゃんと俺を見てくれる人がいる。俺だけを見てくれる、志保がいる。それだけで、俺は救われたんだ。……それなのに」

場面転換。

美弥子「ふー、ふー!」
俊「落ち着いて。ね? あなたは誤解してんだ」
美弥子「誤解ですて! 私のことはやっぱりあれは冗談だったってこと!?」
俊「だから、俺は喜多村孝也じゃないんだよ!」
美弥子「何年も待ったのに……。準備して、待ってたのに!」

ナイフを振り回す美弥子。

俊「うわー! た、助けてくれ! そ、そうだ!」

携帯を操作する俊。
発信を押す。

俊「あっ、もしもし! 志保か? 助けてくれ!」
志保の声「え? あれ? なんで?」
俊「とにかく助けてくれ! 今、家にいる!」
志保の声「え? 家? どっちの?」
俊「どっちって、アパートの2階の……」
志保の声「わ、わかった! すぐに二人で行くね!」
俊「二人? まあいいや! とにかく来てくれー!」

場面転換。

美弥子「ふーふー!」
俊「落ち着いて。ね? ね?」

ピンポーンというインターフォンが鳴る。

俊「志保か! 開いてるから入ってきて!」

ガチャリとドアが開き、二人が入って来る。

孝也「……お前が」
俊「へ? え? あれ?」
美弥子「……え? 喜多村孝也が二人……」

孝也「お前がー! お前のせいでー!」
俊「うわわ! なになに? なんで俺の方に来るの?」
志保「ちょっと落ち着いて! 俊くん、説明して!」
俊「いや、俺にもなにがなんだかさっぱりで……」

場面転換。

俊「俺の……せい?」
孝也「そうだよ! お前が俺の名前を使って、悪い噂、広めただろ!」
俊「いや、違うって! お前が最初に二股かけたからだろ!」
孝也「だから、あれは誤解なんだよ! 当時、俺は確かに付き合ってた人がいたんだ。けど、お前が他の人と付き合っているのを週刊誌が誤解して、俺が二股をしたって記事を出したんだ」
俊「え? そうだったの?」
孝也「それからは、俺は身の潔白を晴らそうと、模範となるような行動を取った。だが、どうだ。一向に悪い噂はなくならない。それどころか、増えていく一方だ!」
俊「……俺が色々やってた話か」
孝也「そうだ。ぜーんぶ、お前が悪いんだ」
俊「け、けど! この人はどうだ? お前に騙されたって言ってるぞ!」
孝也「……見たことない人だ」
美弥子「わ、私は、芸能界に紹介してくれるって聞いて、色々と尽くしました」
孝也「俺は、軽々しく芸能界に紹介するなんて言わない。そもそも、芸能界なんて大雑把じゃなく、どこの事務所に紹介するって形で言うはずだ」
俊「……あっ! 俺だ」
孝也「おーまーえーなー!」
美弥子「私を二重で騙したのね!」
俊「悪かった! 許してくれ! もう、悪いことはしない! 俺は真人間になるって決めたんだ! 好きな人ができたから……。そう、志保がいるから」
志保「……俊くん。ごめん」
俊「え?」
志保「最近、なんかおかしいとおもってたんだけど……。私、孝也くんとも付き合ってたみたいなの」
俊「へ?」
孝也「……お前のことを調べてたら、志保と会ってな。お前のことを聞きたくて、お前のフリしてたんだ」
志保「……それで……その……」
俊「ん?」
志保「どうやら、私、孝也くんの方が好きみたい」
俊「なんじゃそりゃーーーー!」

俊(N)「自業自得……。まさに、その言葉がぴったりだ。他人と似てるからって、悪いことをすると必ず報いがあるってことなだろう……」

終わり。

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