鬼と桃太郎
- 2023.08.05
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、和風ファンタジー、シリアス
■キャスト
村人1~8
一郎 5歳、15歳
鬼1~12
桃太郎 23歳
猿 32歳
犬 33歳
雉 34歳
子鬼 5歳
■台本
村の中。農作業をしている村人たち。
村人1「おーい、そろそろ昼休憩しようや」
村人2「ああ。そうだな。みんな、休憩しよう」
村人たちが集まって、座る。
村人3「いやあ、今日も暑いなぁ」
村人4「今年は晴れが多い。豊作だな」
村人1「そういえばさ、この前、うちのガキが海辺で鬼っ子見たってよ」
村人3「鬼? まだ生きとったんか?」
村人4「……どうする? 村の若いもん集めて、狩りに行くか?」
村人2「別にいいだろ。鬼っつっても、子供だろ? 害はないさ」
村人4「いや、子供がいるってことは、親がいるってことだろ?」
村人1「そうそう。まだ3体とかだといいけど、もっといたら、ヤバいだろ」
村人3「うーん。確かにな。不安の芽は摘んでおくか。明日、若いもん集めて、狩りに行こう」
村人4「よし、じゃあ、村長に話しとおしておくよ」
そのとき、遠くで物音が聞こえてくる。
村人1「なんだ? 村の方が騒がしいな」
村人2「なんかあったか?」
そのとき、村人5が走って来る。
村人5「大変だ! 鬼だ! 鬼が攻めてきたぞ!」
村人4「なんだって!?」
後ろから鬼1がやってくる。
村人3「う、後ろ!」
村人5「え?」
鬼1「ガアアアアアア!」
鬼1が村人5を切り殺す。
村人5「ぎゃあああああ!」
村人1「鬼だ!」
村人3「に、逃げろ!」
鬼が大勢やって来る。
鬼2「グゴアアアアア!」
鬼たちが村人たちを殺していく。
村人3「ぎゃあ!」
村人2「うがあっ!」
鬼たちが暴れ回る。
場面転換。
村の中。
鬼たちが村人たちを殺し、暴れ回っている。
鬼3「グガア!」
村人6「ぎゃあ!」
村人7「た、たすっ……ぎゃあ」
阿鼻叫喚。
その声がドンドンと収まっていく。
鬼4「はあ、はあ、はあ……」
鬼5「人間は一人も残すな! 皆殺しだ!」
鬼6「おおおー!」
場面転換。
家の中。
一郎「……はあ、はあ、はあ(恐怖で震えている)」
バンと家のドアが蹴り破られる。
鬼7「……」
一郎「ひっ!」
鬼7「……お前、一人か?」
一郎「う、うう……」
鬼7「親は?」
一郎「殺された……」
鬼7「……」
外から違う鬼の声。
鬼1の声「おい! そっちはどうだ? 人間が隠れてないか?」
一郎「ひっ……」
鬼7「……いや! いない! ここはもぬけの空だ!」
鬼1の声「そうか。おい、みんな! 最後に火を放つぞ。絶対に、一人も逃すな!」
一郎「……」
鬼7「おい。もうすぐここに火を放たれる。隙を見て、逃げろ」
一郎「……」
場面転換。
10年後。
森の中。
男1「……よし。ここは全然、荒らされてないな」
村人7「そっちはどうだ?」
男1「キノコや山菜、かなり採れたぞ」
男2「そっか。こっちはダメだ。鹿やイノシシもいない。もう狩られたんだろうな」
男1「……ということは」
男2「ああ。この辺りも鬼がいるんだろうな」
男1「鬼ヶ島から、結構、離れてるんだけどな……」
男2「くそ。あいつらさえいなければ、畑を耕せるのに」
男1「鬼が出てから10年……。人間たちは隠れ住むのが精いっぱいだからな。人が集まって村なんて作ろうものなら、襲ってくれって言ってるものだ」
男2「あいつらさえ……。あいつらさえ現れなければ……」
そのとき、ガサガサと草を掻き分ける音。
鬼8「うおおおおお! 人間!」
男1「うわああ! 鬼だ!」
鬼8「おおおおおおおお!」
男2「うああああああ!」
そこに桃太郎が走ってくる。
桃太郎「うおおおおおお!」
鬼8を斬る。
鬼8「グアアアアアア!」
鬼8が倒れる。
桃太郎「ふう。……お主たち、大丈夫か?」
男1「あ、ありがとう!」
男2「あんた、剣士か?」
桃太郎「ああ。各地を修行で回っている。……で? この生物はなんなのだ?」
鬼1「あんた、鬼を知らないのか?」
桃太郎「鬼? 鬼とはなんだ?」
場面転換。
男1「ということなんだ」
桃太郎「ほう。それは面白いな」
男2「面白い?」
桃太郎「俺は修行と同時に、名をあげることを目的としているんだ。その鬼というやつらを退治すれば、名を上げられそうだ」
男2「そんなことができれば、あんたの名を知らぬ者はいなくなるさ」
桃太郎「ふむ。……猿、犬、雉!」
猿・犬・雉「はっ!」
どこからか、猿、犬、雉の剣士が現れる。
桃太郎「今から、その鬼とやらを成敗に行く。ついてこい」
猿・犬・雉「はっ!」
場面転換。
鬼ヶ島内。
桃太郎たちが鬼たちを次々と殺している。
桃太郎「はああああ!」
鬼9「ぐあああ!」
猿「はあっ!」
鬼10「ぎゃあ!」
鬼11「た、たすけ……ぐああっ!」
犬「ふう……」
鬼12「くそ、人間がっ!」
桃太郎「ふん!」
桃太郎が鬼12を叩き切る。
桃太郎「……こんなものか」
雉「この辺りの鬼は全て駆逐できたかと」
桃太郎「よし、何体かの鬼の首を持って帰るぞ」
猿「御意」
場面転換。
祭りが行われている。
男3「本当にありがとうございました!」
男4「これで、鬼の脅威に震えることなく暮らせます」
桃太郎「お前たちは、俺の名を語り継いでくれればいい」
男3「あなたの名は?」
桃太郎「そうだな……。桃太郎と呼んでくれ」
その様子を見ている、子供の鬼。
子鬼「く、くそ……。こ、こうなったら!」
飛びだそうとする小鬼。
それを取り押さえる一郎。
一郎「ダメだ!」
子鬼「え?」
一郎「出て行けば、お前は殺される」
子鬼「わかってる! でも」
一郎「生きるんだ。一族の血を絶やす気か?」
子鬼「……」
一郎「これからは生き延びることだけ考えるんだ。いいな?」
子鬼「……お前はなんで、こんなことをしてくれる?」
一郎「俺は10年前……鬼に見逃してもらった。だから、今度は俺の番だ」
子鬼「そうか……」
一郎「さあ、他の人間に見られる前に立ち去るんだ」
子鬼「……わかった」
子鬼が歩き出す。
一郎「……元気でな」
場面転換。
子鬼が歩いている。
子鬼「……人間め。いつか……いつか、復讐してやる」
終わり。