【フリー台本】正義の味方

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
光輝(こうき)
澪(れい)
その他

■台本

光輝が街頭で演説をしている。

光輝「大臣は実績や技術レベルで選んだと言っていますが、この会社は大臣の親族が経営しています。どうですか、みなさん! これが今の政府の現状です! こんな腐った政府を野放しにしていいのでしょうか!」

そこに警察がやってくる。

警察官「君、何してるんだ、こんなところで」

光輝「なにって……演説してるんですよ」

警察官「誰も聞いてないじゃないか」

光輝「聞いている人数は関係ありません。私は私の主張を……」

警察官「他でやってくれ。迷惑だ。ったく、それでなくても怪人の後始末で大変なのに」

光輝「……言論の自由の侵害だ」

警察官「あのねえ。道の真ん中で演説する許可取ったの? 取ってないでしょ?」

光輝「申請しても通らないじゃないですか」

警察官「知らないよ、そんなこと。とにかく撤収してくれ。これはルールだから」

光輝「そのルールには正義を感じない。正義のないルールは……」

警察官「逮捕するよ。前科持ちなら、次の選挙も絶望的になるけど」

光輝「……くっ」

そのとき、ドン、とぶつかる音。

お婆さん「きゃあっ!」

若者「邪魔だよ、ババア!」

光輝「あいつ……なにやってんだ! 注意してくださいよ」

警察官「……あんまり細かいことに首を突っ込んでもねぇ……」

光輝「なんのための警察なんですか?」

警察官「はあ……。はいはい」

歩いて行く警察官。

警察官「ちょっと、君。そういうことをするのはいただけないな」

若者「あんた、名前は?」

警察官「え?」

若者「俺の名字は若元ってんだけど」

警察官「若元……若元警視正の息子さん! し、失礼しました!」

若者「もう、行っていい?」

警察官「え、ええ。はい。どうぞ」

若者が行ってしまう。

光輝「ちょ、ちょっと、何してるんですか」

警察官「うるさい! どうせ、婆さんがよそ見して歩ていたからだろ。婆さん、今度からは気を付けて歩くように」

お婆さん「は、はい……すみません」

光輝「なっ! あんた、それでも警察官か!」

お婆さん「いいんだよ。もういいんだ」

光輝「で、ですが……」

警察官「俺は怪人の後始末で忙しいんだ。もう行くぞ」

警察官が行ってしまう。

光輝「荷物、持ちますよ」

お婆さん「ありがとうね」

二人が並んで歩く。

お婆さん「一体、この国はどうしちまったんだろうね。昔は、こんなんじゃなかったのに」

光輝「……俺が変えてみせます。必ずこの国とのトップになって、国を変えてみせます」

お婆さん「無理さ。誰がトップになっても変わりやしないよ。……じゃあ、ここで大丈夫さ。ありがとうね」

光輝「……」

お婆さんが行ってしまう。

女の子「止めてよ!」

男の子「うるせー! お前が、こんなやつを庇うからだ!」

女の子「返してよ! 大切な物なの!」

男の子「へっ! じゃあ、怪人に食わせてやるよ!」

女の子「やめてー! 返して」

ゴンと男の子の頭に拳骨を落とす光輝。

男の子「いってーーーー!」

光輝「女の子をイジメるんじゃない!」

男の子「お、大人が暴力振るっていいのかよ?」

光輝「そこに正義があればな。それは暴力ではなく教育だ」

男の子「何言ってんだ、バーカ、バーカ!」

男の子が走って逃げる。

光輝「ったく。……大丈夫か?」

女の子「あ、ありがとう」

光輝「……イジメられてるのか?」

女の子「……えっとね。クラスにイジメられてる男の子がいて、それを止めるように言ったの」

光輝「そうか。偉いな」

女の子「……でも、それで大事な人形を取られちゃって……」

光輝「いいかい。君のしたことはいいことだ。だから、これからもそれを貫いてほしい」

女の子「でも……私なんかじゃ……」

光輝「大丈夫。正義は必ず勝つんだよ」

女の子「……ホント?」

光輝「ああ。必ずだ。だから信じて欲しい。正義は勝つって」

女の子「うん、わかった! 私、頑張る!」

光輝「偉いぞ! 頑張れ!」

場面転換。

澪「……ねえ、本当に行くの? 昨日も行ったばかりじゃない」

光輝「昨日行ったから、今日は行かなくていい、なんてことじゃない。俺は正義を貫くために行ってるんだ」

澪「……あんた、世間でなんて言われてるのか、わかってるの?」

光輝「俺は正義の為にやっている。今は例え届かなくても、いつかはみんな、わかってくれるさ」

澪「はあ……。はいはい。ホント頑固なんだから。じゃあ、これ、新しい変身ベルト。……毎回壊すから、博士、頭を抱えてたわよ」

光輝「大丈夫だ。今日こそ……勝つ!」

場面転換。

派手に建物を破壊する音。

光輝「うおおおお! 大臣だ! 大臣を出せ!」

ガオレイン「そこまでだ、怪人!」

光輝「……やっぱり来たか」

ガオレイン「街の平和を壊す者は、このガオレインが許さん!」

光輝「……一つ聞きたい。大臣を庇うことがお前の正義なのか?」

ガオレイン「俺の使命は街の平和を守る! それだけだ!」

光輝「思考停止するな! 正義がどちらにあるか考えろ!」

ガオレイン「黙れ! いくぞ、怪人!」

光輝「まあいい! 今日こそ勝って、この国を立て直してみせる!」

ガオレイン「うおおおお!」

光輝「ガアアアアアア!」

激しい攻防の中で、ガオレインが吹き飛ばされる。

ガオレイン「うわっ!」

光輝「よし! 今日こそ!」

女の子「負けるな―! ガオレイン!」

光輝「……あ、あの子は」

女の子「正義は必ず勝つんだよ! 頑張って! 諦めちゃダメ!」

光輝「……ち、違う。正義は俺……」

ガオレイン「こんなところで負けられない! 俺には街の人たちを守るって使命があるんだ!」

光輝「……」

ガオレイン「はああああ! ガオレインキーック!」

蹴りが光輝に直撃する。

光輝「うわああああああ!」

光輝が吹き飛ばされて建物に当たり、建物が崩壊する。

場面転換。

澪「……もう、いい加減にしたら? 先週の傷、まだ治ってないんでしょ?」

光輝「傷がなんだ。俺は正義のために戦い続けるんだ!」

澪「怪人の格好で言われてもね……」

光輝「……それは博士に言ってくれ」

終わり。

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