【フリー台本】あるマスコットの都市伝説

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
寛人(ひろと)
未希(みき)
女の子
男の子
男客
女客

■台本

寛人(N)「テーマパーク、ネズミ―ランドのマスコットであるミルキーマウス。顔はネズミなのだが、ダイナマイトボディで妙に色気があるため、一部の、体は大人の子供たちに人気がある。だが、このミルキーマウスには決して表では語られることはない都市伝説がある」

園内。人が大勢賑わっている。

男客「知ってるか? ミルキーマウスの中に入ってる人って男なんだってさ」

女客「確かに、体力的にもきつそうだからね。着ぐるみだから、中は別に男でもいいってわけなんだ?」

寛人「……」

寛人が無言で歩いているが、ピタリと立ち止まる。

寛人「やっぱりかー。あの都市伝説は本当だったんだな……」

寛人(N「そんなことは言われなくても、薄々は気づいていた。着ぐるみなんだから、中の人間は誰でもいいんだって。でも……でも! あのダイナマイトボディはワンチャン、本物かもって夢を持つもんじゃん! 男なら! それに、マスコットなら触っても誤魔化せると思うじゃん!」

寛人「はあ……」

男の子「あー! ミルキーマウスだー!」

寛人(N)「ミルキーマウスと戯れる子供たち。……あの我儘ボディに抱きしめられる子供の姿を見て、何度、子供に戻りたいかと思ったことか。一時期、本気で黒ずくめの人の後をつけまくったたこともあるほどだ。だが、それも今となっては虚しい行為だと言える。ミルキーマウスの中身がおっんだと考えると……心底、麻酔針を打つ危ない眼鏡の子供にならなくてよかったと思う」

寛人「……帰るか」

そのとき、トントン、と肩を叩かれる。

寛人「ん? あ、ミルキーマウス……」

スッと風船を差し出される。

寛人「風船? 俺はいらな……いや、もらうよ、ありがとう」

ミルキーマウスが行ってしまう。

寛人「……はあ。わかってるのに。中身がおっさんだってわかってるのに……。見ちまうなぁ、体……。ホントにもう帰ろう」

場面転換。

寛人の歩く音。

女の子「うう、うえーん!」

寛人「ん? ……どうしたんだ?」

女の子「うえーん!」

寛人「……ほら、これやるから、泣き止め」

女の子「……風船?」

寛人「ああ。ミルキーマウスの風船だ。それより、親はどうしたんだ?」

女の子「……はぐれちゃった」

寛人「迷子か。しょうがないな。ほら、手を出せ。迷子センターに連れてってやる」

女の子「うん」

手を繋いで寛人と女の子が歩く。

ミルキーマウス「おおおお! とりゃー!」

ミルキーマウスが走ってきて、寛人の背中を思い切り蹴る。

寛人「ぐあっ!」

ミルキーマウス「この変態、人さらい! 成敗してやるわ!」

寛人「ちょ、ちょっと待て! 俺は迷子の子をセンターに連れてこうと思っただけだ」

ミルキーマウス「へ? そうなの?」

女の子「うん」

場面転換。

未希「本当に、ごめんなさい! さっき、風船あげたとき、一人だったでしょ? だから、てっきりロリコン変態、人さらいだと思って……」

寛人「罵倒のキーワード、増えてないか?」

未希「あの女の子は無事に両親に会えたわ。本当にありがとうね」

寛人「ああ。別にいいよ。……それより」

未希「なに?」

寛人「……女、だったんだな」

未希「あっ! やばっ! お願い! このことは黙ってて!」

寛人「喋る気はないけど……。でも、なんで、中身がおっさんって噂が立ったんだろうな。あ、もしかして、入れ替わり制とか?」

未希「ううん。中身に入れるのは、本部の難しい実地試験をクリアしないといけないから、日本だと、私ともう一人しかいないんだよね。その人も女の人なんだけど」

寛人「あー、確かに、動作とか凄い凝ってるもんな。やっぱり、そういう試験があるのんだ?」

未希「一年の訓練も受けるしね」

寛人「思ったより、ホントハードなんだな。けど、それなら、なんで男って噂が立ったんだろうな?」

未希「実は。その噂は私たちが流してるの」

寛人「え? そうなのか?」

未希「うん。入園したときに、大声で噂してるカップルいなかった?」

寛人「……ああ、いたいた」

未希「あの人たちもスタッフなんだよね」

寛人「なんで、また、そんなことを?」

未希「……それが……その……セクハラが多くて」

寛人「セクハラ?」

未希「頭の中が子供の大人が、マスコットだから許されるだろ、の精神で触って来るんだよね」

寛人「……うっ! 頭と心がっ!」

未希「で、中身は男だって噂を流してもらったの。そしたら、ピタリと止んだわ」

寛人「かなり効果てきめんだったわけだ。わかるよ。うん、とてもわかる。一気に冷えるもんな」

未希「でも、たまに男の子が気にせずに触ってきたりするんだけどね」

寛人「くっ! ズルい! なあ。園内に黒ずくめの二人組とか見なかったか?」

未希「え? ……そんな不審者がいたら、すぐにつまみ出されると思うけど」

寛人「……この問題はあとから考えるとして、大変だったんだな。セクハラされても、手を出すわけにもいかないし」

未希「……」

寛人「ん? どうした?」

未希「いやあ……。実はセクハラにカッとなって、何回かお客さんを半殺しにしちゃったんだよね」

寛人「……何回か、やったのか」

未希「おかげで、一時期、キルユーマウスってあだ名がついちゃって……」

寛人「……」

未希「それで、中身が男って噂を流そうって提案してくれたのは園長なんだよね」

寛人「そ、そうだったんだ……」

未希「だから、お願い! このことは黙ってて!」

寛人「いやいや。話すつもりはないよ。ホントに」

未希「ホント!? ありがとう!」

寛人(N)「ふふふ。そう。このことは俺だけが知っていればいいのだ。この俺だけが……」

場面転換。

園内。人が大勢賑わっている。

男客「知ってるか? ミルキーマウスの中に入ってる人って男なんだってさ」

女客「確かに、体力的にもきつそうだからね。着ぐるみだから、中は別に男でもいいってわけなんだ?」

寛人「……」

寛人が歩いている。

男の子「あー! ミルキーマウスだー!」

寛人「あ、いたいた」

寛人(N)「ふふふ。噂では中身が男だと思われている。そんなミルキーマウスに触りにいったところで、周りは痛い人間と思うだけで止めようとしないはず。つまり! 触り放題というわけだ! 中身が女の子だって知っているのは、俺だけなのだから!」

走り出す寛人。

寛人「ミルキーマウスちゃはーん!」

ミルキーマウス「はあっ!」

ミルキーマウスが寛人を殴り飛ばす。

寛人「ぶべっ!」

終わり。

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