【フリー台本】母親との再会
- 2022.06.11
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:2人
時間:5分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
博人(ひろと)
雫(しずく)
■台本
博人「お母さんはね、雲の上に行ってしまったんだ。だからね、もう、家には帰ってこられない。でもね、悲しむことはないんだ。お母さんはちゃんと雲の上から雫を見ていてくれるんだから」
博人(N)「妻が事故で亡くなった。5歳の娘に理解させるには、まだまだ時間がかかるだろう。俺が娘に伝えた時も、少し驚いた顔をしたが、分かったと言って、頷いただけだった。時々、寂しがるが、泣き叫んだりはしていない」
ザーッと激しい雨が降る音。
雫「お父さん! 見て見て! 雨だよ!」
博人「うわ、ホントだ。すごい勢いだなー」
雫「えへへ。もっと降ればいいね」
博人「え? 雫は雨が好きなのか?」
雫「ううん。雨は好きじゃないよ。濡れちゃうし」
博人「そうだよな……。聞き違いか」
場面転換。
小降りになった雨音。
雫「……」
博人「おーい、雫。ご飯できたぞ」
雫「うん……」
博人「どうかしたのか?」
雫「雨が止んじゃいそうだなって」
博人「いいことじゃないのか?」
雫「明日、晴れるかなぁ?」
博人「どうだろうな。多分、晴れるんじゃないないのか」
雫「えへへへ。やったあ。それじゃ、ご飯食べるー」
博人「おう」
雫「あ、そうだ。お父さん。ドレス、どこ?」
博人「ドレス? ああ、あの赤いのか。うーん。どこにしまったかなぁ。でも、あれ、もう、雫には小さいかもしれないぞ」
雫「いいの。あれ、お母さんが買ってくれたやつだから」
博人「……でも、明日って、なにかあったっけ?」
雫「晴れるかもしれないから」
博人「……?」
場面転換。
博人「おお、雫。晴れたぞ」
雫「ホント?」
雫が走って来る。
雫「うわー。雲がなくなってるー」
博人「今日、どっか遊びに行くか?」
雫「ううん。家にいる」
博人「そっか……」
場面展開。
サーっと雨が降る音。
雫「頑張れー! 頑張れー!」
博人「……何を応援しているんだ?」
雫「雨」
博人「雨?」
雫「もっといっぱい降れー! って」
博人「なんで、もっと降って欲しいんだ? 雨、好きじゃないんだろ?」
雫「うん。だから、いっぱい、いーっぱい降って欲しいの。この前は足りなかったから」
博人「足りなかったのか?」
雫「うん。だって、お母さん、帰って来なかったから」
博人「……え? なんの話だ?」
雫「だって、お母さんは雲の上にいるんだよね?」
博人「あ、ああ……」
雫「だから、雨が降って雲が無くなれば、お母さん、帰ってくるよね?」
博人「……」
博人(N)「涙が流れた。雫は――健気に、まだ母親が帰ってくると信じていたのだ」
博人「雫……。お母さんはね、雲が無くなっても帰っては来れないんだ。……もう、二度と、お母さんには会えないんだ」
雫「……え? 嫌だよ」
博人「ごめん。ごめんな」
雫「お母さん、お母さん……うわーん!」
博人(N)「俺は娘を抱きしめ、ただ、謝ることしかできなかった」
場面転換。
雫「うわー、お父さん、見てー! いい天気」
博人「ホントだ。すごいな。雲一つない、晴天だ」
雫「おかーさーん! 雫、今日も元気だよー!」
博人「……雫」
雫「えへへ。お母さんとは、もう会えないかもしれないけど、雲がないなら、雫やお父さんのこと、見てくれてるよね?」
博人「……そうだな。きっと……いや、絶対、見ててくれているよ」
博人(N)「これからも、雫としっかりと生きていこう。だから、晴れ間から俺達を見守っててほしい」
終わり。
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