日常と幸せ
- 2022.10.27
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
教授
デイジー
A
B
C
■台本
ガチャリとドアが開き、デイジーが入って来る。
デイジー「教授。全員揃いました」
教授「うむ。では、一人目に入ってもらってくれ」
デイジー「わかりました」
場面転換。
ガチャリとドアが開き、Aが入って来る。
A「こ、こんにちは」
教授「わざわざ来てもらって、すまないね。私は今、人の幸福について研究しているんだ」
A「幸福……ですか?」
教授「君は今、自分が幸せだと思うかね?」
A「思いません」
教授「なぜだね?」
A「つまらないからです」
教授「つまらない?」
A「毎日が同じことの繰り返し、嫌になります」
教授「なるほど。では、君の言う、繰り返しの毎日がどんなものかを教えてくれるかな?」
A「えっと、朝起きて、ご飯を食べて、学校に行きます。帰ってきて、テレビを見て、ご飯を食べて、寝ます」
教授「なるほど。じゃあ、君はこんな日常は嫌なんだね?」
A「はい。普通の毎日なんか、嫌です。もっと楽しいのがいいです」
教授「わかった。ありがとう。では、こちらの椅子に座って、他の子の話を聞いていてくれ」
A「はい」
教授「じゃあ、次の子、入ってくれ」
ガチャリとドアが開き、Bが入って来る。
教授「さっそく、質問したいのだが、君は今、幸せかね?」
B「いいえ。幸せじゃないです」
教授「なぜかね?」
B「毎日が同じ繰り返しで、飽き飽きしてます」
教授「なるほど。では、君の毎日がどんなものか、教えてくれるかね?」
B「はい。まず、朝起きて、朝食まで勉強します。学校に行って、帰ったら塾に行きます。塾が終わったら、家で勉強して寝ます」
教授「なるほど。じゃあ、君はこんな日常は嫌なんだね?」
B「はい。もっと普通の毎日がいいです」
教授「わかった。ありがとう。では、こちらの椅子に座って、他の子の話を聞いていてくれ」
B「はい」
教授「じゃあ、次の子、入ってくれ」
ガチャリとドアが開いてCが入って来る。
教授「よく来てくれたね。では、さっそくだが、質問をさせてほしい。君は今、幸せかね?」
C「幸せ? あははは。んなわけねーじゃん」
教授「なぜだね?」
C「決まってんじゃん。毎日が同じことの繰り返しで、飽き飽きだよ」
教授「なるほど。では、君の毎日がどんなものか、教えてくれるかね?」
C「ん? えーっと、まず、5時に起きて、ランニング。帰ったら300本の素振り。学校に行って、授業が終わったら部活。帰ってから300本の素振りして寝るだけ。こんなの面白いわけないよ」
教授「なるほど。じゃあ、君はこんな日常は嫌なんだね?」
C「だから、そう言ってんじゃん。もっと普通の毎日が良い」
教授「そうか。ありがとう。では、みんな。最後に一つアンケートを取らせてほしい。別室で答えてくれ」
場面転換。
ガチャリとドアが開いて、デイジーが入って来る。
デイジー「教授、アンケート結果が出ました」
教授「どうなったかね?」
デイジー「全員が、Aくんの毎日がいいと出ました」
教授「Aくんもかね?」
デイジー「はい」
教授「ふむ。そうか」
デイジー「次はどんなアンケートを取りますか?」
教授「次は20年後だな」
デイジー「……20年後……ですか」
教授「ああ。しばらくは別の研究をしよう」
デイジー「わかりました」
場面転換。
20年後。
ガチャリとドアが開き、デイジーが入って来る。
デイジー「教授、お呼びでしょうか?」
教授「君は20年前のアンケートのことを覚えているかね?」
デイジー「20年前……ですか?」
教授「幸せについての研究だよ」
デイジー「……ああ、ありましたね。3人の子供にアンケートを取った研究ですね」
教授「そうだ。あれから20年経った今、もう一度、あの3人にアンケートを取ったんだ」
デイジー「どんなアンケートですか?」
教授「今、A、B、Cの中で、どの人生を歩みたいか、というものだ」
デイジー「その結果はどうだったのですか?」
教授「BとCはそのまま自分を選んだよ」
デイジー「Aはどう答えたんですか?」
教授「BかC。つまり、今の自分以外ならだれでもいい、だそうだ」
デイジー「……子供の頃は全員がAを選んだんですがね」
教授「そうだな。幸せというものは、そのときだけではなく、相対的に見ないといけないのかもしれんな」
デイジー「……難しいです」
教授「ふむ。これこそ、研究のし甲斐があるというものだよ」
終わり。
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