マラソン大会の決戦
- 2022.11.09
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ
■キャスト
岬(みさき)
勝巳(かつみ)
さやか
教師
■台本
学校の教室。
教師「いい? 来週にマラソン大会があるからね。みんな、しっかり準備するように」
ええーというブーイングが巻き起こる。
教師「そうそう。今年は創立50周年記念大会だからね。いつも8キロだけど……」
岬「ふふふふ。勝巳。ようやく貴様との決着をつけるときがきたな」
勝巳「ふん。それはこっちの台詞だ、岬。5分くらい差をつけて勝ってやるぜ」
岬「お、言ったな」
勝巳「ほえ面かくなよ」
さやか「ちょっと、二人とも。先生の話聞かないと。怒られちゃうよ」
岬「お、おう」
勝巳「わかってるって」
岬(N)「俺と勝巳との勝敗は1勝1敗」
勝巳(N)「つまり、今年の勝負で決着する」
岬(N)「だが、それ以上に……」
勝巳(N)「負けられない理由がある」
場面転換。
グラウンド。
生徒たちが大勢集まっている。
岬「いい天気だな」
勝巳「ああ。まさに決着をつけるにふさわしい日だ」
そこにさやかがやってくる。
さやか「晴れてよかったねー」
岬「ああ」
勝巳「なあ、さやか」
さやか「ん?」
岬「俺達の戦い……」
勝巳「ちゃんと見ててくれよな」
さやか「あははは。もう、二人ともガチ過ぎだよ。マラソンは、自分との戦いだぞ」
岬「……そうだな」
勝巳「わ、わかってるさ」
教師「はーい。男子、そろそろスタートだからこっち集まってー」
さやか「あ、先生が呼んでるよ」
岬「よし、行くか」
勝巳「ああ」
さやか「二人とも頑張ってね」
勝巳「さやかもな」
岬と勝巳が歩き出す。
岬「……絶対に勝つ」
勝巳「それは俺のセリフだ」
場面転換。
教師「よーい、スタート!」
パンとピストルの音が響く。
同時に、男子生徒たちが走り出す。
岬「はああああ!」
勝巳「うおおお!」
岬と勝巳がトップに躍り出る。
さやかの声が遠くから聞こえる。
さやか「ええー! ちょっと、二人とも飛ばし過ぎだよ!」
岬(N)「いや、大丈夫だ」
勝巳(N)「ペース配分なら、しっかり考慮している」
岬(N)「この日の為に、練習を重ねて体力をつけてきた」
勝巳(N)「8キロを走り切る体力をな」
場面転換。
岬と勝巳が並んで走っている。
岬「は、は、は、」
勝巳「ふ、ふ、ふ」
岬(N)「体が軽い」
勝巳(N)「いい調子だ」
岬「は、は、は、」
勝巳「ふ、ふ、ふ」
岬(N)「思えば、いつも勝巳と競ってるな」
勝巳(N)「俺と岬で競って、そして……さやかがそれを見ていた」
回想。
グラウンド。
勝巳「止め止め。逆上がりなんて無理」
岬「大体、逆上がりなんて、なんの役にも立たないし」
さやか「えー。せっかく練習してるんだから、もう少しがんばろーよ」
岬「めんどい」
勝巳「疲れた」
さやか「じゃあ、先に逆上がりできるようになった方に、チューのプレゼントする」
岬「うおおおおお!」
勝巳「はああああ!」
場面転換。
グラウンド。
岬「ほっ!」
勝巳「ていっ!」
二人が逆上がりする。
さやか「すごいすごい! 二人とも逆上がりできたじゃない!」
岬「……」
勝巳「……」
さやか「これで、次の授業もばっちりだね」
岬「な、なあ、さやか」
さやか「なに?」
勝巳「……チューのプレゼントは?」
さやか「二人とも同時だったから、なし」
岬「ええー! そんなー」
勝巳「嘘だろー!」
さやか「えへへへ」
場面転換。
岬、勝巳、さやかの3人で歩いている。
さやか「ずっとこのままがいいのにね」
岬「なにがだ?」
さやか「ほら、私たち、もうすぐ高校生でしょ? そしたら、こうやって3人でいることって少なくなるのかなーって」
勝巳「そんなことないだろ」
岬「そうそう。3人とも一緒の高校なんだし」
さやか「うん。そうだよね! ずっと3人、一緒だよね!」
場面転換。
岬と勝巳が並んで歩いている。
勝巳「なあ、岬」
岬「ん?」
勝巳「もうすぐ卒業だな」
岬「……ああ」
勝巳「さすがに大学で3人一緒っていうわけにもいかないだろ?」
岬「……そうだな。全員、バラバラの大学だからな」
勝巳「だからさ、卒業のときにさやかに告白しないか?」
岬「……意味ないって。あいつは断られた方のことを気にするからな。きっと、どっちも選ばない。というより、あいつにそんな負担はかけたくない」
勝巳「だから、告白するのは一人だけにしよう」
岬「……どういうことだ?」
勝巳「勝負で決めよう。勝った方がさやかに告白できる」
岬「……乗った!」
回想終わり。
岬と勝巳が並んで走っている。
岬「は、は、は、」
勝巳「ふ、ふ、ふ」
岬(N)「もうすぐ、8キロ……」
勝巳(N)「ゴール間近。長かったような、短かったような……」
岬(N)「勝巳とさやかとの3人でいるのは楽しかった」
勝巳(N)「けど、いつまでも続くわけがない。……だから」
岬(N)「さやかだけでも」
勝巳(N)「手に入れてみせる!」
岬「はああああああ!」
勝巳「うおおおおおお!」
岬と勝巳がラストスパートをかける。
岬(N)「ありったけを全部!」
勝巳(N)「この後、倒れたっていい!」
岬(N)「限界の……」
勝巳(N)「さらに先へ!」
岬「はああああああ!」
勝巳「うおおおおおお!」
岬と勝巳が全力で走る。
そして――。
岬「うおおー!」
勝巳「ゴーール!」
倒れこむ二人。
岬「はあ、はあ、はあ……。どっちが先だ?」
勝巳「はあ、はあ、はあ……。先生に、聞こうぜ」
教師がやってくる。
教師「……あんたたち」
岬「せ、先生……」
勝巳「どっちが勝っ……」
教師「なにやってんの?」
岬「え?」
勝巳「いや、ゴール……」
教師「今回は10キロって言ったよね?」
岬「……」
勝巳「……」
岬・勝巳「えええええっー!」
岬(N)「結局、俺達はこの後……」
勝巳(N)「リタイアした」
終わり。
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