魔王と勇者は忙しい6
- 2022.12.24
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
グドラス
ルドラ
ガリル
町人1~2
吟遊詩人
■台本
酒場。
町の人たちが宴会をしている。
町人1「いやぁ、ホント、今回はグドラスさんのおかげですよ。ありがとうございます」
グドラス「……町のみんなが一丸となった結果だ。そうでなければ、助けようと思わなかった」
町人2「グドラスさんには助けてもらってばかりだ。感謝してもしきれないよ」
グドラス「いや……我々も、人間には多くを学ばせて貰っている。感謝してばかりだ」
そのとき、吟遊詩人が語り出す。
吟遊詩人「さあさあ、今宵のお話は勇者、ガリルのお話でございます」
町の人たちの拍手が沸き上がる。
吟遊詩人「勇者ガリルは魔王軍と平和協定を結んだという伝説の勇者です」
グドラス「……勇者ガリルか。懐かしいな」
グドラス回想。
約150年前。
魔王の城。
ガリル「くそ、なんだ貴様は?」
グドラス「魔族総司令グドラスだ。よく、四天王を倒したな。まさか、私のところまで回ってくるとは思わなかった。褒めておこう」
ガリル「……ここまで来て、絶対引けない。人間の命運がかかっているからな」
グドラス「こちらもだ。我々も、魔族の命運がかかっている」
ガリル「人間と魔族、どちらかが滅ぶまで戦いを止めることはできない」
グドラス「……そうだな。所詮、違う種族。わかり得ることはできん」
ガリル「いくぞ!」
グドラス「来い」
ルドラ「ちょっと待った!」
ルドラがやってくる。
ガリル「……ルドラ」
ルドラ「はあ、はあ、はあ。ここは俺が引き受ける。ガリル、お前は先に行け」
ガリル「何を言ってるんだ!? その傷で戦えるわけがない」
ルドラ「へっ! このくらいの傷、大したことねーよ。お前は魔王との戦いに力を残しておけ」
ガリル「……ルドラ」
ルドラ「……勝てよ」
ガリル「任せろ」
ルドラ「というわけで、悪いな、あんたの相手は俺だ」
グドラス「いいだろう。だが、私はどんなに弱った相手でも、全力で叩く。覚悟するんだな」
ルドラ「望むところだ! うおおおおお!」
ルドラがグドラスへ向かって走る。
ルドラ「……がはっ!」
ルドラが倒れる。
グドラス「……」
ガリル「……」
ルドラ「く、くそ……」
ガリル「おい、ルドラ。何してるんだ?」
ルドラ「思ったより、傷が深かったみたいだ」
ガリル「いや……お前、ここは引き受けるって……」
ルドラ「体力の限界みたいだ」
ガリル「いやいやいや! お前、そこは時間稼ぎするなり、自爆するなり、やれよ!」
ルドラ「うっさいな! そんな体力、残ってねーんだよ!」
ガリル「じゃ、なんで出てきたんだよ!」
ルドラ「ノリだよ! こういう場面で、犠牲になるのって王道だろ」
ガリル「できてねーじゃん! ダメじゃん! 王道じゃねーじゃん」
ルドラ「うっさいな! お前だって、ここは魔族総司令を一撃で倒して、強さを見せつつ、魔王との戦いに入るのも、王道だろ」
ガリル「できるわけねーだろ! お前、俺の強さ知ってるだろ!」
ルドラ「じゃ、文句言うなよ!」
ガリル「お前、どーすんだよ! 俺、魔族総司令に勝てる気がしねーぞ」
ルドラ「知らねーよ!」
ガリル「魔王戦、どうする気だよ!」
ルドラ「どうせ、結局、最後はみんなに助けてもらうんだろ?」
ガリル「けど、それは魔王戦になってからだろ? 魔族総司令は自力で倒さないといけなくなるだろ!」
ルドラ「けど、さっきまでは、そうするつもりだったんだろ?」
ガリル「途中で、逃げようと思ってたんだよ! 天井とか破壊して、戦いをうやむやにしつつ、魔王のところへ行こうとしたんだよ」
ルドラ「じゃあ、それやればいいじゃん」
ガリル「いや、もう、作戦言っちゃったし! バレちゃったし! もう無理だっての!」
グドラス「……おい、お前達」
ガリル「くっ!」
ルドラ「……」
グドラス「行け、通してやる」
ガリル「え?」
グドラス「そこの、倒れているお前」
ルドラ「な、なんだ?」
グドラス「お前が時間稼ぎをしたということでいいな?」
ルドラ「あ、ああ……」
ガリル「じゃ、じゃあ、通っていいのか?」
グドラス「ああ。……魔王様は強いぞ」
ガリル「わかってる」
グドラス「……そうか」
ガリル「……言葉に甘えさせていただく」
ガリルが走っていく。
ルドラ「……」
グドラス「……なかなか苦労させられてるようだな」
ルドラ「ははっ。もう慣れたよ」
グドラス「ふふっ。なるほどな。魔王様も勇者と同様……いや、もっと理不尽なお方だ」
ルドラ「……そ、それはそれは」
グドラス「お互い、苦労するな」
ルドラ「ああ……」
ことりとコップを置くグドラス。
グドラス「お茶だ。飲めるか?」
ルドラが起き上がる。
ルドラ「ありがとうございます」
一口、お茶を飲むルドラ。
ルドラ「お、美味い」
グドラス「だろう? このお茶はルザール地方にある……」
回想終わり。
グドラス「……あれから150年か。時が経つのは早いものだな。あの頃、まさか、ここまで人間と慣れ親しむなんて思わなかったぞ……」
終わり。
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