甘え下手な彼女
- 2023.02.13
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
健吾(けんご)
瑞希(みずき)
友人1~2
男子1~2
■台本
教室内。
瑞希「ちょっと、健吾! お弁当は私が作るって言ってたでしょ!」
健吾「あー、すまん、瑞希。まさか本気で作ってくれるとは思ってなかったからさ」
瑞希「ほー! 自分の彼女の言うことが信じられないっての!?」
健吾「そうは言ってないって。ただ、お前、部活で忙しいから、朝、早く起きるの大変だろうなって思っただけだよ」
瑞希「なによ、もう! 人がせっかく、眠い中起きてお弁当作ったのに」
健吾「食べるよ。その弁当」
瑞希「え?」
健吾「ちょうど、足りないと思ってたんだよ。サンキューな」
瑞希「……まあ、それなら許してあげるわ」
弁当を机の上にドンと置いて、スタスタと歩き去っていく瑞希。
友人1「おー、こわ。お前、よくあいつと付き合ってられるよな。すげーよ」
健吾「そうか? 可愛いだろ、あいつ」
友人2「さらっと惚気るなよ」
友人1「確かに可愛いけど、あの性格はなー」
友人2「いつもキレてるところしか見たことねー」
友人1「大体、今回の弁当の件だって、瑞希が作るって言ったの、2週間くらい前の話だろ?」
友人2「いつ作ってくれるかわからないものを充てにはできなくないか?」
健吾「ははは。いいじゃねーか。今日は2つ弁当が食べれるってことで」
友人1「その代わり、文句言われるんだぞ。俺ならパスだなぁ」
友人2「俺も。あいつと付き合えるのなんて、お前くらいじゃないか?」
健吾「そんなことねーって。あれでも、あいつ、甘えてきたときは可愛いんだぞ」
友人1「え? 瑞希が?」
友人2「甘える?」
友人1「はははは。冗談キツイな」
友人2「あいつが甘えるなんて、槍が降ってもあり得ねーことだろ」
健吾「ま、あいつは甘え下手ってところはあるな」
場面転換。
テニスの音が響いている。
テニスコートから出てくる瑞希。
瑞希「ふう……」
健吾「お疲れ」
瑞希「あ、健吾。先、帰っててよかったのに」
健吾「おいおい。彼に先帰れなんてひどいな」
瑞希「あははは。それもそうだね」
健吾「ほら、タオル」
タオルを渡す健吾。
瑞希「ありがと……って、いつもの柔軟剤と違うでしょ」
健吾「ああ、ちょうど切れちまってな」
瑞希「もう……。いつものじゃないと、なんか落ち着かなーい」
健吾「すまんすまん。……それより、どうなんだ?」
瑞希「ん?」
健吾「大会、勝てそうか?」
瑞希「こればっかりは相手がいることだからね。でも、悔いが残らないように、きっちり仕上げるつもり」
健吾「そっか。頑張れよ」
瑞希「言われなくても頑張ってるって」
健吾「そうだな。すまん」
場面転換。
教室内。
男子1「ぎゃはははは」
男子2「おい、返せって!」
男子生徒2人が教室内を走り回っている。
瑞希「あんたら、うるさい!」
男子1「ひぃ!」
男子2「いや、こいつが俺のを取ったのが……」
瑞希「言い訳なんていいから!」
男子2「ご、ごめんなさい……」
それを見ている健吾たち。
友人1「おお、怖ぇ」
友人2「いつにも増して、切れ切れだな」
健吾「試合が近いからピリピリしてるんだよ」
友人1「そうか? いつもあんな感じだろ」
友人2「そういえばさ。瑞希、小室先生を怒鳴りつけて、泣かせたって話だぞ」
友人1「マジか……。先生を泣かすってどれだけだよ」
健吾「いやいや、それは嘘だよ。涙ぐんだだけだ」
友人2「……変わらねーよ」
そのとき、後ろから掃除用具入れを開ける音がする。
男子1「お前のせいで怒られちまったじゃねーかよ!」
男子2「わわ! モップ振りますなよ、あぶねーって」
友人1「あいつら、なにやってんだ? さっき、瑞希に怒られたばっかりなのに」
友人2「あー、瑞希、ブチ切れそう」
男子1「あははは。待てって!」
男子2「ちょちょ、あぶないって! マジで!」
瑞希「あーんーたーら!」
ズカズカと2人に歩み寄っていく瑞希。
瑞希「いい加減に……」
男子1「わっ! 急に出てくんなって!」
男子2「危ない!」
瑞希「きゃあっ!」
男子1が振り回していたモップが瑞希に当たり、その反動で窓が割れる。
健吾「瑞希!」
健吾が駆け寄る。
瑞希「いてて……。大丈夫。大した事……」
健吾「動くな! 誰か、先生を呼んできてくれ……いや、救急車だ!」
周りがざわざわとする。
友人1「うわ、すげー血だ」
友人2「ガラスで右腕が切れたんだ」
瑞希「うう……」
健吾「瑞希!」
場面転換。
病院の廊下。
瑞希が処置室から出てくる。
健吾「どうだったんだ?」
瑞希「5針縫った。痕には残らないから大丈夫だって」
健吾「それは良かったけど……大会は大丈夫なのか?」
瑞希「全治1ヶ月。その間は激しい運動はNGだってさ」
健吾「……」
瑞希「なーんて顔してるのよ。死ぬわけじゃあるまいし。ただ、ちょっと引退が早まっただけじゃない」
健吾「……」
瑞希「これからは学校終わったらすぐに帰れるよ。前から寄りたいお店とかいっぱいあったんだよねー」
健吾「そうか……」
瑞希「あはは! そう考えたら楽しみになってきちゃった!」
健吾「……」
場面転換。
教室内。
男子1「ホント、ごめん」
男子2「すみませんでした」
瑞希「ホント、痛かったんだからね。罰として、一ヶ月、ジュース奢ってもらうから」
男子1「あ、ああ。それで許してくれるなら」
瑞希「へへ。ラッキー! これでジュース飲み放題だー」
男子1「ええ? 飲み放題!?」
それを見ている健吾たち。
友人1「すげーな、瑞希」
友人2「なんだかんだ言って、全然、落ち込んでなさそうだな」
友人1「ホント、あいつのメンタルはダイヤモンドだな」
友人2「言えてる。まあ、女の子としてどうかとは思うけどな」
友人1「そうだなー。男としては少しくらい弱みを見せてくれる女の方がいいよなー」
友人2「その点、瑞希は男よりも強いからキツイよなー」
健吾「……そうだな」
場面転換。
テニスの音。
テニスコートから出てくる瑞希。
瑞希「お待たせ。コーチに引退のこと、報告してきた」
健吾「そうか……」
瑞希「さ、帰ろっか」
健吾「ああ……」
二人が並んで歩いている。
健吾「なあ、瑞希」
瑞希「ん? なに?」
健吾「俺はお前の彼氏だ」
瑞希「なーに? 急に」
健吾「もう少し、甘えてもいいんだぞ」
瑞希「……」
立ち止まる二人。
瑞希「う、うう……。うわーーーーん!」
瑞希が健吾の胸で泣き始める。
健吾「……」
健吾(N)「ずっと打ち込んできたテニス。高校最後の大会にかけていたんだ。それがこんなことになって平気なわけがない」
泣き続ける瑞希。
健吾(N)「瑞希が涙を見せるのは俺の前だけ。けど、その涙も滅多に見せたりはしない。もう少し俺に甘えてもいいと思うんだが。本当に瑞希は甘え下手な彼女だ」
終わり。
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