幸せな時間

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
晴馬(はるま)
奈都(なつ)
恵理那(えりな)

■台本

夜の会社内。

カタカタとパソコンのキーボードを打つ音。

そして、その音が止む。

晴馬「……ふう。終わった」

だが、周りは静か。

晴馬「あれ? もうみんな上がったのか。俺も、変える準備するか」

パソコンの電源を落とし、歩き出す晴馬。

タイムカードの前で立ち止まる。

晴馬「おっと、危ない危ない。タイムカード切るとこだった。休日出勤でタイムカードを切ったなんて言ったら、部長に切れられるとこだったな」

スタスタと歩き出す晴馬。

晴馬(N)「今日は土曜日。本来であれば会社は休みのはずだが、入社以来、土曜日に休めた試しはない。だが、土曜日は終電じゃなく、早く上がれるので、少しだけ嬉しい」

場面転換。

町中を歩く晴馬。

晴馬「おー、まだ8時だから店も結構開いてるな。……よし、久しぶりにあの居酒屋に行ってみるか」

晴馬(N)「世間では花の金曜と言われているが、俺にとっては土曜が花だ。花の土曜を精一杯満喫しよう」

ガラガラと居酒屋のドアを開ける晴馬。

場面転換。

道をふらふらと歩く晴馬。

晴馬「おっと……。ちょっと飲みすぎたかな。けど、いいよな。花の土曜だし。一週間、頑張った俺へのご褒美だ」

立ち止まって、ポケットに手を入れる。

晴馬「えーっと、家の鍵、家の鍵っと……。あ、あった」

ガチャリとドアの鍵を開けて、家に入る。

場面転換。

晴馬の部屋。

どさっと、ベッドの上に座る。

晴馬「ふう……。心地いい酔いだ。……さてと。さっさと着替えるか」

晴馬が立ち上がる。

晴馬「これからが幸せの時間だ」

場面転換。

コンコンとドアをノックする音。

恵理那「お父さん、いるー?」

晴馬「恵理那か。いるぞ」

恵理那「入ってもいい?」

晴馬「おう」

ガチャリとドアが開き、恵理那が部屋に入ってくる。

恵理那「お父さん、帰ってきたなら、言ってよ」

晴馬「あれ? 言ってなかったか?」

恵理那「言ってない。それより、お土産は?」

晴馬「え? お土産?」

恵理那「飲んで帰ってきたんでしょ? なら、私にもお土産あってもいいんじゃない?」

晴馬「あー、忘れてた。ごめんごめん」

恵理那「もー。ツケだからね」

晴馬「わかったわかった。次は今日の分も含めて、奮発してやるよ」

恵理那「やったー。絶対だからね。絶対」

晴馬「それより、なにか用事があったんじゃないのか?」

恵理那「ああ、そうだ。あのさー、お父さん。欲しい物があるんだけどー」

晴馬「はあ……。小遣いか?」

恵理那「うん」

晴馬「んー。ただじゃやれんなぁ」

恵理那「えー。なにすればいいの?」

晴馬「肩揉んでくれ」

恵理那「しょうがないなー」

恵理那が晴馬の後ろに回り、肩を揉み始める。

恵理那「うわ、お父さんの肩、ヤバいくらい固いね」

晴馬「いやー。凄いコリでな。肩が重いんだよ」

恵理那「マッサージ屋でも行けば?」

晴馬「なんか、もったいない気がしてな」

恵理那「じゃあ、私が揉むから、その分、小遣いちょうだいよ」

晴馬「はは。抜け目ないな」

恵理那「あははは。……そうだ。今日、学校でさー」

そのとき、ドアがノックされる。

奈都「あなたー、いる?」

晴馬「おう、いるぞー」

ガチャリとドアが開く。

奈都「あら、恵理那に肩揉んでもらってるの?」

晴馬「ああ。小遣い欲しいらしくてな」

恵理那「お父さん! しー!」

奈都「まったく、この子は……。それより、ケーキ買ってあるんだけど、食べない?」

恵理那「食べる―!」

晴馬「おお、いいな」

奈都「じゃあ、降りてらっしゃい。コーヒーも入れるから」

場面転換。

リビング。

ケーキを食べている3人。

恵理那「おいしー!」

晴馬「すごい、美味しいな」

奈都「でしょー! ここのお店のケーキ、評判良いのよ」

恵理那「けど、なんで急にケーキ?」

奈都「……んー。あなた、わかる?」

晴馬「え? えーと……」

奈都「もう! 今日は私とあなたが出会った日でしょ?」

晴馬「あれ? そうだっけ?」

恵理那「えー。そんなの覚えてる方がヤバいって」

奈都「え? そうかしら?」

恵理那「ほら、そこはせめて、結婚記念日とか誕生日とかじゃない? 出会った日って、マニアックだよ」

奈都「ええー。そう?」

晴馬「ふふ……」

奈都「あら、どうしたの、あなた」

晴馬「いや、なんか幸せだなーって思って」

奈都「あら、幸せなのはあなただけじゃないわよ」

晴馬「……俺と出会ってくれて……結婚してくれて、ありがとな」

奈都「……あなた」

恵理那「やだー! お父さん、くさーい! ドラマみたい」

晴馬「うるさいな」

恵理那「あははははは!」

奈都「ふふふふふふ」

3人の笑い声が響く。

場面転換。

晴馬の部屋。

携帯のアラームが鳴る。

晴馬「ん、んん……。もう5分……って、え!?」

飛び起きる晴馬。

場面転換。

ドタドタと階段を下りてくる晴馬。

ドアを開けてリビングに入ってくる。

晴馬「おい、なんで起こしてくれなかったんだよ!」

奈都「は? 急にそんなこと言われても。いつもあなた、勝手に起きてるじゃない」

晴馬「そうだけど……。いつもより起きてくるのが遅かったら、起こしてくれてもいいだろ?」

奈都「寝坊が怖いなら、新しい目覚まし時計でも買ったら?」

晴馬「いや、そういうことじゃなくて……」

バタンとドアが開いて、恵理那が入ってくる。

恵理那「お母さん、お弁当は?」

奈都「はい、これ」

恵理那「ありがと。じゃあ、行ってくるね」

奈都「行ってらっしゃい」

晴馬「……おい、恵理那」

恵理那「……なに?」

晴馬「お父さんに、おはようくらい言えないのか?」

恵理那「うざっ!」

ドアを開けて、玄関の方へ歩いていく恵理那。

晴馬「おい、お前、どういう躾してるんだよ」

奈都「なによ。全部、私に押し付けて。それより、会社遅刻するんじゃないの?」

晴馬「あっ! そうだった!」

場面転換。

玄関のドアを開ける。

晴馬「じゃあ、行ってくるなー」

返事は帰って来ない。

晴馬「はあ……」

場面転換。

電車の中。

晴馬(N)「今日からまた月曜日。これから土曜日まで、地獄が続く。でも、また土曜日になれば幸せな時間が待っている。俺の頭の中の幸せな時間が……」

終わり。

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