記念写真

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■概要
人数:3人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
凌悟(りょうご)
蒼芭(あおい)
美夜(みや)

■台本

リビング。

凌悟「……」

ガチャリとドアが開いて、蒼芭が入ってくる。

蒼芭「ただいまー」
凌悟「お帰り」
蒼芭「お父さん、何見てるの?」
凌悟「写真だよ」
蒼芭「写真? ああ、賞取ったときの? 嬉しいのはわかるけど、そんなに何度も見なくてもいいじゃん」
凌悟「いやいや、違うよ。記念写真」
蒼芭「ふーん……」

写真を手に取り、見る蒼芭。

蒼芭「あれ? 制服着てるってことは、お父さんが先生やってたときの写真ってこと?」
凌悟「うん。そうだよ。押し入れを整理してたら、出てきたんだ。懐かしくなってさ」
蒼芭「……あれ?」
凌悟「どうした?」
蒼芭「……」「

蒼芭が何枚も写真を見始める。

蒼芭「これ、ホントにお父さんの生徒たち?」
凌悟「え? ああ、そうだけど……」
蒼芭「妄想じゃなくて?」
凌悟「なんでだよ?」
蒼芭「……これさー、お父さん、写ってないじゃん」
凌悟「ん?」
蒼芭「これも、これも、これも……。てか、お父さんが写ってる写真ないじゃん」
凌悟「ああ。そういうことか。いや、ちゃんとお父さんいるぞ」
蒼芭「うそー? えー? ……いないじゃん」
凌悟「いや、いるいる」
蒼芭「んー? どこ? なにこれ。昔、こうやって人を探す本ってあったよな」
凌悟「ああ。なんとかを探せってやつな」
蒼芭「あれ、苦手だったんだよねー」
凌悟「ふふ。さて、見つけられるかな?」
蒼芭「そう言われると、なんか火が付く。絶対に見つけてやる」
凌悟「ははは。頑張れ」
蒼芭「……ホントにいるんだよね?」
凌悟「ああ。けど、視点を変えないと見つからないかな」
蒼芭「は? どういうこと? まさか、逆さにするとか?」
凌悟「んー。ちょっと違うかな」
蒼芭「わかった裏から見るとか! ……んなわけないか」

そのとき、ドアが開いて、美夜が入ってくる。

美夜「ただいまー。って、二人でなにやってるの?」
蒼芭「……お父さんを探せ」
美夜「え?」

場面転換。

美夜「なるほどねー」
蒼芭「ねえ、お母さんはわかる?」
美夜「ふふふ。わかるわよー」
蒼芭「マジで? ……あっ! これ、お母さんだ!」
美夜「あら、懐かしい。これ、高校の修学旅行の時よね?」
凌悟「ああ」
蒼芭「お父さん、生徒だったお母さんに手を出したんだもんね」
凌悟「人聞きの悪いことを言うな」
美夜「この年が最後だったのよね。教師として」
凌悟「ここから、プロの写真家を目指して学校を辞めたんだったな」
蒼芭「お母さんは止めなかったの? 教師なんて安定してるのに」
美夜「んー。逆に応援したって感じだったわね」
凌悟「そうだな。お前が応援してくれたから、俺はプロの写真家を目指そうって思ったんだ」
蒼芭「賭けだよねー。まあ、賞を取って、今では有名になれたからよかったけど」
凌悟「だな。もし、ダメだったら、お前は生まれてなかったかもな」
蒼芭「え? そうなの?」
美夜「ふふふ。そんなことはないわよ」
凌悟「……」
蒼芭「あーーー!」
凌悟「どうした?」
蒼芭「わかった!」
美夜「なにが?」
蒼芭「お父さん見つけた」
凌悟「お、わかったか?」
蒼芭「うん。お父さん、写真を撮る方だったんだね」
凌悟「正解!」

終わり。

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